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季節(いま)の歌

秋の歌〜甲州街道はもう秋なのさ 後編

2020.09.30

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もうすっかり秋ですね。
今回の<季節(いま)の歌>は、前編に引き続きRCサクセションの名曲「甲州街道はもう秋なのさ」を聴きながら、アルバム『シングル・マン』の発売を廻って起きた前代未聞のエピソードをご紹介します。

♪甲州街道はもう秋なのさ/忌野清志郎&仲井戸麗市(1994年LIVE)



1975年の春、レコーディングは完パケていたものの、事務所やレコード会社(ポリドール)との“契約上の都合”でアルバムは発売されなかった。
そして一年後、ようやく陽の目を見たアルバム『シングル・マン』(1976年)は全く売れず、すぐに廃盤となる。
ジャケットは『幼児児童絵画統覚検査図版』という、子供の精神分析用の絵が載っている本からのもので、清志郎のアイディアだった。
中ジャケ(CDでは裏ジャケ)でそれを真似たメンバーは、当時これに近い姿で共同生活をしていたという。
フォークトリオの構成にドラムが加入し、楽器もエレキに持ち替え、RCは徐々にロックバンド化していくが、当時のギタリスト・破廉ケンチはエレキギターを上手く使いこなせず鬱状態に…。
その後もRCサクセションは“落ち目の時代”を、もう少しだけ味わうこととなる。


そんな曰く付きの名盤『シングル・マン』は、吉見祐子を筆頭とする“廃盤復刻運動”の努力が実り、1979年に限定再発、そして80年に正式に再発される。
再発された際のLPレコードの帯には、ポリドールからの謝罪文が掲載された。

このアルバム『シングル・マン』は、4年前に発売されあえなく廃盤になっていたものです。しかし、このアルバムを今一度世に出したいと吉見佑子さん、「パイドパイパー・ハウス」岩永正敏さん、「ART VIVANT」芦野公昭さん、堀内丸恵さん(現・集英社代表取締役社長)、その他数多くの方々のご協力により「再発実行委員会」がつくられ、昨年末より自主限定発売がされていました。プレスされるたびに売り切れとなり、手に入れられない方や、東京以外の方から苦情が相ついでいましたが、このたびどこでも手に入れられるよう再発売できるようになりました。ひとえにRCサクセションを支持して下さるファンの皆様、そして再発実行委員会に直接、間接にご支援いただいた皆様の熱意のおかげと深く感謝しています。レコード会社としまして、こんな素晴らしいレコードを廃盤にしていたことを恥じ入り、反省している次第です。

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張り裂けんばかりの声で「うそばっかりー!」と絶叫し続けるリフレイン。
鬼気迫るその歌唱は、聴く者の胸を痛いほどにしめつける。
夢と現実の間を彷徨っているかのようなコード進行とメロディーラインは、当時のRCサクセションが置かれた状態を、そのまま表現しているかのようだ。
物憂げな秋の風景には“落ち目の時代”の清志郎の歌声がよく似合う…。

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RCサクセション『シングル・マン』

(1974/ポリドール)


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『GLAD ALL OVER』
’94年8月、日比谷野外音楽堂。
忌野清志郎&仲井戸”CHABO”麗市が4年ぶりにステージに並び立ったライブ映像作品。「甲州街道はもう秋なのさ」も収録。
特典映像としてテレビ特番で放映された2人の共演番組『EVERYDAY WE HAVE THE BLUES -生きる-』より「宝くじは買わない」「上を向いて歩こう」の2曲を収録。


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