ミュージックソムリエ

ビートルズとブラック・ミュージック〜お互いの尊敬がもたらした音楽の発展

2017.03.13

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あんなサウンドを出す英国ミュージシャンを聴いたのは初めてだよ。正直に言うと、もしもこの目で見ていなけりゃ、きっと同郷の黒人グループだと思っていただろうね。

これは、リトル・リチャードが1963年2月に英国の音楽誌NMEの中で、ビートルズについて語った言葉だ。

1960年代の第一次ブリティッシュ・インヴェイジョンは、黒人音楽から影響を受けたビートルズやローリング・ストーンズなどの英国のロック・バンドによってアメリカで旋風をもたらしたブームを指すが、アイク・ターナーは、そんな彼らの音楽を「英国訛りの黒人音楽」と表現した。

それから約50年を経て、2016年にローリング・ストーンズは、彼ら自身の音楽ルーツであるブルースのカヴァー・アルバム『ブルー&ロンサム』を発表した。
それまでローリング・ストーンズとブルースの関係は、様々な場面で語られることが多かったが、10月25日に発売された音楽誌「ブルース&ソウル・レコーズ」132号では、映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」の公開に合わせて「ビートルズとブラック・ミュージック」という特集が組まれ、今まであまり注目されてこなかったビートルズと黒人音楽との関係に迫っていて興味深い。この中でピーター・バラカン氏も語っているように、当時の英国では、ビートルズを通してモータウンを始めとするソウル・ミュージックを知ったという若者も多かったようだ。

例えば、ライヴでの演奏回数が最も多いとされる彼らのファースト・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』からの大ヒット曲「ツイスト・アンド・シャウト」は、1962年のアイズレー・ブラザーズで知られる楽曲であり、オリジナルはR&Bグループのザ・トップ・ノーツであるが、ビートルズでこの曲を知ったという人がほとんどだろう。

「Twist and Shout」





また、彼らのセカンド・アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』には、マーヴェレッツの「プリーズ・ミスター・ポストマン」、バレット・ストロングの「マネー(ザッツ・ホワット・アイ・ウォント)」、ミラクルズの「ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」と、モータウンの楽曲のカヴァーが3曲も収録されている。
ジョン・レノンは当時、メアリー・ウェルズのファンであると発言していて、「ブルース&ソウル・レコーズ」の表紙にはメアリー・ウェルズと写った写真が使われている。



彼女のヒット曲「マイ・ガイ」の作者であるスモーキー・ロビンソンについても、ポール・マッカートニーは「僕たちにとって、スモーキー・ロビンソンは神様のような存在さ」と語っていたという。

「You Really Got a Hold on Me」


そのように色々な黒人音楽から影響を受けながら、ビートルズは次第に彼らのオリジナリティを磨いていって、多くのヒット曲を生み出した。
そして今度は彼らのヒット曲を、多くの黒人ミュージシャンがカヴァーした。
モータウンのミュージシャン達も感謝を込めて、ビートルズの楽曲を録音したという。

Smokey Robinson & The Miracles「And I Love Her」


Stevie Wonder「We Can Work It Out」


そうしてアメリカの黒人ミュージシャン達は、ビートルズをカヴァーすることによって、白人のメイン・ストリームにアクセスできるようになったとも言われている。

特集では他にも多くの黒人ミュージシャンによるビートルズのカヴァーが紹介され、モータウンだけでなくスタックスとの深い関係にも触れていて興味深い。

1964年のアメリカ公演では、まだ人種差別が色濃く残っていた南部のコンサート会場で、白人と黒人の観客席を分離していた壁が、ビートルズの抗議によって取り去られたというエピソードも残っている。


人種も国籍も超え、互いに尊敬し影響し合うことによって音楽は発展していった。
ビートルズと黒人音楽の関係についてもそのことが強く感じられる。
特集の柴崎祐二氏のコラムに記された言葉が印象的だ。

英米双方からリリースされる最新の音楽を舞台に、まさしく創造のキャッチボールが行われた黄金の年代に、胸が躍るようだ。


音楽の発展は、私たちの心に豊かさをもたらしてくれる。
閉ざしているよりも開いた方が音楽も文化も発展し、より私たちに豊かさをもたらしてくれるのではないだろうか。


参考文献:ブルース&ソウル・レコーズ No.132 株式会社スペースシャワーネットワーク、waxpoetics japan No.01「Jazz, Soul, and the Beatles」 サンクチュアリ出版


『ブルース&ソウル・レコーズ 2016年 12 月号』(雑誌)
スペースシャワーネットワーク

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