TOKYO音楽酒場

【13軒目】荻窪・ルースター──ジャズやブルースの生演奏で誰もが楽しく酔える酒場

2015.02.12

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回訪れたのは、ジャズやブルースのセッションが連日繰り広げられることで人気のライブ・バー。演者もお客さんもフラットな気分で楽しめる、大人の遊び場のようなお店です。

住みやすい街として根強い人気を誇る、荻窪駅。飲食店も多く連なる賑やかな北口・南口方面とは逆側、落ち着いた雰囲気のある西口改札を出て、線路沿いをしばらく歩くと見えてくるのが、今回訪れる〈音楽食堂 ルースター〉だ。

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階段を降りるとまず目に入るのは、ブルースやジャズの巨人たちを描いた、ラフなタッチのペインティングの数々。やはり店名はハウリン・ウルフ「Little Red Rooster」から取ったのだろうか、あるいはライトニン・スリム「Rooster Blues」だろうか。ミュージシャンとしても活動する佐藤ヒロオが1997年にオープンしたルースターは、今年で18年目を迎える。

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「18年といっても、まわりには高円寺・JIROKICHIをはじめ歴史の長い店もありますし、大先輩も多いですからね。まだまだ新人のつもりでやってます」(佐藤ヒロオ)

木のぬくもりを感じさせる店内は40名ほど座れるテーブル席があり、美味しいお酒と料理を楽しみながらくつろげる。その奥には、鳥の巣のような装飾が施されたステージが。グランドピアノやドラムセットなど機材も常設し、連日ライブも組まれているルースターだが、店はライブハウスではなく、あえて〈音楽食堂〉を名乗っている。

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「ライブハウスに行かれている方の多くは、好きなミュージシャンを目当てに観に行っていると思うんです。それはそれでもちろんOKですが、せっかく素晴らしい生演奏なのですから、ミュージシャンを知らないお客さんにも聴いてもらえないかな。そういう思いで看板には店名よりも大きく音楽食堂って出したんです。ライブハウスよりも食堂の方が抵抗ないかなって」(佐藤)

ブルースやジャズ、ロックから、ソウル、ブラジル音楽、ラテン……と、ルーツ・ミュージックに根差したセッション・ライブが毎日開催。たとえば2月20日に予定されている〈BLUES NIGHT〉などは、ヒックスヴィルの中森泰弘や真城めぐみをはじめ、青山陽一など、普段はロック/ポップスのフィールドで活躍している面々が、彼らのルーツにあるブルースを思う存分に演奏するという。他ではあまり観られないような興味深いセッションが組まれたりと、この店ならではのブッキング・センスが光る。

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「出演者は基本的に何年もずっと一緒です。出演者募集とかはしていないし、デモテープを送ってくるという人もほとんどいないんです。毎晩、誰もが楽しめるような生演奏を届けたい。それだけなんです。扱っている音楽のジャンルは幅広いのですが、割と大人向けかもしれません。もちろん自分がそういう音楽が好きなのもありますが、これ表現が難しいのですけど、見知らぬお客さんに向けて演奏する事に慣れているミュージシャンに出てもらっています。そうすればふらっと入ったお客さんも楽しめますし」(佐藤)

ルーツ・ミュージックのライブが多いが、時には歌謡曲のライブの日もある。懐かしの歌謡曲はやはり中高年にはたまらず、一緒に歌ったり掛け声をかけたりといつも大盛り上がりだそう。

「ジャズやブルースと言ってもスタンダード・ナンバーの演奏が多いんです。知っている曲の方がお客さんは楽しめますものね。歌謡曲もそれと考え方は同じ。実は演奏してる側にとっても、子供の頃に聴いていた歌謡曲って懐かしい。歌ものだけれど、ああ、そういう音って入ってたよね、とか歌謡曲だとお客さんも記憶に残っているので、ボーカリストだけじゃなく各楽器のミュージシャンも演奏に反応が返ってくる。だから、やってて楽しくなっちゃうんですね」(佐藤)

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サービス精神旺盛なマスターは、ライブがはじまる前には自ら前説も担当。さらに1部と2部の合間には玄人はだしの手品を披露するショータイムも挿む。そんなところも、普通のライブハウスとはかなり変わっている。

「たとえば、ジャズのライブハウスに一人で行った時に、30分ぐらい休憩あったら、その間をどう過ごそうかなって困るじゃないですか。そういう時に手品なんかやってたら、間が持つかなって(笑)。ライブ中はPAを担当したり、営業するにあたってやらなきゃいけないことはたくさんありますけど、自分で楽しくてやってることは全然苦じゃない。楽しくてしょうがないですね」(佐藤)

