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かまやつひろしの名曲「どうにかなるさ」

2024.04.23

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1970年(昭和45年)4月5日、当時ザ・スパイダースに在籍中だったかまやつひろしの「どうにかなるさ」(フィリップス)が発売された。
同年の国内ヒットソングといえば…

1位「黒ネコのタンゴ」/皆川おさむ
2位「ドリフのズンドコ節」/ザ・ドリフターズ
3位「圭子の夢は夜ひらく」/藤圭子

大阪万博が開幕し、日本航空機よど号ハイジャック事件発生、空前のボーリングブーム、そして“ウーマン・リブ”(Women’s Liberation の略で女性自身の手による女性解放運動を意味する)という言葉が流行した年でもある。


この歌は、かまやつがザ・スパイダース在籍中に発表されたものである。
元々は同じグループサウンズのザ・タイガースのメンバーである岸部修三・岸部シロー兄弟のユニット“サリー&シロー”への提供曲(1970年2月発表のアルバム『トラ70619』収録)として、かまやつが作曲した楽曲だった。
作詞のクレジットには、『水戸黄門』の主題歌「ああ人生に涙あり」やCMソング「バーモントカレーの歌」でも有名な山上路夫の名が記されている。
同曲は、かまやつ自らのルーツ音楽でもあるカントリーミュージックの大御所、ハンク・ウィリアムズの「 (I Heard That) Lonesome Whistle〜淋しき汽笛“」(1951年)にインスパイアされた作品だと言われている。
カントリー&ウエスタンの楽曲の多くには、家族や地域(街や州)という共同体に縛られない男の心情が歌われており、その根底には、人口が流動的に動くアメリカ開拓期の精神風土が反映されているという。
かまやつがこの歌を作曲した1960年代の末。
世界では若者達の文化や価値観が大きな“転換期”を迎えていた。
60年代と言えば、集団就職に象徴されるような日本全域を民族大移動が襲った時代でもあった。
1960年から1975年の15年間のうちに、東京、大阪、名古屋の3大都市圏には1533万人の人口が流入したという。
この「どうにかなるさ」という歌は、故郷を離れて転々と流れながら暮らしても「きっと新しい出会いがある」という、カントリー&ウエスタン風の楽観主義に裏打ちされた歌と言えるのかもしれない。


それは我々日本人にも耳馴染の良いメロディーで、どこかで聴いたことのあるような?懐かしくも切なく響く旋律なのだ。
曲の歌詞に“I left my gal and left my home(恋人と別れ、故郷を去って)”という一節がある。
ここで使われている“gal(ギャル)”という女性を表現する呼称について一考してみた。
古今東西、曲の歌詞の中でgirl、lady、baby、honey、darling、sugar、etc…前出の“gal”を含め様々な女性呼称が使われてきたのは周知の事。
この曲が生まれたのは1951年(日本では第1回NHK紅白歌合戦の放送/力道山のデビュー)。
当時のアメリカン・カントリーミュージックシーンで使われていたこの“gal(ギャル)”という単語は、いわゆる田舎娘(Country Girl)の略称として表現されていたとの事。
例えば「風に吹かれて」の大ヒットで有名なボブ・ディランの2ndアルバム『The Freewheelin’』(1963年)に収録されている「Corrina, Corrina」の歌詞の中でもこの“gal”という呼称が使われている。
また、沢田研二が放ったヒットソング「OH!ギャル」(1979年/作詞・阿久悠)で“ギャル”という呼称が高らかに歌われ日本人に広まる起点となったり…洋邦楽問わず、例を挙げれば切りがないのだが、どうやら“gal(ギャル)”という言葉を歌詞中で初めて使用したのは、このハンク・ウィリアムスだったかも知れないのだ。
その“田舎娘”は時代を超え、海を渡り…平成の日本においてはその呼称をコギャル、ヤマンバetc…と細分化させ変化を遂げながら、田舎よりもむしろ都会を闊歩する“特有のファッションをした若者”として広く認知されていった。
この一考を通じて、古き良きカントリーミュージックと、昭和のファッションリーダーでもあったかまやつひろしと、平成の日本に出現したギャルとの間に何か特別な“関係性”を見つけたような気がした…



こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの活動情報です♪

【佐々木モトアキ公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html


【佐々木モトアキ プロフィール】
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