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「CDショップやレコード屋をつぶさせないぞ!」、アナログで盛り上がるレコードストアデイ

2014.04.19

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4月19日は日本も含めて世界24カ国が参加して行われる「レコードストアデイ (RECORD STORE DAY)」。
まだ日本ではさほど知られていないが、「CDショップやレコード屋をつぶさせないぞ!」という気概を持つバンドやミュージシャンたちが立ち上がって、2008年から自然発生的に始まった世界的なムーブメントだ。

多くのアーティストが新曲や未発表曲、ライヴ、デモ音源などを主にアナログ・レコードでリリースして協力して、おりからのアナログ盤の復活とも呼応して、今やアナログ・レコードの祭典となりつつある。

ニルヴァーナの元ドラマーにして、現在はフー・ファイターズのボーカル&ギターを務めるデイブ・グロールは、アナログ・レコードへの想いついてこう語っている。

「最近娘にザ・ビートルズのアルバムを何枚かプレゼントして、レコード・プレーヤーを彼女の部屋に入れたんだ。彼女もザ・ビートルズのことは知っていたけど、これまでipadやipodやコンピュータでしか聴いたことがなかった。だから彼女にアルバムを見せたとき、それを実際に手にとって、ジャケットの曲名を読んだり、大きな写真を目にすることで、同じ音楽を聞くのでも全く違う経験になったんだ。彼女にとってより楽しい経験になった。スリーヴを開くことができたり、レコードに針を下ろしたり、レコードを持ち上げて、自分の手で持つことができたりして、より深い経験になった。俺もそういうことが今できなくなって淋しいと思う。何かで遊んでいる感覚は大事だと思うんだ。おもちゃみたいなものだよね」

当時のアメリカではタワーレコ―ドもHMVもバージン・メガストアも潰れて、CDはウォルマートに代表される大手スーパーマーケットのレジ脇などで、売れ筋のものくらいしか置かれていない状態だった。
しかも日本とは違って自由価格のため、CD一枚が7ドルないしは9ドルぐらいの投げ売り状態だった。

アナログ・レコードの時代から音楽を発信してきた街の小さなレコード屋は、どこも経営状態が厳しくなって次々に店じまいを余儀なくされた。そんな危機的状況の中でレコード屋の親父さんたちが集まって始めたのが「レコードストアデイ」だった。
近所のミュージックショップに足を運ぼうというスローガンのもとに、4月の第3土曜日に行われた。

それに賛同したメタリカがサンフランシスコのラスプーチン・レコーズという店でインストアライブを行うと、ポール・マッカートニーがすぐに呼応して「レコードストアデイ」の存在は全世界に伝わった。
すぐに錚々たるアーティスト達が賛意を示して、その日限りのCDやアナログを発売することで、翌年からムーブメントが大きく動き出した。

今年はブルース・スプリングスティーンが未発表4曲を収録した『AMERICAN BEAUTY』という12インチのアナログ盤を、「レコードストアデイ」に向けて全世界で7500枚だけの限定で発売した。それを「どうかお店に足を運んで手に入れて下さい」というわけだ。

ボブ・ディランもデビュー・アルバム『Bob Dylan』を、モノラルとステレオの2枚組で180グラムの重量盤アナログ・レコードで発売する。ビーチボーイズも同じく、デビュー・アルバム『Surfin’ Sarafi』を出す予定だ。


日本が初参加したのは2011年だが、直前の東日本大震災の影響で準備が間に合わず、アメリカの事務局からの好意でビースティー・ボーイズの限定盤を販売し、その売り上げを日本赤十字に寄付したのみに終わった。

実質的な初年度となった一昨年は、ムーンライダース、キノコホテル、鈴木祥子、カーネーションの4アーティストが「レコードストア・デイ」限定盤を発売した。
昨年はそれが14アーティストに増えて広がりを見せ始め、今年はアンバサダーを引き受けたASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル、後藤正文の呼びかけもあって43アーティストが参加し、いくつかの関連イベントなどが開かれるまでになった。

「わざわざ身体を使って、街に出てレコードを買いに行ったり、ライブの現場にその空気を体感しに行ったり、そういうことの強さってやっぱりあると思うんですよ。」という後藤正文は、自らが発行する『THE FUTURE TIMES』でもレコードストアデイ特集を増刊号を発行し、それに合わせてトーク&ライブイベントも開催するなど、4年目を迎える日本のレコードストアデイを盛り上げるべく貢献している。

そして初のソロ・アルバム『Can’t Be Forever Young』に先駆けて、「レコードストアデイ」にはアナログ2枚組&バックアップCD仕様でリリースする。



アナログ盤の盛り上がりは日本にも波及して、くるりが7inchシングル『ロックンロール・ハネムーン』を、Charisma.com (カリスマドットコム)が12inchアルバム『アイアイシンドローム』を、そして7月8日横浜アリーナ公演で活動に終焉を迎えるBiSがラスト・オリジナル・アルバム『WHO KiLLED IDOL?』の2枚組仕様アナログ盤を、いずれも4月19日の「レコードストア・デイ」に合わせて発売することが決定した。




[RECORD STORE DAY JAPAN]

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