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喪失感と深い悲しみの中で、再び歌い始めたコリーヌ・ベイリー・レイ『あの日の海』

2018.03.19

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柔らかな歌声と、オーガニックで温もりのあるサウンドが魅力のシンガーソングライター、コリーヌ・ベイリー・レイ。
意外にも10代の頃はロック志向だったという。

1979年、英国のリーズに生まれたコリーヌ・ジャクソン・ベイリーは、教会で歌うことで歌に目覚める。
そして教会のメンバーを集めて、ガールズ・ロック・バンドを組むなどしていた。ギター演奏を覚えたコリーヌは、レニー・クラヴィッツやジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンなどから強く影響を受けたという。

しかし大学在学中にジャズ・クラブで歌ったことがきっかけで、ジャズやソウル・ミュージックに興味を持ち始める。
そこで若きジャズ・サックス奏者のジェイソン・レイと出会い、恋に落ちた。翌年の2001年に二人は結婚し、コリーヌは姓をベイリー・レイとする。

地道に歌を歌い続けていたコリーヌが、ソロ・シンガーとしてデビューしたのは、2006年のことだった。
少し憂いを帯びたデビュー・シングル「ライク・ア・スター」は、瞬く間にチャートを駆け上り、続くポップなセカンド・シングル「プット・ユア・レコーズ・オン」も大ヒットする。
それら2曲が収録されたデビュー・アルバム『コリーヌ・ベイリー・レイ』は英国チャートの1位を記録、全米チャートでもトップ20に入り、全世界で400万枚を売り上げる大ヒットとなった。
もちろん、このアルバムには夫のジェイソンもサックス奏者として参加している。

Put Your Records On



一躍大スターとなったコリーヌは、その慌ただしさに一区切りがつくと、リーズの自宅に戻ってアコースティック・ギターで曲作りを開始する。そこで数曲を書き上げ、2007年11月頃からセカンド・アルバムのレコーディングに入った。

しかし突然の悲劇が、彼女を襲う。
2008年3月22日、ジェイソンが遺体で発見されたのだ。死因は薬物とアルコールの過剰摂取によるものだった。
悲しみに打ちのめされたコリーヌは、痛みと喪失感の中で無気力なまま何もできずに1年間を過ごしたという。

そんなコリーヌを再び音楽に向かわせたのも、やはり音楽だった。
レナード・コーエンのライブやニーナ・シモンの映像を見て、痛みや悲しみという感情をむき出しに表現する彼らの歌に心を揺さぶられたのだという。
自分も音楽で感情を表現していいのだと。
そうして彼女は2009年、戸惑いながらも一歩を踏み出し、レコーディングを再開させるのだった。



2010年にリリースされたそのセカンド・アルバム『あの日の海』には、最愛の人を失った喪失感をなんとか克服しようとする中で、新たに書かれた数曲も収められた。
シングルカットされた「オール・アゲイン」は、ジェイソンの生前、二人が大げんかをした直後に書かれた曲だ。
それは彼女にとって、「この人と添い遂げよう」という決意表明でもあったという。

誰かを愛するということは
自分のプライドよりももっと価値のあること
どんなに傷つけられた痛みよりもはるかに大きく
すべての悲しみを凌駕し
ぞっとするほど明るく暗闇を照らすのよ

やり直せるとしても
私はもう一度同じ道を選ぶわ
私はもう一度同じ道を選ぶわ


I’d Do It All Again



ヴィンテージのマイクやアンプを通して聞こえる、より深みを増したコリーヌの歌声を、オーガニックにこだわった楽器のライヴな演奏がやわらかく包む。
アルバム『あの日の海』は、同じ悲しみを経験した人にもそっと寄り添う優しさに溢れ、深い悲しみをたたえながらも、親密感と温もりが感じられる一枚となっているのだ。

Are You Here


コリーヌ・ベイリー・レイ来日公演

【大阪】
6月6日(水)@ Billboard Live OSAKA

詳細はコチラ

【東京】
6月8日(金)@ Billboard Live TOKYO
6月9日(土)@ Billboard Live TOKYO
6月10日(日)@ Billboard Live TOKYO

詳細はコチラ


Corinne Bailey Rae『The Sea』
Virgin Records


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