ローリング・ストーンズのベーシストだったビル・ワイマンは、1970年代から日本の音楽シーンにも関心を持っていたらしく、3枚目のソロ・アルバム『ビル・ワイマン』のプロモーションで1982年に初来日した際には、人を介して細野晴臣に会ったりしていた。
そもそも細野に関心を持ったのは、ザ・バンドのリヴォン・ヘルムからカセットの音源を聴かせてもらったのがきっかけだったという。
ビルは最初のソロ・アルバム『モンキー・グリップ』(1974年)で、ニューオーリンズの顔というべきピアニストのドクター・ジョンと共演するなど、アメリカの南部に息づくケイジャン音楽などにも関心を持っていたし、スワンプ・ロックで知られるレオン・ラッセルもレコーディングに参加していた。
「モンキー・グリップ」
細野は1975年の『トロピカル・ダンディー』に始まったトロピカル三部作の時期に、ニューオーリンズからカリブ海へと広がる一帯の音楽を視野において、無国籍風でエキゾチックなサウンドに取り組んでいる。それらはビルにとっても間違いなく、興味深い音楽であったのだろう。
アメリカのミュージシャンたちの中にも、YMO以前から細野の作品に関心を持つものは多かった。これは偶然だろうが3部作の第2弾にあたる1976年の『泰安洋行』のジャケットは、ビルの『モンキー・グリップ』と同じテイストが感じられる。
「トロピカル・ダンディー」
「泰安洋行」
ローリング・ストーンズは1973年1月に日本武道館でコンサートを開催する予定を組んでいて、チケットも完売していたにもかかわらず、ミック・ジャガーに大麻所持の過去があるという理由で日本政府に入国を拒否された。そのために来日の予定が、直前に不可能になったことがあった。
それから待つこと17年。待望の初来日を果たしたストーンズのジャパン・ツアーは、1990年2月の東京ドームで全10公演が行われた。
そのときに来日していたビル・ワイマンが、細野に会いたいと連絡してきたのである。
そこで代官山にある焼肉レストラン、「サージェントペッパーズ」という名の店で会食することになった。かつて細野のパーソナル・マネージャーで、YMOも手がけてきた日笠雅水が、そこに同席したときのことをTwitter上でこう明らかにしていた。
サージェントペッパーズは細野さんが店名を慮ることなく予約、当日現場で「よりによってこんな名前のお店に!ヤバイ!」って言ってるところにビルがやって来て、ニヒルな感じの笑みを浮かべ「君たちがロンドンに来た時には僕のスティッキーフィンガーズって店に招待するよ」と言ったのでありました。
— 日笠雅水 (@maaco3) April 14, 2019
この夕食のお返しに細野はビルからローリング・ストーンズ来日公演に招待されて、VIPとして開演前の楽屋を訪ねることになった。
しかし、ローリング・ストーンズの音楽に細野がそんなに詳しくないので、誰かに同行してもらいたいという話になって、日笠が強く推薦したのが忌野清志郎だった。
この時点での二人は、意外にもほとんど面識がなかったという。
日笠は忌野清志郎一家とすでに親しい間柄だったし、日頃から両者の信頼を得ていたので、3人で一緒にビルの楽屋を訪ねることになった。ライターの岡本貴之とフォトグラファーのゆうばひかりによって企画された単行本「I LIKE YOU 忌野清志郎」(河出書房新社)のなかで、日笠はこのように述べていた。
実は私は、清志郎さんと細野さんには、いつか二人で音楽をやってほしいとひそかに考えていたので、これは良いきっかけになるな、と。結局、私も同行することになって、3人で東京ドームに行きました。清志郎さんと細野さんが話をしたのはその時が初めてです。
なお、その時の楽屋での模様については2005年8月15日にオンエアされたNHKラジオの特別番組『ダブルDJショー 2005』で、二人が詳細を語っていた。
それによれば終演後に3人で六本木で会食した時に話題に出たのが、三宅伸治とともに坂本冬美をヴォーカルに迎えて始めようとしていたSMIの話だった。
東芝EMIの創立30周年記念イベント「ロックの生まれた日」で競演することになった3人のユニットは、名前の頭文字を取ってSMI(坂本+三宅+忌野)と名付けられていた。
これに惹かれた細野はリハーサルのスタジオにも顔を出して、アイデアを出したあたりから入り込んでいったという。
「ロックの生まれた日」は、日比谷野外音楽堂と大阪城野外音楽堂で開催されたが、SMIは「パープル・ヘイズ音頭」やビートルズのカヴァー「AND I LOVE HER」、モンキーズのカヴァー「DAY DREAM BELIEVER」、歌謡曲の「高校3年生」など7曲を披露した。
この試みが好評だったことから、音源をレコーディングを作品化する企画が持ち上がると、忌野清志郎は細野をプロデューサー兼メンバーとして迎え入れる。
こうして1991年になってから、あらためてユニットHISが誕生するのであった。

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