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かまやつひろしと漫画家が蕎麦屋で隣り合わせたことから生まれたTVアニメ『ギャートルズ』の主題歌

2024.03.01

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1974年10月5日から1976年3月27日までオンエアされたTVアニメ『はじめ人間ギャートルズ』は、原始人たちの家族が繰り広げる日常を描いた園山俊二原作のギャグ漫画をアニメ化した作品だ。

かまやつひろしがその主題歌を頼まれたのは、まったく偶然の出会いからだった。

「室町砂場(むろまちすなば)」は明治2年創業で日本橋に店を構える老舗、天もり発祥の歴史ある蕎麦屋である。
そして「室町砂場 赤坂店」もまた東京オリンピックの年に店を構えて、以来半世紀上にわたって伝統の味を守り続けている。

赤坂通りに並行する一本奥の裏通りに木造2階建ての伝統を感じさせる店はお昼時はもちろんだが、平日の午後1時をまわってもほぼ満席で、しかもお酒をたしなんでいる客が多い。
酒のメニューはシンプルで御酒(菊正宗)のみ、ビールはキリンの大瓶とサッポロの小瓶の2サイズだ。

老舗とはいっても街の蕎麦屋だから店内は開放的で、昼間から酒が入れば心も自然に開放的になっていく。
原作者の漫画家・園山俊二と出会ったときのことを、かまやつひろしがこう書いている。

偶然同じテーブルに隣り合わせた原作者の園山俊二さんと、初対面だというのに、なんとなく気が合ってしまった。それで、一杯飲みながらバカ騒ぎしているうちに、園山さんが、こう言い出した。
「アニメの主題歌をつくってもらえませんか」
えーっ、アニメの曲かよ!


1970年代の前半まではCMに出ることやテレビ出演は商業的だ、精神的な堕落だなどという、反体制的なカウンター・カルチャーの雰囲気が若者社会には残っていた。
だからかまやつひろしはその話に、内心では引いてしまったという。

ところが園山俊二が書いてきた歌詞は「ゴンゴンゴン」やら「ニャニャニャ」といった、感覚的な言葉がやたらに出てくるユニークなものだった。

かまやつひろしはこれをロック調の曲にして、ビートの効かせたサウンドをイメージした作品に仕上げた。
いつも飄々としてフレンドリーだった人柄を偲ばせるエピソードである。

実際にオープニングテーマとして歌ったのは、NHKの子供番組に出演していた歌のお兄さんたちで、「ザ・ギャートルズ」とクレジットされることになる。

仮歌(かりうた)はぼくが歌った。仮歌とは、実際に歌う人に聴かせるために仮に吹き込む歌のことだ。
 ぼくが歌ってるそばで、園山さんはベロベロに酔っ払って、
「ハチャメチャに!もっとハチャメチャにしてくれ」と、あれこれ注文をつける。ぼくが面白半分に、
「チョキパラー! モギャギャー!」
 などと叫ぶ。すると彼は「それ、いい! 面白い!」と大喜び。大変だったのは、ぼくらが大騒ぎしているテープをもとに起こした譜面を見ながら歌わなければならなかったNHKのお兄さんたちだ。
「なに、これ。わかんねぇよ!」とブーイングの嵐だったという。



しかし、歌のお兄さんたちが一生懸命に歌ってくれたおかげもあってこの主題歌は好評だった。

やがてこうした斬新で音楽性も豊かなアニメ作品を見て育った子どもたちが、後に『ギャートルズ』の影響からエンディング・テーマだった「やつらの足音のバラード」をカヴァーし、かまやつひろしの音楽を再評価するきっかけともなっていく。

『エッジィな男 ムッシュかまやつ』(単行本)
サエキけんぞう (著),‎ 中村 俊夫 (著)
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