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連日、充実したステージが繰り広げられているルースター。取材当日ライブを行っていたのは、日本のブルース界の至宝との呼び声も高い、ギタリストの吾妻光良。そして彼がリーダーを務めるビッグバンド〈吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ〉より、ベースの牧裕、ボ・ガンボスでの活躍でも知られるドラムの岡地曙裕、ピアノの早崎詩生、パーカッション湯川治往からなるリズム・セクションを従えてセッションを展開されていた。ゲストに富山浩嗣(ドリンキン・ホッピーズ)を迎えたナンバーを数曲交えながら、ブルース、スウィング、カリプソと軽妙洒脱に奏でていくアンサンブルと、観る者の心を虜にして離さない吾妻のギター・プレイ、そしてユーモアとシニカルを巧みに交えた歌で、満員の店内は大いに盛り上がった。

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この日ステージにて流麗なプレイを聴かせていたピアニストの早崎詩生は、開店当初からルースターに出演しているという。

「僕は、〈ローラーコースター〉というブルース・バンドで開店当初から出演していますね。月イチで18年間やってるから……もう数えきれないぐらい。ルースターは、ピアノの生音がちゃんと聴こえるのもありがたいですね。あと、ライブ終わってからお客さんも出演者も、ゆっくり飲めるのがいいんです。そういう店って、なかなか少なくなってきたから。」(早崎詩生)

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「ルースターは、中央線のブルーノートと呼ばれてますからね。私は、去年ぐらいからよく出させてもらうようになったんです。この店のいいところって言えば、それはもう店主が手品が上手だってことですね。それがまあ時々、話の邪魔になったりもするんだけど(笑)。あと、ここはお客さんが絶対座れるのもいいよね。以前に一度、92歳の伯母が私のライブに来たいってことで、ここなら座って観られるからと連れてきたこともありましたね」(吾妻光良)

年配客にもやさしいルースター。実は、もう一軒姉妹店〈ルースター・ノースサイド〉をオープンしている。

「ウチに来てくださるお客さんは、おじさんやおばさんが多いんですね。で、中にはおやじバンドをやってたりする人もいて。おやじバンドってなかなか活動場所が見つけ難いんです。若者向けのライブハウスは酒のつまみがないとか、テーブルとイスがないとか。大人ですので聴きに来る方々の側を考えちゃうんですね。立ち見はきついって。で、10年ほど前ですか、あー、じゃあそういう人たちの場所を作っちゃおうということで、貸切専門ライブハウスをはじめました。貸しホールと違うのは飲食が充実しているところですね。あと、昔は楽器を弾いてたけど、今は一緒に演奏する相手がいないからもうやってないっていう人も多かった。なのでセッションできる日も設けてます」(佐藤)

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マスターの話の端々からは、演者側も客席側もフラットに楽しんでもらえる空間を作ろうという心意気が伺える。そんな想いの表れと言ったら大袈裟だろうか、ルースターのステージは客席との間に段差がなく、フラットな目線で音楽が奏でられる。

「まあ、ミュージシャンも年いってる人が多いので、フラットというかバリアフリーなんですね(笑)。冗談はともかく、ジャズ系のお店って、ロック系のライブハウスと違ってステージってあまり高くないことが多いんです。お客さんが座っているのでステージが高いとかなり上を見上げるようになっちゃうし、ミュージシャンはお客さんを見下ろす感じになっちゃう。それにあまりステージが高いとなんかミュージシャンのほうがエラい人みたいですよね(笑)。店をやってみてつくづくわかったのは、お客さんがお金と時間を使って来てくれて初めて演奏が成り立つってことだったんです。ライブハウスだけで考えるとわかりにくいですけど、どんな店でもお客さんあっての店。それが普通ですよね。ライブハウスだからミュージシャンや店の方がお客さんよりエラいっていうのは、やっぱり変。でも、ウチに集まる人たちはみんな、楽しませる余裕がある人と楽しむ余裕がある人たち……そんな演者とお客さんの関係って最高じゃないですか。寄席に行って落語を楽しむような感じで、音楽を楽しむ。そういう場所を作っていけたらいいなって思いますね」(佐藤)

撮影/相澤心也




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音楽食堂 ルースター
東京都杉並区荻窪5-16-15 井上ビル B1
LIVE TIME:19:00~22:30(24:00 close)
1st 20:00~/2nd 21:30~22:30(入替え制ではありません)
不定休(スケジュールにてご確認ください)
TEL:03-5347-7369
http://ogikubo-rooster.com/



吾妻光良 & The Swinging Boppers『Senior Bacchanals』

吾妻光良 & The Swinging Boppers『Senior Bacchanals』

(HOT RIVER RECORDS)


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