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ナット・キング・コール〜20世紀を代表する偉大なシンガーは、もともと“歌わないはずの”ピアニストだった

2026.02.14

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1965年2月15日、20世紀の音楽シーンに偉大な功績を残した男が、サンタモニカの病院で家族に看取られながら静かに息をひきとった。

14歳だった彼の次女は「自分も父のような歌手になるんだ」と心に誓ったという。ジャズ・ピアニストからポップス・シンガーに転身し、まさに“ジャンルを超えた活躍”を体現した彼の命を奪ったのは肺癌だった。享年45。

その男の名はナット・キング・コール。

きっと40代以上の“音楽好き”ならば、彼の名前を、彼の歌声を一度は耳にしたことがあるだろう。あの美空ひばりが、心からリスペクトしていた歌手として知っている人もいるだろう。

1919年、ナット・キング・コールはアラバマ州のモンゴメリーで生まれた。本名は、ナサニエル・アダムズ・コールズ(Nathaniel Adams Coles)。

まだ駆け出しの頃、酔っ払ったお客さんが、ふざけて紙の冠を作って彼の頭にかぶせた事から、“キング”の愛称がついたと言われている。往年のファンや洋楽通からは“ナッキンコール”と呼ばれることが多い。

1921年、牧師だった父親の都合でシカゴに移住。教会オルガン奏者だった母の手解きを受け、12歳から聖歌隊で演奏するようになる。14歳の頃、兄・エディ・コールの影響で初めてのバンドを組み、19歳で兄の率いるセクステット(六重奏団)にピアノで参加しプロデビューする。

1939年、オスカー・ムーア(ギター)、ウエズリー・プリンス(ベース)と共にトリオバンドを結成。ビッグバンド(ジャズのオーケストラ)が主流だった当時、Nat King Cole Trioの活動は革新的で、“ジャズトリオ”のパイオニアとなった。

また、バンド結成当初、客席から歌のリクエストがあっても「僕ら3人は誰も歌わない」と断っていたが、出演していたクラブの支配人から「なじみの上客からの注文が入ったから歌ってくれ!」と、懇願され仕方なく歌ったのが、“歌手=ナット・キング・コール”の誕生の瞬間だったと言われている。



ピアニストとしてデビューするつもりだったが、1942年にリリースした「Straighten Up and Fly Right」でボーカリストとして注目を集め、1948年にはデューク・エリントンの楽団歌手だったマリア・エリントンと結婚。

同年リリースした「Nature Boy」がミリオンセラーを記録し、1950年には「Mona Lisa」をヒットさせる。その活躍をきっかけに、1950年代以降はジャズ界からポピュラー界に軸足を移し、テレビにも多く出演して広く大衆的な人気を得る。

その後も「Stardust」、「Route 66」、「Too Young」、「It’s Only a Paper Moon」、「When I Fall In Love」、「L-O-V-E」など、ナット・キング・コールが歌った数多くの曲は、現在も世界中で愛され続けているスタンダードとなった。

また、1954年に、チャップリンの映画『モダン・タイムス』(1936年)のテーマ曲だった「Smile」(インストルメンタル)を、歌詞付きで歌いヒットさせたのもナット・キング・コールである。

愛娘だったナタリー・コールも、また“あの日”心に誓った夢を叶え、R&Bからポップス、そして父が愛したジャズにいたるまで、まさに“ジャンルを超えた歌手”として成功を手にしていたが、2015年12月31日に65歳でこの世を去った。

ナタリーの遺族により、死因は特発性肺動脈性肺高血圧症による心不全だったことが発表された。彼女は2008年にC型肝炎にかかったことを明らかにし、その後、腎臓移植を受けるなどして治療を続けていた。

薬物依存症で活動を停止した時期もあったが、1988年にブルース・スプリングスティーンのカバー曲「Pink Cadillac」で復活。1991年には、父の声をオーバーダビングさせてジャズの名曲「Unforgettable(忘れられない人)」を発表し、グラミー賞の最優秀レコード賞など主要3賞に輝いた。

──約半世紀前にサンタモニカの病院で死別した父と娘は、きっと今ごろ天国で再会していることだろう。



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