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TOKYO音楽酒場

【20軒目】池袋・KING RUM──繁華街の中心でカリブにトリップできるラム専門バー

2016.10.24

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回は、池袋で美味しいラムと心地良い南国音楽を堪能させてくれるバーを紹介します。

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新宿・渋谷に続き、世界第3位の乗降客数を誇るターミナル、池袋。駅の西口を出て、昼夜問わず人が集う西口公園や東京芸術劇場を横目に北上し、西口五叉路を渡った左側のブロックへ入るとそこは、居酒屋やバー、スナック、キャバクラ、各国料理のレストランなどがひしめき合うように営業している、池袋の中でももっともディープな酒場エリア。その一角にある雑居ビルの1階で、10年以上にわたり営業を続けているのが〈BAR KING RUM〉だ。

オレンジ色の看板を目印に店内へと一歩は入れば、雑踏の喧噪を一気に忘れさせてくれるような空間が広がる。落ち着いた風合いの店内のあちこちには、ラムの瓶が置いてある。そう、KING RUMはその名の通りラム専門のバーなのだ。

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「もともとラムを専門にした店にしたいとは思ってたんですが、それでも最初はラム以外のお酒もいろいろ置いてたんです。だけどオープンして2年後ぐらいに、ウイスキーとは他のお酒はあげちゃいました。余計なものが置いてあるからいけないんだって思って全部無くして、本当にラムだけの店にしました」

そう語るのは、オーナーの原田陵さん。もともとスカやレゲエが好きだったことがきっかけとなり、ラムの魅力に取りつかれたという原田さんは、バーテンダーとしてのキャリアを積んだ後、2005年にKING RUMをオープン。現在はラムの普及や定着を目指す〈日本ラム協会〉の創設メンバーとして名を連ねている。

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「ラムにはまったきっかけは、やっぱりレゲエ・クラブですね。新宿二丁目に「69(ロッキュー)」ってクラブがあってよく遊びに行ってたんです。先輩がラムコークを飲んでて、ラムが好きになって。それからバーテンダーをやりはじめて、最初はウイスキーの勉強をしはじめて、モルトのバーにもいたことがあったんですが、そこでウイスキーの樽で寝かせたラムなんかを飲んで、味にもいろんな違いがあるんだって知っていったんですね。店をはじめる前からさんざんラムばっかり飲んできたんですけど、KING RUMを開店してから10年間はラムしか飲まないって、自分の中で縛りを作ったんです」

〈アプルトン〉〈ロンサカバ〉などの定番から、ヴィンテージのラム、さらには原田さんが自ら原産地を旅して仕入れた日本未流通の銘柄など、店に置いてあるラムはゆうに350種を超える。

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「希少価値が高いのはフランスの海外県、マルティニークのラム〈ラバラン〉かな。今はもう現存してない蒸留所の、1952年製のラム。これだけを探して飲みに来る人もいらっしゃいます。ラムって、占領されていた国によって味が変わってくるんですね。たとえばイギリス領だった地域のラムはウイスキーの作り方に近い。ジャマイカのラムなんかは、すごくパンチが強くて。オーバープルーフ・ラムって言って、だいたいアルコール度数は63度がメインなんですけど、それをおじいちゃんが昼間から1本半ぐらい空けたりしてるんですよ。人も強烈だけど、酒も強烈なんですよね。一方で、フランス領で作られるラムはブランデーっぽい味わいがあって、きめ細やかなで華やかさを感じる。キューバやドミニカのようなスペイン領は、シェリーみたいに甘めのラムで、やさしい人も多いからか口当たりもやさしいんです。そんな風に原産国それぞれの国民性みたいなものも、なんとなく表れてるのが面白い。本当に銘柄ごとに味が違うので、底知れない魅力があるんですよね」

定期的にカリブ諸国へ渡航しては、ラムの知識を深めている原田さん。先日もジャマイカやキューバを旅してきたばかりだそう。

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「僕の場合は大体、ラムがメインの旅になっちゃいますね。先日旅行した時も、朝から蒸留所を回って、夜は音楽を楽しんでっていう感じで。ただ、ジャマイカの蒸留所なんかは山を超えて谷を渡ってみたいなエラいところにあるんですよ。とくに以前行ったところはすごかった……ラムは、ほとんどの場合が1日から2日くらい発酵させるんですけど、ジャマイカでは1週間ぐらいかけて自然発酵させて強烈な個性と香りがあるラムを造る所が多いんです。その時伺ったのは、200年以上続いてるクモの巣が張ってるような蒸留所で、臭いもハンパなかったんですよね。で、発酵の段階で蒸留所に棲みついた菌なんかも大きく影響してくるんです。そうして直接足を運ぶことで、製造方法の謎が解けたりするんですよね」

そんな話に耳を傾けながら、カウンターの向こうにずらりとボトルが並んだ壮観な光景を眺める……やはりこれだけ数が多いと、どれを飲めばいいのか目移りしてしまう。

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「やっぱり最初は、スペイン・イギリス・フランスと元の占領国ごとに飲み比べて、製造法によって違う味わいを楽しむとわかりやすく入れると思います。あと熟成してないラムから入るのもいいですね。そこから少しずつ熟成したものを飲んでいくと、樽で寝かせることでまろやかになったり、逆にイギリス領のラムは雑味が取れて味がシャープになったり、こういう風に味が変化していくんだ?というのがわかると思います」

