ご機嫌目盛 やめろよ 仏頂面
ご機嫌目盛 ちょっと 愛想よくしろよ
ご機嫌目盛 誰も上げてくれないさ
ご機嫌目盛 そうさ、自分で上げなきゃ
(「ご機嫌目盛」から)
その迫力あふれるギタープレイで、ハナレグミや星野源、浜野謙太(在日ファンク)、東京スカパラダイスオーケストラなど、数多くのミュージシャンから厚く信奉されているブルース・ギタリスト、吾妻光良。彼が1979年に結成したジャンプ・ブルース/ジャイヴ・バンドが、吾妻光良&The Swinging Boppersだ。大学の卒業記念にとサークル仲間を中心に組んだビッグバンドは、その後もメンバーそれぞれの仕事と並行してマイペースに継続。多少の出入りはあったものの、ほぼ結成時のメンバーのまま今年(2019年)結成40周年を迎えた。
1983年には、デビュー・アルバム『SWING BACK WITH THE SWINGING BOPPERS』を発表。当初はジャイヴ、ジャズ、ラテンなどの楽曲のカバーを演奏していた彼らだが、徐々に日本語詞によるオリジナル曲や、独自の解釈による訳詞曲が増えていく。「極楽パパ」「齢には勝てないぜ」「誰がマンボに”ウッ!!”をつけた」「やっぱり肉を喰おう」「バッチグー」「嫁の里帰り」「150〜300」「学校出たのかな」「物件に出物なし」「お前誰だっけ」「栃東の取り組み見たか」「昔だったら定年だ」……などなど、タイトルを並べただけでもクスリと笑ってしまう楽曲の数々は、独自の視点で世相を切り取りながらも、随所に中年男性の悲哀がにじみ出てしまうような、ユーモラスかつシニカルな歌詞がたまらない。
また、8管のホーンセクションを擁する12人編成から飛び出すゴージャスなバンド・サウンドは年齢を重ねるごとに味わいを深めていて、そこがまたかけがえのない魅力の一つとなっている。
結成40周年を迎え、メンバーの大半が還暦を超えたという今年。彼らが実に5年8ヶ月ぶりとなる通算8作目のニュー・アルバム『Scheduled by the Budget』を完成させた。吾妻とアルトサックスの渡辺康蔵による(まさかの)ラップ・バトルも飛び出す「ご機嫌目盛」でご機嫌に幕を開ける今作。すべての酒飲みに捧げたいキラーフレーズ「大人はワイン2本まで」、趣味の写真撮影に夢中になりすぎてまわりに迷惑をかける老人たちを描くはずが、“映え”ばかりを気にしすぎるSNS文化も意図せずバッサリ斬っていた(?)「PHOTO爺ィ」と、冒頭から血圧高めな内容で攻めてくる。
バッパーズならでは面白さが炸裂するオリジナル曲の数々に加えて、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)をボーカルに迎えたスタンダード「Misty」や、学生時代からの友人だという人見元基(ex.VOW WOW)の熱唱が聴ける「Try A Little Tenderness」など、ストレートなカバー曲の充実ぶりも大きな聴きどころの一つだ。
そして、本編最後の「正しいけどつまらない」では、今の社会に対して誰もが心に抱えているであろうモヤモヤに対し、さりげない語り口で疑問を投げかける。それは、吾妻が愛してやまない古いブルースやカリプソが持っていたであろう、街の空気や世相に向き合っては風刺も交えて芸能に昇華していくという本質を、昭和〜平成〜令和と三つの時代を跨いだ日本の地でオリジナルなスタイルを模索しながら体現してきた、吾妻にしか歌えない“ブルース”の真骨頂といえる。
還暦を過ぎた彼らが、こんなにも刺激的で、とことんまで楽しめる作品を(しかもメジャー・レーベルから)発表したという事実。吾妻光良&The Swinging Boppersは、この先10年、いや20年、30年と、中年〜壮年世代の希望の星として輝き続けてくれることだろう。
Live Schedule
大宴会in南会津2019
6月15日(土)福島県・会津山村道場うさぎの森オートキャンプ場
吾妻光良&The Swinging Boppers ワンマン
7月6日(土)愛知・名古屋クラブクアトロ
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
8月17日(土) 北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
guest vocal:松竹谷清
official website
https://s-boppers.com/
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/Boppers/special_190522/