1977年、グラムロックの創始者マーク・ボランはこの世を去った。
「自分は有名になるために悪魔に魂を売ったので、30歳までは生きられないと思う」
生前、本人が度々言っていたという言葉である。若い頃にフランスで“魔女”と同棲していたボランは、その魔女に「あなたは若くして大成功を収めるが、30歳までに血まみれになって死ぬだろう」と預言されたという。
ファンタジーが大好きなボランらしい作り話であると、友人たちや取り巻きは信用しなかったのだが、“現実は小説より奇なり”の言葉通り、その預言は現実のものとなった。
その悲劇は、ボランが30歳の誕生日を迎える2週間前の9月16日に起きた。恋人(内縁の妻)グロリア・ジョーンズが運転する車の助手席に乗って、ロンドン郊外にある家に帰宅する途中だった。疾走する紫のブリティッシュ・レイランド275Gは、二人を乗せたまま木立に激突し、還らぬ人となった。
長年のヘロイン服用のためすでにボロボロになっていた血管が、衝突のショックで破裂したため、まさに全身血まみれになって亡くなった。奇しくもそのちょうど一ヶ月前の8月16日には、ロックンロールの巨星エルヴィス・プレスリーがこの世を去ったばかりだった。
さかのぼること数ヶ月。当時、バンドのメンバーを入れ替えて“新生T.REX”を再スタートさせたボランは、台頭してきたパンクロックを評価し、自身の国内ツアーの前座にザ・ダムドを起用したりしていた。
この年の3月、“生前最後のアルバム”となった『DANDY IN THE UNDERWORLD(地下世界のダンディ)』が発表される。アルバム収録曲の中から、「The Soul of my Suit(心はいつもロックンロール)」「Dandy in the Underworld(地下世界のダンディ)」が立て続けにシングルカットされ、この世を去る一ヶ月前の8月には、アルバムに収録されていない「Celebrate Summer」がシングルリリースされた。
この曲がマーク・ボラン=T.REXにとって、事実上最後のシングル曲となった。スピード感溢れるナンバーで、特に新たに参加したベーシストであるハービー・フラワーズのプレイが光っている。ハービーは、初期のデヴィッド・ボウイの楽曲やルー・リードの「Walk on the Wild Side(ワイルドサイドを歩け)」などで有名なプレイヤーでもある。
間奏で聴かれるノイズに近いギターのアプローチや、歌詞に登場する“♪Little Punk”など、当時、ボランがパンクムーブメントをかなり意識していたことが垣間みれる。
奇しくもエルヴィス・プレスリーが死んだ月と重ってリリースされたこの楽曲は、“ロックの季節”が変わろうとしていた時代の象徴的な歌となった。「30歳までは生きれない」と予言しながら最後に放った夏のメロディは、この上なくポップで!ロマンティックで!そして狂おしいほどに耽美的だった。

●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから



