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レディオヘッド~最悪の状況で生まれた最高のパフォーマンス

2024.06.26

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「あのショーは災難だったよ」


そう語るのはレディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークだ。

1997年6月28日、イギリス最大級のフェス、グラストンベリー・フェスティバル2日目のトリを飾ったのは、シングル「Creep」や2ndアルバム『The Bends』の大ヒットで頭角を現した注目の若手バンド、レディオヘッドだった。

3rdアルバム『OK Computer』をリリースしたばかりのレディオヘッドにとってこの日がツアーの幕開け。しかも4万人の聴衆が集まる大舞台ということもあり、バンドに勢いをつけるためにも絶対に失敗できない重要なライブだった。

ライブは1曲目の「Lucky」から演奏も観客の反応も上々で、バンドは順調にスタートを切る。しかし、そこから次々と思わぬアクシデントがトムを襲った。

足元にあるモニターから急に音が聞こえなくなり、さらにはステージ上の照明から強烈な光がトムの顔に浴びせられ、何も見えなくなったのだ。

音が満足に聞こえない、周りを見ることもできない、そんな状況の中でトムは恐怖や不安とともにエンジニアへの怒りをつのらせた。

「もし、その日のPA(音響スタッフ)を見つけていたら、楽屋でそいつのクビを絞めて殺していただろう。すべてが台無しだった。僕はその間、4万人の前に立ちすくんでいた。立ったままどうすることもできず、『これだけの人の前で僕の人生をめちゃくちゃにしてくれてありがとう』と言うしかなかった」


それでもなんとかライブを終えてステージを降りたトムは、殺意を抱くほどの激しい怒りでPAのところに向かおうとした。

そのときトムの怒りに気づいて引き止めたのが、のちにパートナーとなる大学時代からの恋人、レイチェルだった。

「ほら、聞こえるでしょ」


そのときトムの耳に入ってきたのは、それまで体験したことのないような大歓声だった。ファンはもちろん、スタッフも「素晴らしいライブだった」とトムに声をかける。

不安や怒りで思うような演奏が出来なかったレディオヘッドだが、不思議なことにこの日ばかりはそれがいい方向へと転がった。

この日のレディオヘッドのパフォーマンスは音楽メディア、批評家からも大絶賛され、90年代イギリスのロックシーンを代表するバンドとしての地位を確立する。



Radiohead『OK Computer』
ワーナーミュージック・ジャパン

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