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「これが自由というものか」~60年以上も前のプロテスト・ソングが今もそのまま通用する歌の力

2014.12.26

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今から60数年前、1954年の日本では「これが自由というものか」というユニークな歌が、NHKラジオから毎週々々、全国に流れていた。

21世紀の現在でもそのまま通用するような痛烈なプロテスト・ソングを歌っていたのは、喜劇王と呼ばれたエノケンこと榎本健一である。

エノケンはジャズからクラシック、民謡、浪曲にいたるまで、あらゆる音楽を歌い、ユーモア、ナンセンス、時事風刺、アドリブのギャグを加えた演技はスピーディでアクロバティック、もう二度と現われないコメディアンと言われている。

なお2番に出てくるMSAとは「MSA協定」のことで、日本の軍事力増強を図るためにアメリカが援助を与えることを主旨とした内容で、この歌ができた1954年の3月8日に調印されていた。

この歌はエノケンが主演したNHKのラジオドラマ『とかくこの世は』(1954年4月~1955年3月放送)の挿入歌として誕生した。

それまでもエノケンはNHK『日曜娯楽版』や『ユーモア劇場』に出演して、「冗談音楽」で人気があった三木鶏郎との相性が良かった。
だから二人が組んだ「これが自由というものか」は、人気も訴求力も強かった。

しかしNHKはこの年の6月13日をもって、爆発的な人気番組だった『ユーモア劇場』の放送を終了している。
政府を風刺したり批判する内容に対して、吉田内閣からたびたび圧力がかかったことで、NHKの首脳陣は時の権力に屈して打ち切りにしたのである。

三木鶏郎はその後、文藝春秋の提供で文化放送から『みんなでやろう冗談音楽』を始めたが、12月に吉田内閣が退陣したのを機に、「冗談音楽」を廃業した。


それから半世紀以上が経過した2005年、”日本のポップスの源流・三木鶏郎と、J-スタンダードの新しい夜明け”とサブタイトルが名付けられた三木鶏郎トリュビュート・ライブが、銀座の博品館劇場で12月16日から3日間にわたって行なわれた。

出演したのは鈴木慶一(ムーン・ライダース)、細野晴臣(exはっぴいえんど、YMOほか)、ハナレグミ(Super Butter Dog)、奈歩(元Petty Booka)、湯川潮音、高野寛、今井英明(ロッキングタイム)、小池光子(ビューティフル・ハミング・バード)、首里フジコ、畠山美由紀、そして1日だけのゲストが坂本冬美、演奏は鈴木惣一郎&アレクサンダー・トリタイム・バンド。

内容はタイトルに「Sing with TORIRO 三木鶏郎と異才たち」とあるように、作詞・作曲家の「三木鶏郎」の歌を21世紀にまで歌い継ごうというイベントだった。

鈴木慶一と細野晴臣を除けば、三木鶏郎をリアルタイムでは知らない若い出演者が揃うなかで、「これが自由というものか」を歌ったのはハナレグミこと永積タカシである。

三木鶏郎と異才たち

司会進行も務めた鈴木慶一がコンサートが終わった後、細野晴臣との座談会のなかでこんな面白いエピソードを披露していた。(注2)

慶一:本番でも、楽屋でもね、皆さん、楽しそうにしていたので、それは良かったですよ。
終わった後に打ち上げがありましてね。
あれが、また、良かったな!
二次会で、出演者が頭の1曲目から、もう一回、全部やったの。
ウクレレとピアニカだけで、ずーっと。
最初は無伴奏だったけど。
──: エーッ!!
細野: すごいよ、それ。‥‥録ってないのかな(笑)。
慶一: 携帯で15秒だけ録ったけど(笑)。


三木鶏郎のことをあまり知らない世代のミュージシャンたちが、イベントに参加してみてその世界にハマったというところに、音楽が持っている力がうかがい知れる。

その後もソウル・フラワー・ユニオンが2014年10月、結成20周年の集大成となる最新アルバム『アンダーグラウンド・レイルロード』で、独自の歌詞を加えて「これが自由というものか」を取り上げている。



・鈴木慶一と細野晴臣との対談は「ほぼ日」2006年9月6日からの引用です。なお、こちらから全文を読めます。

「細野さん慶一さんとトリロー先生の話を」


三木鶏郎と異才たち.


・三木鶏郎に関連したコラムは、こちらにもあります。

TAP the POP Extra便 「三木鶏郎の弟子が雛郎?それならばと卵郎を名乗った大瀧詠一」
TAP the POP Extra便 次々と作品がボツになっても、なぜ大瀧詠一はCMに起用され続けたのか?


ソウル・フラワー・ユニオン『アンダーグラウンド・レイルロード』
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