横浜で音楽が聴こえるバーやライブハウスを巡る『横濱オンガク的酒場』。横浜に魅せられ、横浜で暮らし、音楽と酒を愛する斉藤ヒロユキ(斉藤ネヲンサイン)がナビゲート。
かつて100軒ほどの漁村だった横浜村。1859年の開港から激動の時代を支えたオンガクと酒場に思いを馳せ、今夜の一杯を探す。
それは、計画的なサボりだった……
14:15
昼過ぎにひと仕事終えたのは、みなとみらい線「馬車道」駅のあたり。
すぐ終わる可能性の高い予定だったが、一応何かあった時のために余裕を持たせるのがオトナというものだろう。そして、予定はあっけなく終わった。
「はい、午後終了」
ベンチに腰かけ、背伸びをした。
馬車道には多彩なサボりスポットがある。それゆえに選択肢の多さに悩むこともある。しかし、今日はランチは済ませているし、カフェにも早い、なんとも言えないタイミングだ。そんな時にピッタリの最高のコースがある、一択だ。
14:25
馬車道通りを少し歩き、スターバックスの脇道からビルに入る。エレベーターで3階へ。
5分前到着、暇な男のオトナの余裕。ドアが開くと目の前には受付カウンター、ジム併設の会員制の個室サウナがあるのだ。ここで70分間、灼熱ジャングルと氷の世界を彷徨う。
時間を待ち、水風呂用の氷をバケツ2杯受け取って部屋へ。Bluetoothスピーカーや立派なテレビもあるが、触ることはしない。このサウナに入る時は特にだ。世間から隔絶されることが最高のコースを愉しむコツだ。
熱々の部屋と氷の浮いた風呂を何度か繰り返している間、様々なことを考え、そして忘れていく……無の環境だから音楽が生まれるのかもしれないし、聴きたいサウンドが見つかるのかもしれない。
今日はあの曲が聴きたいな……
15:39
時間ギリギリで退店した。
すでに贅沢な時間に聞こえるかもしれないが、午後のコースはまだまだアペリティフ。フンワリとした満足感を感じながら退店する。エレベーターで向かうのは1つ下の階。
15:40
すぐにドアが開く。そこで目に入ってきたのは、アナログレコードをパタパタとチェックする音楽愛好家の姿。
サウナの真下は「DISK UNION 横浜関内店」裏口だったのだ。この連続性は何度体験しても最高。最高のプレイリストを編み出したDJはこんな気持ちなのかもしれない。
さて、灼熱の大地と北極海を行き来してきた身体は音楽を求めている。
「さぁ、どこから掘って行こうか」
ここでサウナで呼び起こした「今、心が欲している音楽」が生きてくる。この日、真っ先に向かったのはROCKの棚の「E」。
TAP the POPでエルヴィスの命日の記事を少し前に読んだからかもしれないし、最近SUN時代の音源が気になっていたこともある。何より、どこからともなく「Blue Moon Of Kentucky」のメロディーが湧いてきたからだろう。アナログ盤でエルヴィスが唄う「Blue Moon….」が聴きたくなったのだ。
パタ、パタ、パタ
実はエルヴィス・プレスリーはCDで聴いてきたので、LPはどんなものがあるのか詳しくなかった。多いとは言えない20枚ほどを手に取ってはみたが、残念ながら該当する盤は見つからなかった。
それはそれ、少し悔しいのも遊びのスパイス。なんでも聴けてしまう現代だからこそ、以降の楽しみにするのもいい。そうして”ディグリスト”の中にまたひとつ楽しみが書き足された。

結局、和モノEPを数枚購入し、レコード店を後にした私は、馬車道を離れ関内方面を歩いていた。
街全体に夕方のオーラがある。仕事がもう少しで終わる人、夕飯に向けて慌ただしくなる人、関係なさそうな人、球場へ向かうベイスターズファン……すると、1杯やりますか、となるわけだ。
音楽愛と酒愛がいい具合に高まっている。今年の3月にオープンした「BASEGATE」という商業施設に足が向いていた。このエリアは新しいこともあり、“今時”感が拭えない。
だが、地元のお店が多く出店していることもあり、横浜を再編成した商店街のように思えなくもない。近くを通ると寄ってしまう事もしばしばだ。
16:27
「SAKE ‘n’ ROLL」にお邪魔した。
屋号が「サッケンロール」なんてパワフルな名前だ。すでにカウンターは半分以上埋まっており、間の席に入れてもらうことにした。音楽は、これは確か、ボブ・ディランの「A Hard Rain’s A-Gonna Fall」。

