RCサクセションが「宝くじは買わない」でデビューを果たしてからちょうど10年が経った1980年。ロックバンドになったRCサクセションはついにブレイクを果たした。
その皮切りとなったのが、渋谷のライブハウス「屋根裏」で1月19日から4日間開催された連続ライブだった。
デビューして2年後に「ぼくの好きな先生」が少しだけヒットしたが、それ以来ずっと鳴かず飛ばずだったRCサクセションに変化が起きたのは、名曲と評価される「スローバラード」がまったく売れず、続いて出した「わかってもらえるさ」もほとんど誰にもわかってもらえないままに終わった1976年が過ぎてからのことだ。
「それまでの時期というのは世間に認められようが何しようが、自分の感覚的なものをですね、表現しようと思ってたの。でも結局それが良くないんじゃないかと思って、やっぱもっと分かりやすい単純なリズムでやった方がいいんじゃないかと、ストーンズを研究したわけよ、ついに(笑)」
忌野清志郎は生ギターを弾きながら歌うフォークのスタイルから、ハンドマイクでソウルフルなヴォーカルを前面に出すために、シンプルでストレートなロックを目指すバンドへとRCサクセションを改造していく。
その頃に活動の拠点としていた場所が、渋谷のライブハウス「屋根裏」だった。1975年にセンター街と西武百貨店の間にあるビルの4階に店を構えてオープンした「屋根裏」は、有名無名問わずブッキングし、昼も夜もライブをしているのが特徴で、多くのバンドが腕を磨き合っていた。
RCサクセションは1977年から「屋根裏」に出るようになったが、忌野清志郎は髪を逆立てて化粧をし始めて、パフォーマンスも視覚的に訴えるものに変わっていった。
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新生RCサクセションのシングル「ステップ/上を向いて歩こう」が発売されたのは、1979年の7月21日のことだ。それに合わせてRCサクセションは違和感を感じながらも、テレビにも出演してプロモーションを行った。
影響力のある人気番組だった『テレビジョッキー』『紅白歌のベストテン』『銀座NOW』『山城新伍の金曜娯楽館』『ピンクレディー100発100中』などに出たが、しかしどれも「ステップ」のヒットには結びつかなかった。
その頃を振り返って、忌野清志郎がこう語っている。
テレビに出た影響ってやっぱりあったね。だってオレ、近所の風呂屋のおばさんに言われたもん。番台に座ってるおばさんがまじまじとオレを見てさ、「最近、よくあんたそっくりの男の子がテレビに出て歌ってるのよ。髪の毛逆立てて化粧してるの。まさか、あんたじゃないよねぇ。でもよく似てるわ」。オレは「へーっ、見たことないな」ってとぼけてた。
しかし、その頃から「屋根裏」にやって来る観客の数が150人、180人と、ライブをやる度に増え続けていた。本来なら100人くらいが定員だった「屋根裏」はすし詰め状態で、店の前には入れない人たちが溢れるようになった。
1979年の秋には、サポートメンバーだったギターの仲井戸麗市が正式に加入。新生RCサクセションはバンドとしてのオーラを発揮し始める。
そして1980年1月21日に「雨あがりの夜空に」の発売が決まったので、そのリリース記念が「屋根裏」連続4日間のコンサートとなったのだ。最終的には4日間で800人を動員、屋根裏の動員記録を更新した。
セットリストは「ステップ!」と「上を向いて歩こう」、そして「スローバラード」を除いて、ほとんどがレコード化されていない新曲だった。
だが、ライブで繰り返し演奏してきたこともあり、観客にとっては合唱するほどに馴染みの曲となっていた。狭い室内に熱気が充満し、“酸欠ライブ”と呼ばれるほどに大盛況だった。
その時は思いもしなかったけど、それがオレたちの「屋根裏」最後の4日間だった。もう「屋根裏」じゃ危険な状態だった。死人が出ても不思議じゃないくらい客は詰め込まれ、エキサイトしてた。
RCサクセションは4月に霞ヶ関の久保講堂でワンマン・コンサートを開催し、そのライブを録音したアルバム『ラプソディ』が好調なセールスを記録、代表作のひとつとなった。
『ラプソディ』の後押しもあって、彼らはどこでコンサートをしてもチケットが即完売するほどの人気を博し、翌年12月にはワンマンで武道館のステージに上がることになる。
参考文献:
『生卵 忌野清志郎画報』(河出書房新社)
『ROCKIN’ON JAPAN 特別号 忌野清志郎1951-2009』(ロッキング・オン)
『GOTTA(ガッタ)!忌野清志郎』連野城太郎著(角川文庫)
※忌野清志郎の発言は『ROCKIN’ON JAPAN 特別号 忌野清志郎1951-2009』と、『GOTTA(ガッタ)!忌野清志郎』からの引用です。

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