「TAP the CHART」第150回は、1890年代(明治23〜32年)のヒットチャートを総括。
この時期、アメリカの都市部(主にニューヨーク)ではヴォードヴィルやミュージカルが流行。劇場で歌われる楽曲の楽譜出版・著作権管理をするための「ティン・パン・アリー」と呼ばれる場所が賑わい始めていた。新曲の生産と主流の誕生。「ポピュラー」音楽の形成である。中でもユダヤ系のソングライターたちが活躍していく。また、蠟管(ロウカン)や円盤式レコード(SP)が商品化。しかし、この時期はまだまだ楽譜(シートミュージック)の売れ行きが音楽産業の最前線だった。
一方、南部の田舎町ではブルーズ、ゴスペル、ニューオーリンズではジャズやラグタイムが黒人やクレオールを中心に育まれる。また、アイルランドやスコットランド系の白人が暮らしていたアパラチア地方では、後のカントリー/ブルーグラス音楽へとつながるマウンテン・ミュージックやオールドタイム・ミュージックが息づいていた。これらが録音されるのは技術が発達し、「レイス」「ヒルビリー」といった市場が開拓される1920年代以降になってからのことだった。
【1890s TOP 10 HITS】
*ランキングはJoel Whitburn監修『Pop Memories 1890-1954』をもとに作成。( )内はチャートピーク年。
*一部に動画がないものがあります。
❶My Old New Hampshire Home / George J. Gaskin(1898)
❷On the Banks of the Wabash / George J. Gaskin(1897)
❸After the Ball / George J. Gaskin(1893)
❹The Laughing Song/ George W. Johnson(1891)
❺The Band Played On / Dan Quinn(1895)
❻Daisy Bell/ Dan Quinn(1893)
❼The Sidewalks of New York / Dan Quinn(1895)
❽Sweet Rosie O’Grady / George J. Gaskin(1897)
❾The Stars and Stripes Forever/ Sousa’s Band(1897)
❿Oh Promise Me / George J. Gaskin(1893)
【1890s TOP 10 Artists】
*ヒット曲数のカウントは、チャート初登場時が1890年代のものを対象。Joel Whitburn監修『Pop Memories 1890-1954』をもとに作成。
①George J. Gaskin
No.1 Hits:17曲/Top10 Hits:10曲
②Len Spencer
No.1 Hits:13曲/Top10 Hits:14曲
③Dan Quinn
No.1 Hits:16曲/Top10 Hits:3曲
④Cal Stewart
No.1 Hits:2曲/Top10 Hits:9曲
⑤Russell Hunting
No.1 Hits:5曲/Top10 Hits:3曲
⑥Vess Ossman
No.1 Hits:3曲/Top10 Hits:5曲
⑦US Marine Band(アメリカ海兵隊バンド)
No.1 Hits:4曲/Top10 Hits:3曲
⑧Steve Porter
No.1 Hits:3曲/Top10 Hits:4曲
⑨Arthur Collins
No.1 Hits:5曲/Top10 Hits:1曲
⑩Sousa’s Band(スーザ吹奏楽団)
No.1 Hits:3曲/Top10 Hits:3曲
【1900年代の年度ごとのヒットチャート&データ、出来事】
1900年、世紀の変わり目の時期にニューオーリンズでジャズが誕生した
1901年はニューオーリンズでルイ・アームストロングが誕生した
1902年はスコット・ジョプリンのラグタイムの名曲「ジ・エンターテイナー」が生まれた
1903年、ミシシッピ州の田舎町の駅のホームでW.C.ハンディが“ブルーズを目撃”した
コーハンが“ミュージカルの原点”を上演した1904年、ビリー・マレイが最初のNo.1ヒット
1905年は最初の女性スター歌手となるエイダ・ジョーンズが登場
1906年は黒人エンターテイナーの草分け、バート・ウィリアムズの「Nobody」がヒット
1907年は豪華なレヴュー「ジーグフェルド・フォーリーズ」が始まった
1908年は「私を野球に連れてって」がヒットした
1909年はフィスク大学の黒人学生グループが「Swing Low, Sweet Chariot」を歴史的録音
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