KING RUMではラムを使ったカクテルも提供してくれる。中でもモヒートは絶品中の絶品。〈サンティアゴ・デ・クーバ3年〉にブラジルの有機砂糖を加えて、丁寧に馴染ませる。そこにイエルバ・ブエナという薫りの強いキューバ・ミントをどっさりと投入。ミントが効いた爽やかな飲み口の奥に、ラムのあまやかで香ばしい風味とまろやかな甘味が広がる。

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店には平日からラム好きが多く訪れる。取材当日たまたま店に飲みに来ていたのは、沖縄は伊江島産の〈イエラム サンタマリア〉を作っている(株)伊江島物産センター 伊江島蒸留所主任、浅香真さん。2011年から生産がはじまったイエラム サンタマリアは、サトウキビの搾り汁から直接造るアグリコールラムという世界中のラムの5%に満たない製法で作られているそうだ。もちろん、この酒もKING RUMで飲める。

「原料は伊江島で獲れたサトウキビを使っています。品種はゴールドと、ホワイトラムのクリスタルの2種類。ゴールドの方は貯蔵年数が若いので、色や樽の薫りについてはまだまだですが、素材の良さがそのままストレートに出るお酒になればいいなと思って作っています」(浅香)

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KING RUMで流れるのは、スカやレゲエを中心に、ラムの産地であるカリブの音楽。オーナーの原田さん自身も、スカ・バンド〈OVER ALL 7〉のメンバーとして活動している。

「僕はスカが大好きで、店でもスカやカリプソ、レゲエ、ロックステディをかけることが多いですね。あとはニューオーリンズからマルティニーク、トリニダード・トバコの音楽までいろいろかけてます。音楽好きのお客さんも多くいらっしゃるんですが、音楽からラムにハマっていく人も多いし、逆にラムが好きでウチの店に来てるうちに音楽も好きになるっていうパターンもあったり、そういう相互作用も生まれてますね」

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毎週木曜日には、レゲエ/ソカのセレクターとして人気のHEMOさんと共同で、〈RUM LOVE THURSDAY〉というゆったりと飲めるDJイベントを開催。

「日本初の(毎週開催する)ラム・イベントということでスタートさせました。HEMOさんを中心に、Pegasus MovementのTakkyさんなど毎回DJ/セレクターに選曲してもらってます。シンガーのBARBIE JAPANさんなどがゲストで参加してくれたことも。あと、これから水曜日も音楽に力を入れていこうと思っていて。毎月第3水曜には「SALSA120%」編集長の山口誠治さんと音楽ライターのmofongoさんをDJに迎えた〈DOS ANTILLANOS〉というイベントがスタートしました。マルティニークのビギンや、プエルトリコの音楽など、フランス領とスペイン領の音楽を中心に楽しんでもらえるようなイベントになったらと思ってます」

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店にはラムと相性抜群のシガーのラインナップも充実。カリブの音楽に身を揺らしながら、シガーの煙をくゆらせ、旨いラムを舌で転がす──池袋の繁華街のど真ん中で、ヘミングウェイを気取る夜もいいかもしれない。

「まぁ、自分としては、麦茶と同じぐらいの感覚でラムを飲んでくれるようになったらいいなって思ってますけどね(笑)」

うむ。やっぱりそれぐらいの感じのほうが、ラムの美味しさをより気軽に楽しめるかもしれない。さて、4杯目はどのラムを飲もうか──。

撮影/相澤心也


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BAR KING RUM
東京都豊島区池袋2-9-1 太田屋ビル1F
TEL:03-3980-2903
19:00~6:00(無休)
http://www.kingrum.jp/


KING RUM × selector HEMO presents
RUM LOVE THURSDAY

毎週木曜 19:00〜24:00
Selector:HEMO,HARADA and guest!
ADM:1000円(1ラム付)

KING RUM PRESENTS
DOS ANTILLANOS

毎月第3水曜 19:00〜24:00
DJ:山口誠治(「SALSA120%」編集長)/伊藤嘉章 a.k.a.”mofongo”(音楽ライター)
ADM:1000円(w/1DRINK)

KING RUM 11th.Anniversary
Rum&Live&Dj Party COCONUTSCRASH VOL.71

2016年10月30日(日)16:00 OPEN/START 
池袋 LIVE INN ROSA

LIVE ACT:
Chieko Beauty&CB’s/Pele/Barbie Japan
Singer Romie/Tropicos/Over All 7
DJ:
Kei.Miyanaga (The Ska Flames)
伊藤嘉章 a.k.a. “mofongo”(モフォンゴ)
大石始(TOKYO SABROSO)
Mc:
Yogie(RUMCO)
Caribbean Food
Ariapita FOOD DELIGHT
・Rumcocktail&Rum (世界のRum&Rum Liqueur) ¥500~
King rum+Guest Bartender
(Blue Cane 大橋 久胤&Bar Jimador 佐藤 誠)

本記事は2015年5月29日に初回公開したものに加筆修正しました。

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