1965年7月25日。
ニューポート・フォーク・フェスティヴァルに集まった聴衆は、エレクトリック・ギターを手にし、アンプにつないだボブ・ディランに強烈な拒否感を示した。
ディランは、彼らが望んでいた「風に吹かれて」や「ミスター・タンブリンマン」ではなく、「マギーズ・ファーム」や「ライク・ア・ローリング・ストーン」を爆音ともいえる音量で演奏し始めたからである。
ディランの代表作でもあるアルバム「追憶のハイウェイ61」に収録された「ライク・ア・ローリング・ストーン」は、フォークの神様ボブ・ディランが、ロック・アーティストのボブ・ディランに変化した象徴的な曲だった。
だが、ディランはアメリカ音楽の伝統の上で、この曲を書き上げていた。
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Like a Rolling Stone
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Rolling Stoneは”A rolling stone gathers no moss”(転石苔を生ぜず)からとられている。
だが、ディランは、この諺自体というよりは、この「ローリング・ストーン」が歌詞に使われていた1949年のハンク・ウィリアムズの作品「ロスト・ハイウェイ」にアイディアを求めたらしい。
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俺は転がる石(ローリング・ストーン)
ひとりぼっち、迷子だ
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ハンク・ウィリアムズは、そう歌っている。
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どんな気分だい?
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ディランは歌う。
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ひとりぼっちで
家への道もわからず
誰にも知られることなく
転がる石のようになった気分は?
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転がる石、というフレーズをハンク・ウィリアムズが歌った翌年、マディー・ウォーターズが「ローリング・ストーン」を発表している。ローリング・ストーンズは、そのバンド名をマディの曲から取ったと言われている。

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