1967年11月、ボブ・ディランはバイク事故による休養と沈黙を経て、アルバム『John Wesley Harding』をリリースする。
その頃、ジミ・ヘンドリックスは、あるパーティでトラフィックのギタリスト、デイヴ・メイソンに会った。2人はディランのアルバムの話で盛り上がり、ジミはその中から「All Along The Watchtower」をカバーをすることに決める。
「自分が生み出すべき歌だと感じたんだ。だけどとてもじゃないが、俺には作ることができない」
聖書の引用からなるディランの詩は、一見すると難解で、何を言ってるのかがわかりにくい歌詞だが、寓話的で、視覚的で、暗示に充ちている。
ここから抜け出す方法があるはずだ
から、はじまり、
風がうなりをあげ始めた
で終わる。
ジミは歌うだけではなく、変幻自在にギターを操り、それをサウンド・マシーンのように駆使して、言葉からのインスピレーションを音にした。
アルバム「エレクトリック・レディ・ランド」の中からシングル・カットされた「All Along The Watchtower」は1968年9月にリリースされると、イギリスのチャートで5位、ビルボードで20位に入り、ジミにとっての最高位となる。
その後もグレイトフル・デッド、ニール・ヤング、U2、パールジャム、XTCと、実に様々なアーティストによってカバーされているが、そこにはジミの影響も大きい。
ディランも、ジミのバージョンが好きだと言う。
「ジミ・ヘンドリックスのバージョンが好きで、彼が亡くなってからずっとジミみたいに演奏しているんだ。僕が歌うとどうもしっくりこないんだけど、言ってみればそれはジミへのトリビュートなんだ」
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