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【萩原健一インタビュー】原点回帰したことで進化を続けるショーケンのブルース

2024.03.25

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萩原健一さんが2019年3月26日に消化管間質腫瘍のため東京都内の病院で死去したことが、3月28日に明らかになりました。享年68。

TAP the POPでは2018年の春に開催されたライブ、および新曲発売に合わせてインタビューを行っています。インタビュアーにはその前年に初めてテレビドラマ「傷だらけの天使」を観たという21歳のライターを選びました。それは萩原健一さんの音楽に対する原点について、次世代のために語っていただこうと考えたからです。突然の訃報に接して、あらためて追悼の思いを込めて、ショーケンの真摯な言葉を読んでいただきたいと思います。(インタビュアー・吉田ボブ 企画構成・佐藤剛)


僕が通称「ショーケン」こと萩原健一さんの凄さを知ったのは2017年の夏、大学2年生のときである。早稲田演劇博物館で行われていた「テレビドラマ博覧会」で、何気なく目にした「傷だらけの天使」の名シーン集に目を奪われた。映像から伝わってくる圧倒的な存在感、独特の声から発せられるセリフの数々、僕はそのブースにだけ、やけに長く立ち止まっていたのを覚えている。

ミュージシャンとしての萩原健一の作品にも、ほどなくして触れるようになった。なかでもアルバム『Straight Light』の1曲目、「Gimme Your Love」には耳を奪われた。ブルージーなギターリフや粘り気のある声、その全てがローリング・ストーンズやマディ・ウォーターズのブルースに、負けず劣らずの魅力を持っていたのだ。

そして今回、5月と6月に東京と大阪のBillboard Liveでの公演、シングル「Time Flies」を発表するというタイミングで、幸運にも萩原さんご本人に取材することができた。「傷だらけの天使」や『Straight Light』の感動を伝えると、萩原さんは「『Straight Light』はよくできた作品だったね」と顔をほころばせた。そこからご自身のルーツ、音楽と演技、そして近年の活動や最新作について語っていただいた。



萩原さんの音楽のルーツであるブルースとの出会いは、いつ、どのようなものだったのでしょうか。

僕のルーツは正確に言うと、カントリー・ブルースなんです。
小さい頃、横浜に住んでいる姉の手伝いに行っていたのですが、横浜の山下公園の前には「カマボコ兵舎」というGHQの建物があって、その近くに「ゼブラクラブ」っていう、進駐軍向けのジャズクラブがあったんです。
よくそこに行ってブルースとかを聴いていました。だから近所の子と初めて組んだバンドもブルース・バンドだったし、物心がついたときには僕の周りではブルースが鳴っていたんですね。
山下公園の前のブルース・ロックっていうのは、僕の幼い頃からの子守唄だったんです。

今回レーベルを立ち上げて、僕は「原点回帰」って言っているんですが、それはグループサウンズの時代よりもさらに昔、幼い頃への原点回帰なんです。
だから今回の新曲も、ブルースなんですよ。

テンプターズでデビューされた頃から、萩原さんのブルースはアメリカのブルースと、日本の歌謡曲らしさを感じます。そのような音楽をやられるようになったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。

それは50年前が、大手プロダクションにブルースみたいなものを否定されていた時代だったからです。プロダクションが求めるのはもっとメロディアスな音楽。それに応じるうちに原点であるブルースと、メロディアスなサウンドが自然と混ざり合っていったんです。

1969年にブルースのメッカであるメンフィスに行ってレコーディングをする機会があって、そのときは現地の素晴らしいバンドと一緒に演奏することもできました。でも、そこで挫折してしまったんです。
僕は自分のブルースに自信を持っていたんだけど、現地の彼らは僕のブルースを「プリティ」って言うんですね。その時はすごく恥ずかしかった。
それでもっと勉強しようと思って、いったん音楽から離れたんです。

あの頃から50年が経って、今ではBillboardさんで公演をやらせていただけるまでになりました。
それでBillbordさんや、昨年の「50年祭」をやっていただいたプロモーターさんに、お返しとしてなにかやってみたくて。新曲をやりたいなぁという時期でもあったので、トントン拍子で色々進んで行ったんです。

