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トレインスポッティング/ドラッグストア・カウボーイ〜英米ジャンキーたちの末路

2017.02.23

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ジャンキー(いわゆる薬物中毒者)を主役にした英米産の映画はこれまで数々と製作されてきたが、良質な作品に共通するのは、例外なく登場人物が悲惨な風景の中を彷徨うことになるという点だ。今回はそれを象徴した2本の作品を比較紹介したい。

まずはアメリカ。『ドラッグストア・カウボーイ』(DRUGSTORE COWBOY/1989)は、ガス・ヴァン・サント監督の35㎜デビュー作として知られる伝説的な作品。公開当初はマット・ディロンやケリー・リンチのイケてるヴィジュアルもあって、日本ではストリート/ファッショナブルな扱いをされたが、今観直してみると、けっこうヘヴィーな内容だ。

ボブ(マット・ディロン)とその妻ダイアン(ケリー・リンチ)は、自分たちが楽しむためのドラッグを手に入れるために、時々薬局を襲ってはアパートやモーテルを転々としている夫婦。幼馴染みのリックも仲間で、最近は若い彼女のナディーンも一緒に行動している。大抵のジャンキーはドラッグを買う金欲しさに宝石強盗をするが、彼らはどうせやるなら直接と、薬局(ドラッグストア)ばかり狙っている。

舞台は1971年のオレゴン州ポートランド。ロックの世界で言えば、ローリング・ストーンズが「Brown Suger」をリリースした頃だ。ボブたちは警察に目をつけられていて、その夜ガサ入れを喰らう。ボブは異常にジンクスに拘る男で、その一つに「ベッドに帽子を置くな」があった。

だが、新米で仲間外れ意識を抱いたナディーンは、ベッドに帽子をワザと置く。その日、珍しくドラッグ入手に失敗したボブが目にしたのは、モーテルでドラッグ過剰摂取が原因で冷たくなったナディーンの姿だった。しかもモーテルは地元警察の集会に使われる日で、窓の外はパトカーだらけ。死体を運び出すボブは、この時人知れず心に誓う。

どうかこの死体を無事に埋めさせてください。ブタ箱は勘弁です。この願いを聞いてくれたら、感謝の印に田舎へ帰ってカタギになります。


願いが叶ったボブはダイアンと別れて、薬物中毒更生プログラムに参加。工場で働きながら真面目に金を稼ぎ、荒んだ暮らしを改める。しかし、再会したダイアンとやり直す気持ちを告白した矢先、顔馴染みだったゴロツキにあっけなく撃たれてしまう。ボブは自分の身体が運ばれる救急車の中で、迫り来る死を前に「俺は生きていたい」と想う。

服役していたジェームス・フォーグルの自伝的小説が原作。そして何よりもこの映画を伝説化したのは、『ジャンキー』や『裸のランチ』で知られる作家、ウィリアム・S・バロウズが出演していたことだ。ジャンキーの神父役のバロウズの重み。映画公開から9年後の97年8月、83歳で死去した。

続いてイギリスの『トレインスポッティング』(TRAINSPOTTING/1996)は、後に『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー監督になるダニー・ボイルの2作目で、こちらもブリット・ポップ全盛期の影響もあって、日本ではクラブカルチャー/ファッション性の高い話題作として公開された。原作は映画同様の体験をしていたアーヴィン・ウェルシュの半自伝的小説。

人生で何を選ぶ?
出世、家族。
大型テレビ、洗濯機、車、CDプレーヤー。
健康、低コレステロール、保険。
固定金利の住宅ローン、マイホーム、友達。
レジャーウェア、ローンで買う高級なスーツとべスト。
単なる暇つぶしの日曜大工、下らないクイズ番組、ジャンクフード。
腐った身体をさらすだけの惨めな老後。
デキ損ないのガキにもうとまれる。
それが“豊かな人生”。
だが俺はゴメンだ。
豊かな人生なんて興味ない。
ヘロインだけがある。


舞台は若者たちの失業や貧困に覆われるスコットランドのエディンバラ。マーク・レントン(ユアン・マクレガー)には、陽気で悲惨な仲間たちがいる。ヘロイン中毒のスパッド、007おたくのシックボーイ、好青年のトミー、そして年上で兄貴分の喧嘩とアルコール中毒のベグビー。ドラッグ欲しさに窃盗や詐欺を繰り返す毎日だ。

マークはドラッグ断ち中、性欲が復活して行きつけのクラブでセクシーな女の子をナンパ。そのダイアン(奇しくも『ドラッグストア・カウボーイ』のケリー・リンチの役と同じ名前!)と一夜を共にするが、彼女は実は中学生という事実にビビッてしまう。

ジャンキー仲間の赤ん坊の死という悲劇をきっかけに、ドラッグに深く溺れていくマークだったが、今度こそはと両親の家で誓いを立て、幻覚と闘う地獄のような治療を受けて身体を元に戻す。そして一旗あげようとロンドンに行き、不動産の仕事に就いて働きまくるが、ある日、嗅ぎ付けたベグビーとシックボーイが居候し始め、トラブルを起こして会社をクビになる。故郷に帰ると、失恋が原因でドラッグにはまり、過剰摂取で死んだトミーの姿があった。

スパッドの持ちかけた仕事で大金を掴むマークと仲間たち。それぞれが甘い夢を描いた矢先、ベグビーは相変わらず喧嘩三昧で年下のマークたちを参らせる。マークはみんなが寝静まった後、稼いだすべての金を持ち去って、一人だけ未来へと歩き出す。

サウンドトラックには、イギー・ポップやルー・リードといった大御所から、ニュー・オーダーやプライマル・スクリームの中堅、ブラーやパルプのブリット・ポップ最前線、そしてテクノのアンダーワールドなどを収録。音楽的にも注目された作品だった。

【評価】
『ドラッグストア・カウボーイ』
深刻 ★★★
クール ★★★
いい女 ★★★
男気 ★★★
音楽 ★
救済 ★
『トレインスポッティング』
深刻 ★★★
クール ★★★
いい女 ★
男気 ★
音楽 ★★★
救済 ★★

『トレインスポッティング』のオープニングで流れるイギー・ポップ


20年後の彼らを描いた続編『トレインスポッティング2』は2017年4月8日日本公開予定。

あのウィリアム・バロウズが出演した『ドラッグストア・カウボーイ』

『トレインスポッティング』

『トレインスポッティング』


『ドラッグストア・カウボーイ』

『ドラッグストア・カウボーイ』


*日本公開時チラシ
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*このコラムは2015年7月22日に初回公開されたものに一部加筆しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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