赤坂の老舗・蕎麦屋での出会いから始まったTVアニメ『はじめ人間ギャートルズ』の主題歌作りでは、ユニークなオープニング・テーマ「人間ギャートルズ」の他にもう一つ、きわめて個性的でかまやつひろしらしい楽曲が生まれた。
それが生命の誕生とその死をテーマにした「やつらの足音のバラード」である。
宇宙の起源をも感じさせる壮大なスケール感を漂わせつつも、シンプルに徹した寓話的な歌詞は原作者の園山俊二が手がけている。
哲学的でいても難しくはならないのが、園山俊二の漫画作品の特長である。漫画家の東海林さだおは園山のシンプルな作風について、「白い画用紙のまん中に、スーッと一本、鉛筆で横に線を引くと、すでにそれは大平原と空を分かつ地平線なのであった」と評した。
かまやつひろしはそんな園山俊二の歌詞に、穏やかで飄々とした才人ならでは曲をつけた。「やつらの足音のバラード」はアニメが終了した後も、それを聴いて育った子どもたちを中心に長く愛されて、本人が1994年にセルフ・カヴァーしたことで再評価された。
さらには小泉今日子やスガシカオ、中村あゆみ、平井堅などにカヴァーされたことから、今ではスタンダード・ソングになって歌い継がれている。
特にスガシカオが歌った「やつらの足音のバラード」はテレビ・コマーシャルの音楽に使われて、この歌の再発見に貢献した。そして2004年5月放送されたフジテレビの音楽番組『僕らの音楽』では、スガシカオとかまやつひろしの共演が実現している。
それが2月28日にかまやつひろしが亡くなった後、ツイッターで映像が公開されて「シカオさんがカバーするまでこの歌詞の深さを知ることはなかった」といったコメントとともに拡散、またしても「やつらの足音のバラード」に注目が集まった。
かまやつひろしはこの曲について、「やはり園山俊二がすごい人だったし、考えてみると原作者とタメで話し合いながら作り上げていくやり方が正解だったと思う」と語っていた。
ところでオリジナル・ヴァージョンを歌ったのは若子内悦郎という歌手だが、このときは「ちのはじめ」という名前で録音していた。
若子内は1967年に尾藤イサオのバックバンドとして結成された「THE BARON(ザ・バロン)」のベース&ヴォーカルとして活動していた。だが、もうグループ・サウンズのブームが下火になっていたので、時流に乗れずにデビューが遅れた。
1969年になってガールシンガーの鍵山珠里と組んだ「ジュリーとバロン」名義で、ようやくシングル「ブルー・ロンサム・ドリーム」でやっとレコード・デビューすることができた。その曲の作詞は阿木燿子、作曲はバンドのサブ・マネージャーを務めていた宇崎竜童だった。
しかし、後にヒットメーカーとなる二人による最初のコンビ作品も、このときは不発に終わってしまった。
その後も初めてザ・バロン名義の「恋の億万長者/コンドルは飛んで行く」を1970年11月5日に出したが、これもまったく注目されずに終わっている。
その一方で、ザ・バロンは1969年にNHKが『ステージ101』の放送にさきがけて行ったオーディションに合格し、番組のために結成された「ヤング101」に合流したことで、自然消滅した形になった。
若子内はその後、アニソンでは「サンダーマスク」や「帰ってきたウルトラマン」のテーマソングを歌っている。またザ・バロンのギタリストだった河内広明は、チェッカーズのヒット曲で知られる作曲家・プロデューサーの芹澤廣明になる。
<参照コラム・かまやつひろしと漫画家が蕎麦屋で隣り合わせたことから生まれた「はじめ人間ギャートルズ」>

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