1976年5月31日。
ビートルズがコンサート活動を休止するようになる1966年に発表された『リボルバー』から10年という年月を経て、「ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」がシングルカットされた。
すると、突然
君が目に入ったんだ
君が必要だと
僕は言ったのだっけ?
来る日も来る日も、ね
孤独な日々を過ごしてきた主人公がステキな彼女に出会う瞬間を歌ったこの歌は、当初、シンプルでファンキーなラブソングだと考えられていた。
あまり、ポールの作品を褒めることのないジョンが、ポールが書いた傑作のうちのひとつだと語るこの歌は何故、シングルカットされなかったのだろうか。
実際、ポールはこの曲を気に入っていた。彼はビートルズのヨーロッパ公演で前座をつとめたクリフ・ベネット&ザ・レベル・ロウザーズにこの曲を演奏するように奨め、彼らのレコーディングをプロデュースまでしてシングルヒットさせている。
その秘密が明らかになったのは、1998年のことである。ポールは著書『メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』の中で、この曲が特定の女性について歌ったものではなく、マリファナについての歌だと認めたのである。
「君を僕の人生に取り入れなくてはならない」という意味のこの歌は、ポールがポップに、ファンキーに表現したドラッグ・ソングだったわけだ。
「僕はどちらかというと、真面目な労働者階級の子供だった。でも、マリファナを吸うようになって、とても気分が高揚したんだよ」と、ポールは語っている。だが、ビートルズのイメージもあったのだろう、彼らはまだスーツ姿でステージに立っていた。そしてこの歌がシングルカットされることはなかったのである。
1976年。この曲がアメリカでシングルカットされた時、B面に選ばれたのは、これまた過激な歌詞の「ヘルター・スケルター」であった。
今という時代、もし、4人が曲を作るとしたら、どんな曲になるのだろうか。
*このコラムは2019年5月に公開されました。
●この商品の購入はこちらから
●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから