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ぼくの好きな先生〜高校生時代の忌野清志郎が慕った美術部顧問の教師

2025.01.20

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「ぼくの好きな先生」は、RCサクセションの記念すべき最初のアルバム『初期のRCサクセション』からのシングルカット曲として、1972年2月5日にアルバムと同日にリリースされた。RCの黎明期、つまり忌野清志郎、小林和生、破廉ケンチの3人編成による、フォークトリオ時代の作品である。

さかのぼること約2年…そのアクの強さが“売り”だった(はずの)彼らは、1970年3月5日にリリースしたデビューシングル「宝くじは買わない」がまったく当たらず、同年12月に発表したセカンドシングル「涙でいっぱい」も見事に不発に終り、渋谷にあった音楽喫茶『青い森』などでの地道なライブ活動を続けていた。

そんな彼らが「次こそは!」と、スタイルを妥協することなく放ったのが、「ぼくの好きな先生」だった。当時の担当ディレクター新田和長は当時を振り返る。

「とにかく清志郎は初めから“アーティスト”でした。言いたいことは言うし、やりたいことは絶対に妥協しないでやる。そんな個性的なところが魅力的でした」


清志郎が書いたこの“先生の歌”には、モデルになった人物がいた。それは小林晴雄という高校時代の美術部顧問の教師だった。

楽曲がリリースされた3年前(1969年)の秋、朝日新聞にこんな身の上相談が載った。それは清志郎の母、栗原久子(育ての親・伯母)からだった。

「18歳になる私の子供はギターのプロになるのだと申します。私どもには何が何だかわからなくなりました」


気をもむ母を説得したのが、小林先生だった。
 

「大学に行っても4年遊ぶんだから、4年は好きなことをやらせてあげましょう」


栗原清志は、1967年に都立日野高校に入学した。俳優の三浦友和も同じ学年だった。当時を知る同級生の証言によると、校内では物静かな生徒だったらしい。小柄で、華奢で、髪型はマッシュルームカットで、いつも飄々と廊下を歩いていたという。

高校時代にRCサクセションを結成。活動にのめり込み、欠席や遅刻が相次ぐようになる。そんな中、美術部顧問の小林先生にだけは心をひらき、絵画製作に熱中した。

小林先生は他の教師と違って、生徒の話にじっくり耳を傾ける人だった。「勉強が嫌いだから絵描きになった」という小林先生は、職員室が嫌いで、美術準備室でいつも一人で煙草を吸っていた。同級生の一人はこんなことを憶えていた。

「美術部の部員でもない彼がショッキングピンクに染め上げた白衣を着て、放課後の美術室で黙々と絵筆を動かしていたのを憶えています。彼は本当に小林先生を慕っていました」


高校を卒業した栗原清志は“忌野清志郎”として、1970年にプロデビューを果たす。2年後、「ぼくの好きな先生」が入ったファーストアルバムを持って母校の美術室を訪れた。

「先生のことを歌にしたんだ。迷惑でしたか?」


小林先生は言葉少なく…こう振り返る。

「照れくさかったけれど、やっぱりうれしかったです」



<引用元・参考文献『フォーク名曲事典300曲』/富澤一誠(ヤマハミュージックメディア)>


初期のRCサクセション

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