「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

ミュージックソムリエ

革命はテレビではやらないんだ 革命は再放送もないんだぜブラザー、革命は生(ライブ)なんだ~ラップの始祖ギル・スコット=ヘロン

2024.05.26

Pocket
LINEで送る

1950年代、アメリカのニューヨークではアレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックらによる詩の朗読=ポエトリー・リーディングが文化的な盛り上がりを見せ、彼らはビートニクスと呼ばれた。

1960年代も終わりかけの頃、今度はアフリカン・アメリカン達によるゲットーの暮らしやそこに住む人々の代弁を詩にのせたポエトリー・リーディングが、パーカッションとのセッションで盛り上がった。
なかでもラスト・ポエッツによる「イースト・ウィンド」セッションが話題を呼んでいた。

The Last Poets 「Niggers Are Scared of Revolution」


ギル・スコット=ヘロンは少年時代から書くことが好きだったが、ペンシルバニア州のリンカーン大学に入って2年目、1年間の休学届を出して小説「ハゲタカ」を執筆した。
その小説は、詩集「スモール・トーク・アット・125&レノックス」とともに出版された。

大学に戻ったギルは、ジャズにどっぷりハマっていた仲間たちとつきあうようになる。
ギルの詩に音楽をつけてくれたのは、クラッシックの素養があり、ジャズのコードにも詳しいブライアン・ジャクソンだった。
そうして、ふたりは一緒に曲作りをするようになる。

ギルはたびたびニューヨークへ出かけてはラスト・ポエッツのライブを見に行き、彼らとも知り合いになった。

その頃、ジョン・コルトレーンのプロデュースや、ジャック・ケルアックのレコーディングを手がけたことのあるボブ・シールは、フライング・ダッチマンという自身のレーベルを立ち上げたところだった。

時代の記録となるレコードを作りたいと思っていたボブは、主要都市では初めて黒人市長となったクリープランド市長のスピーチをアルバムにしたり、ジャーナリストのロバート・シーアのコラムをDJロスコが朗読したものに、ロン・カーターやジェームス・スポールディングが伴奏をつけた『サンタ・リタの夜』をリリースしていた。

そこへ、ギル・スコット=ヘロンが訪ねてきた。
ブライアンと二人で音楽をやっていて、ボブがレコーディングをしているようなアーティストならば、自分たちの音楽に興味を持つかもしれないと語った。

ギルの詩集を読んだことのあるボブは、「今は音楽のアルバムを作る金はないが、朗読のアルバムを作って売れたら、その金を充てられるかもしれない」と言った。

1970年に発売されたギル・スコット=ヘロンのデビュー・アルバム『スモール・トーク・アット125&レノックス』は、3曲ほどの歌を除けば、タイトルどおり彼の詩集の朗読をアルバムにしたものだった。
ラスト・ポエッツも同じ年に、デビュー・アルバムをリリースしている。

ギル・スコット・ヘロン

このアルバムに収録されている「ザ・レヴォリューション・ウィル・ノット・ビー・テレヴァイズド」が、いくつかの人気のFM局でひんぱんにかけられた。
スタイルはラスト・ポエッツと同じで、音楽というよりはパーカッションのリズムにのせたリーディングと言った方がいいだろう。

家でくつろいでる場合じゃないぜ、ブラザー
テレビをつけて、自分だけ逃れようってわけにはいかない
ヘロインで気持ちよくなっている場合じゃない
サボってCMの合間にビールを取りになんか行ってられない
なぜなら、革命はテレビではやらないからだ

革命はテレビで放映されないのだ
革命はゼロックスの提供でお届けされません
コマーシャル中断無しの4部構成でお届けされません
革命は軍隊のラッパを吹くニクソン(大統領)や、ハーレムの聖域から搾取された豚の胃袋を食えと指示するジョン・ミッチェル(司法長官)やエイブラム(軍司令官)やスピロ・アグニュー(副大統領)の映像を流したりはしないのだ

革命はテレビで放映されません
革命はシェイファー・アウォード・シアターの提供でお届けされません
ナタリー・ウッドとスティーヴ・マックイーンやブルウィンクルとジュリアは出演しません
革命が”あなたのお口元にセックスアピールを”与えたりはしません
革命があなたのお肌をなめらかにしたり、5ポンド痩せて見えるようにはしません
なぜなら、革命はテレビで放映されないからだ


Gil Scott-Heron 「Introduction~The Revolution Will Not Be Televised」


ボブがギルに電話をかけてきたのは翌年だった。
「誰と演奏したい?」
ブライアンと相談したギルは、ロン・カーターとヒューバート・ロウズ、バーナード・パーディにやってもらうことに決めた。

そうして1971年に録音してリリースされたのが『ピーセス・オブ・ア・マン』、ギル・スコット=ヘロン初の音楽のアルバムだ。
ファンキーなジャズにのせてリメイクされた「ザ・レヴォリューション・ウィル・ノット・ビー・テレヴァイズド」は、これこそが今日のラップの始祖と言っていいだろう。

Gil Scott-Heron 「The Revolution Will Not Be Televised」

革命はテレビ放映されない
11時のニュースのハイライトにはならない
危険武装した女性運動家の女達やジャッキー・オナシスが鼻をかむ映像にもならない
テーマソングがジム・スコットやフランシス・スコット・キーに書かれることはないし、
グレン・キャンベルやトム・ジョーンズやジョニー・キャッシュやエングルバート・ハンパーディングやレア・アースによって歌われることはない

革命はテレビで放映されない
革命はテレビではやらない
革命はテレビ中継されない
革命はテレビではやらないんだ
革命は再放送もないんだぜ、ブラザー

革命は生(ライブ)なんだ


参考文献:ギル・スコット=ヘロン自伝 ギル・スコット=ヘロン著 岩間慎一日本版監修 浅羽麗訳 スペースシャワーブックス


●この商品の購入はこちらから

●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[ミュージックソムリエ]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