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多くの尊敬を集める【魅惑のソウル・ヴォーカル④】~スモーキー・ロビンソンのとろけるハイトーン・ヴォイス

2026.02.19

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ビートルズのポール・マッカートニーは「僕らにとってスモーキー・ロビンソンは、神様のような存在さ」と語った。また、ボブ・ディランは「アメリカで現存する最も偉大な詩人」と表現した。

2016年に、米国議会図書館よりポピュラー音楽で、世界の文化に大きな影響を与えた作曲家・演奏家に贈られるという、ガーシュウィン賞を受賞したスモーキー・ロビンソン。

学生時代は読書家で、特に詩が好きで、学校の成績も良かったという。また、いとこや近所の友達と家に集まってレコードを聴くことが大好きで、中でもスモーキーが一番心を奪われたのは、ジャズ・シンガーのサラ・ヴォーンの流れるような歌唱だった。

そんなスモーキー・ロビンソンのソング・ライティングは、多くのミュージシャンからの尊敬を集め、モータウンから数々のヒット曲を生み出してきた。

“涙の跡”なんて、それまで誰も歌にしたことないだろう。ふつう涙っていうと、泣いていたことがわからないように涙をぬぐうって歌う。それを、涙の跡がついてしまって拭きとることもできないっていうのは、なかなかいいアイデアだぞと思ったんだ。


ミラクルズの1965年の大ヒット曲「トラックス・オヴ・マイ・ティアーズ」の歌詞について、スモーキーはそのように語っている。

Tracks Of My Tears (1965)


しかし、この歌が多くの人の心をとらえたのは、“涙の跡”をテーマにした斬新な歌詞だけでなく、悲しげなハイトーンで歌うスモーキーの歌声にもあったことは間違い無いだろう。

彼のか細くふるえる“泣き”のビブラートが、歌詞の切なさを際立たせている。ともすれば、少年または女性の声にも聞こえそうな高い声について、スモーキー自身は地声だと言っているが、ファルセットと地声の境目もわからないくらいの、ささやくようなとろけるハイトーン・ヴォイスが彼の声の魅力だ。

この砂糖菓子のように甘い声は当時、アメリカの恋人たちが愛のささやきを交わす場でのBGMとして、甘い雰囲気を盛り上げるのに一役買っていたとも言われているほどだ。

Ooo Baby Baby (1965)

そのハイトーン・ヴォイスについては、スモーキーがミラクルズのツアー中に高熱を出してステージに上がれなくなった時、初期のミラクルズのメンバーでもあった妻のクローデットが、急遽ステージで代役を数日間務めたこともあるという逸話も残っているほどだ。

しかし1972年、スモーキーはより自由な活動を求めてミラクルズを離れた。モータウンの副社長を務めながらも、歌うことが好きな彼はソロ歌手としてアルバムを発表していく。

スモーキー・ロビンソンの声の魅力が特に生きるのは、スロー~ミドル・テンポのバラード曲ではないだろうか。彼の声が持つ独特の甘い雰囲気が、ある一つの音楽ジャンルのムードを形作るのにも影響を及ぼした。

1975年に発表したアルバム『クワイエット・ストーム』のタイトル曲「クワイエット・ストーム」は、アメリカのワシントンD.C.のFM局で1976年から始まった夜のラジオ番組で、オープニング曲と番組タイトルに使用された。

その番組で主にオン・エアされていた、ジャンルを超えてメロウで落ち着いたアダルトなムードの音楽を「クワイエット・ストーム」と呼ぶようになった。

Quiet Storm (1975)

音楽史家の言葉によると、「他のシンガーがきっちりとビートにのって歌うのにたいして、スモーキー・ロビンソンはビートと付かず離れずの、自由な間隔とも言える距離を常に保っている」といい、スモーキーには驚異的なリズム感覚があったと語っている。

聴いていて、独特の心地よい浮遊感を彼の歌から感じる秘密は、このリズム感にもあるのかもしれない。1979年には「クルージン」、1981年には「ビーイング・ウィズ・ユー」などが大ヒットし、70年代から80年代にかけてのスモーキー・ロビンソンはAOR的な魅力を放ち続けた。

Being With You (1981)

2014年には、エルトン・ジョンやシェリル・クロウ、エアロスミスのスティーヴン・タイラーなどをゲストに迎えて、セルフ・カヴァーのアルバム『スモーキー&フレンズ』を発表した。

70歳を超えてもまだまだ艶やかな歌声を披露してくれるスモーキー・ロビンソンの、歌うことを愛してやまない姿には感動をおぼえるのだ。

*このコラムは2017年3月に公開されたものです。

Quiet Storm ( with John Regend 2014)

こちらのコラムもご覧ください
プラトーン〜戦友たちと踊り明かした愛しの「Tracks of My Tears」
ビートルズとブラック・ミュージック〜お互いの尊敬がもたらした音楽の発展


参考文献:「モータウン・ミュージック」ネルソン・ジョージ著、林田ひめじ訳、早川書房


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