そのタイミングで作詞作曲を全てやった楽曲を3曲発表されました。作曲は初めて挑戦されたと伺いました。

そもそも僕は鼻歌を歌ったら、癖のようにボイスレコーダーで録っていたんです。一回歌っただけでは録らないんですけど、何回も歌えるものはとりあえず録っていました。だから作曲といっても面と向かってギターやピアノで、「曲作りをするぞ!」って作るのではなく、今まで録り貯めていたものから作っていったんです。歌詞も、思いついた言葉を家内に書いてもらっていて、そこから作りました。だから、今回の曲は家族で作ったようなものなんですよ。

歌詞も、これまでの人生の中から自然に滲み出ている言葉ですよね。
キャリア50年目を迎えていらっしゃるミュージシャンで、ここまで精力的に新しい活動している方はいないと思います。昨年はサンボマスターともコラボレーションされていました。


サンボマスターは、向こうから一緒にやってほしいという依頼が来て共演したんです。あの3人はとても刺激的でした。みんな、かっこつけないリアリストで。歌詞の内容も、耳を落ち着かせて聴くと、かなりセンスがあるんです。
ヴォーカルの山口隆くんは「孤独な時、会津の畑まで自転車を飛ばして、カエルとげろげろ歌ってた」と言ってて、「何言ってんだよ」とは思うのですが(笑)。とにかく、サンボマスターはいい感じなんです。

今回のBillboard公演も若いミュージシャンの方々をバンドに迎えて演奏されますが、やはり若いミュージシャンとの演奏は刺激になるのでしょうか?

確かに若いバンドと一緒にやることによって変わった部分はあります。「50年祭」の後に新しいバンドメンバーを探すことになって「誰か俺と一緒にやってくれる人いないかなぁ」って周りの人に話したら、どんどん紹介していただいて今のバンドになりました。そうしたら、いい感じのメンバーが集まったんですよね。言い方は変かもしれませんが、いつもいいミュージシャンたちと演奏できて、僕はラッキーなんですよ。

萩原さんは音楽活動と同時に、役者としての活動も現在していらっしゃいます。今までは音楽活動の期間と役者としての期間を分けて活動されていましたが、並行してやるようになって変化などはありましたか。

音楽と芝居は180度違いますね。似て非なるものなんです。
僕はそもそも歌を上手く歌うというより、「語る」ようにして、音と呼吸とリズムを崩さないようにしているんです。
僕の先輩たちは本当に歌が上手い。美空ひばりさんにしても、石原裕次郎さんにしても、鶴田浩二さんにしても。
けれども、ディランの歌は喋っているみたいじゃないですか。マディ・ウォーターズにしても語っていますよね。だから僕は歌を上手く歌おうとは思わない。

ただ芝居は、煮詰めないといけないんです。表面だけじゃなく後ろも横もありますから、研究しがいがあります。
だから片方ずつしかできなかったんですけど、今になってようやく両立してできるようになりました。
50年もやっていると、二刀流ができるような「仕込み方」が分かってくるんですよね。やっぱり、仕込みには時間がかかるんです。

ストーンズやボブ・ディランは70歳を超えても世界中をツアーで回っています。50周年を迎えても止まることなく、新しい挑戦をされていく萩原さんのこれからがすごく楽しみです。

いつまで続けられるかわからないですから、今は毎回最後のステージだと思っています。その上で10年できたら妻に乾杯、そして応援してくれているプロモーターに乾杯、ビルボードさんに乾杯ですかね。ただ、あと10年はしっかり努めようと思っています。



~インタビューを終えて~

「あと10年は務めたい」という言葉の通り、萩原建一さんのニューシングル「Time Flies」からはエネルギーに満ちた歌声が聴こえてきた。伝説的な存在として知られてきたショーケンさんだが、まだまだ進化を続けているのだ。Billboardで開催されるライヴで、この声を聴けるということに、僕は今から胸を踊らせている。

取材の1ヶ月後、Billboard Tokyoで萩原さんのライヴを観た時の衝撃は今でも忘れられない。その歌声は50年以上のキャリアから生まれる奥深さと、新しい音楽を奏でていくことへの想いが溢れていた。改めて、ブルースマン萩原健一さんの本質を、僕たちは次の世代に伝えていかなければならないと強く思った。


(注)本コラムにおけるインタビューは、2018年4月26日に公開されました。

萩原健一『TIME FLIES』
2018/05/09 RELEASE
KHSR-1801 1500円(tax out)
Shoken Records

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