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ロバート・ジョンソンが1930年代の後半に録音したブルースを蘇らせたローリング・ストーンズの「むなしき愛」

2024.08.17

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ローリング・ストーンズはブルースの巨人、ロバート・ジョンソンが1930年代の後半に録音した「Love In Vain Blues(むなしい恋)」を、1968年になってから取り上げた。

それは鉄道の駅を舞台にした女と男による別れのシーンを、繊細で緻密なバンド・アレンジと情緒性を強調したミック・ジャガーのヴォーカルで、見事に蘇らせたといえる仕上がりになった。

1969年にアルバム『レット・イット・ブリード』のレコーディングが始まった頃、ブライアン・ジョーンズの脱退問題が表面化していたために、この曲に関してはキース・リチャーズがコード進行に手を加えたほか、印象的なアルペジオや鮮やかなスライド・ギターを弾いて、サウンドを構築していったという。

こうしてイギリスではレコードさえも発売になっていなかった忘れられたブルースマン、ロバート・ジョンソンに光があたっていくことになる。


たまたこの時期にアメリカからロンドンにやって来たスライド・ギターの名手、ライ・クーダーが枯れた感じのマンドリンで参加している。キースは彼とのセッションから多くを学んだと、1971年の『ローリング・ストーン』誌におけるインタビューで述べていた。

やつがジャック・ニッチェと来たのは、映画のサウンドトラックを作るためだった。で、俺たちは一緒にプレイした。そう、かなりの時間ね。やつとのセッションは楽しかったよ。俺はあまりスタジオにはいなかったが、ビルやチャーリーはいまだにその時のことを口にするよ。
(ショーン・イーガー編「キース・リチャーズかく語りき」音楽専科社)


ストーンズはこれを1969年の晩秋にアルバムで発売するが、それと同じ時期に行われた16か所23回のUSツアーでも、主要なレパートリーとして演奏していく。

なおこのUSツアーは、ミック・テイラーが新メンバーに加入した直後に、脱退したブライアンが死亡してしまうという悲劇を経て、最初の大規模なコンサート・ツアーだった。

しかし好事魔多しで、最後に17ヶ所目として追加したカリフォルニア州のオルタモントにおける野外フリーコンサートで、12月6日の本番中に、客席で警備に雇われたヘルズ・エンジェルスの暴力で観客が殺害されるという”オルタモントの悲劇”が起きてしまう。

ところが翌年の秋になってツアーのライブ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』が発売されると、ミック・テイラーの「むなしき愛」におけるスライド・ギターや、「悪魔を憐れむ歌」のソロが評判になり、彼の加入を称賛する声が急増していった。

そんなミック・テイラーが在籍していて最盛期だった頃のライブ映像が、今でもオフィシャルで公開されている。


その後もストーンズは「むなしき愛」を歌い継いで、1995年にはロン・ウッドが参加したプロモーション・ビデオも作られている。

これもまた忘れられていた名曲を見出して、そこに命を吹き込んだローリング・ストーンズならではの歴史を感じさせる演奏である。


ロバート・ジョンソン「コンプリート・レコーディングス」


ローリング・ストーンズ「レット・イット・ブリード」

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