1943 年　ニューヨーク
　雪の降る大晦日
　ラジオから流れるスイングジャズ
1960 年　香港
　路地裏の喧噪と　ネオンの輝き
1968 年　リオデジャネイロ
　海辺のホテルで出会う男女
1972 年　マイアミ
　憧れのハネムーン
1981 年　横浜
　揺れる棕櫚の木　過ぎ去る夏の風景
1993 年　ホーチミン
　ジルバの流れるダンスホール
2015 年　東京
　よみがえる記憶　世界各国の夜
（「世界各国の夜」より）

VIDEOTAPEMUSICとは、その名の通りビデオテープに残された様々な素材をサンプリングし、そこに自身が演奏するピアニカをはじめとする楽器やビートを加えて、映像と楽曲を同時に作り上げていくという、一風変わった作風のアーティストだ。閉店したレンタルビデオ屋などで蒐集したVHSや、実家のホームビデオに記録された映像などから自在に紡がれていく音と映像は、時空を飛び越え、新たな物語として息を吹き返す。

VHSの映像と音楽をリンクさせたライブや、VJやDJとしての活動をはじめ、映像作家としてもceroや小島麻由美などのMVを手がけ、さらには伊東のハトヤホテルにて〈ライヴ・イン・ハトヤ2014〉なるライブ・イベントを主催するなど多岐にわたる表現をみせてきたVIDEOTAPEMUSICが、3年ぶりとなるセカンド・アルバム『世界各国の夜』を完成させた。

荒内佑（cero）、MC sirafu、Dorian、LUVRAW、思い出野郎Aチームのメンバーらが参加し制作されたアルバム『世界各国の夜』は、再生ボタンを押した直後から、どこかの国にあるグランドホテルのナイトラウンジのような妖しげな空気に誘われる──冒頭に引用したナレーションが挿入される表題曲は、これからはじまるオムニバス映画の幕開けを飾る、エモーショナルなオープニングテーマのような一曲だ。マンボやチャチャチャ、ラヴァーズロックなどバラエティに富んだサウンドでシーンを切り替えていく楽曲の数々は、ニューヨーク、香港、リオ、マイアミ、ホーチミン、伊豆、横浜、そして東京……と、さまざまな街に刻まれた夜の記憶とエキゾチックな色彩を、聴き手の脳内スクリーンに投影していく。

見たこともない、だけどどこか懐かしい世界へと連れていってくれるVIDEOTAPEMUSICの音楽。50分間のナイト・トリップへ、さあ、出かけよう。

VIDEOTAPEMUSIC
『世界各国の夜』

（カクバリズム）

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