ニヤリとしながら、最初の1杯を頼んだ。
富乃宝山ソーダ割り。この酒は旧友と飲みにいくとボトルキープされていて、よく飲んだ。みんな元気にしているだろうか? 思い出のある酒は美味い。
カウンターのお隣さんは片方は野球を見に来たようだったが、すでに日本酒で顔を赤らめていた。もう反対側はお休みの飲食店夫婦だろうか? どこかで会ったことがあるような気がしたが、結局最後まで思い出せなかった。
店の前を知り合いがたくさん通るので、忙しなく挨拶に出ていっている。そういったところも商店街っぽく感じる所以かもしれない。会話の合間にエルトン・ジョンの「Goodbye Yellow Brick Road」が聴こえてくる。

おっと、今日は夕方に用事があったのだった。温めていた2杯目のオーダーはスパイス焼酎、カルダモンTAKE7をソーダで。
「SAKE ‘n’ ROLL」はミュージシャンでもある君嶋屋さんのお店ということもあり、音楽にまつわるラベルのお酒がたくさん並ぶ。そんなこともありTAKE7はデイヴ・ブルーベック・カルテットの 「Take Five」を捩ったものかと思ったが、実際には7回目の試作で完成したという謂れらしい。
とはいえ、溢れんばかりのカルダモンの香りに、7拍子のような不思議な音世界を感じていた。
17:00
サクッと飲みき流。午後のうちに体と心がリフレッシュしたようだ。
世間話をしながらお会計を済ませ、一旦帰路に着く。今夜はこれからだから。外はスタジアムの音が漏れ聞こえている。やはり、少し悔しかったのか、「Blue Moon Of Kentucky」のメロディーを口ずさんでいた。
文/斉藤ヒロユキ(斉藤ネヲンサイン)
*今日の一杯はこちら。
スパイス焼酎 カルダモンTAKE7&ソーダ
【登場したお店】
店名:SAKE ‘n’ ROLL君嶋屋
住所:〒231-0017神奈川県横浜市中区港町1丁目1番1号 BASEGATE横浜関内 ザ レガシー 1F サッケンロール君嶋屋
アクセス:JR根岸線「関内」駅 南口徒歩1分
横浜市営地下鉄ブルーライン「関内」駅 出口1 徒歩1分
電話:045-305-6969
営業時間:月~土、日・祝 12:00-22:30(LO22:00)
【横濱オンガク的酒場 バックナンバー】
#01〜21時55分の「スリーマティーニ」
お知らせ・TAP the POPとのコラボイベントが開催!!
【斉藤ネヲンサインリサイタル】「横濱オンガク的酒場」の筆者である斉藤ヒロユキ率いる斉藤ネヲンサインが地元・横浜に登場。TAP the POPとコラボレーションします。書籍『音楽愛(ONGAKU LOVE)』に掲載されたエピソードに合わせて、名曲を演奏するコーナーもあり。TAP the POPからは中野充浩がトーク参加。マリンFMのDJでお馴染みのラヴィッツ松尾(his hair)の飛び入り予定。TAP the POPの書籍やグッズも販売予定。
▶︎日時:2026年9月12日(土)
1st stage 19:00〜/2nd stage 20:00〜(※入れ替えなし)
▶︎会場:長者町FRIDAY
神奈川県横浜市中区長者町8丁目123番地 相模屋ビル3階
▶︎TEL:045-252-8033
▶︎料金:music charge ¥3,000(別途ワンドリンク&ワンフードオーダー)
※ご予約はお店に電話、もしくは斉藤ネヲンサインInstagramなどSNSのDMにて受付ます(必ず返信します)。

- 斉藤ネヲンサイン
高度成長期の昭和カルチャーに影響を受け、どこか懐かしい感じのコンテンツでライブ、イベント運営をしている。ヨコハマを拠点に活動中。
”Saito Neonsign” is a “Showa Kayo” style activity from Yokohama.We’re playing original tunes inspired from 40’s-70’s Japanese oldies.
公式サイトはこちら

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