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ミステリー・トレイン〜ジョー・ストラマーや工藤夕貴らが出演したジャームッシュ映画

2017.08.17

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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の後、一通の奇妙な手紙がジム・ジャームッシュの手元に届いた。そこには「あなたの映画が好きだ。一緒にビールを飲もう。私は東京に住んでいる」と書いてあった。もしNYに来られるならOKだよと返事すると、10日後、本人がやって来た。

JVCの平田国二郎氏だった。彼はジャームッシュの新作のためにプロデューサーになった。監督に映画創作のための自由を保証し、製作費もバックアップしたこの作品は、『ミステリー・トレイン』(MYSTERY TRAIN/1989)と名付けられて1989年のカンヌ映画祭で初披露された。

いつも一緒に仕事をしたいと思ってる俳優やミュージシャンたちのことを考え、脚本作りをするというジャームッシュは、今回も様々な顔ぶれを思い浮かべた。ジョー・ストラマー、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ニコレッタ・ブラスキなど。その中には日本人俳優の工藤夕貴もいた。

当初バラバラだったアイデアは一つにまとめられ、エルヴィス神話が生き続けるテネシー州メンフィスを舞台に、古びたホテルに泊まる3組のストレンジャーたちの同時進行する3つの物語という形で仕上がった。撮影は1988年の夏にオールロケ。ジャームッシュ初のカラー作品だが、カメラが人物をゆっくりと追うスタイルは不変。ハリウッドでのビジネスなどまったくもってウンザリだと、彼らしい美学を貫く秀作だ。

「ファー・フロム・ヨコハマ」は、列車に揺られて憧れのメンフィスにやって来た日本人カップル、ミツコ(工藤夕貴)とジュン(永瀬正敏)の姿が描かれる。サン・スタジオに行くかグレースランドに行くかで迷う二人は、メンフィスが自分たちが住む横浜と似ているかどうかなど他愛のない会話を繰り返し、ホテルでベッドインする。

「ザ・ゴースト」は、メンフィス空港から町に辿り着いたイタリア人女性ルイーザ(ニコレッタ・ブラスキ)の奇妙な1日を追う。雑誌を大量に買わされたり、馬鹿げたエルヴィスの作り話に金を払い、無一文の見知らぬ女とホテルの同じ部屋に泊まったり、何かと人は良さそうだが、明らかにマフィアの女であるところが面白い。ルイーザはその夜、ベッドでエルヴィスの幽霊を見る。

「ロスト・イン・スペース」は、女と仕事を同時に失って人生に絶望しているイギリス人のジョニー(ジョー・ストラマー)と仲間たちの一夜。酒場で銃を振り回すジョニーの姿に手を焼いて、工場仲間のウィル(リック・アーヴァイルス)と女の兄貴で床屋のチャーリー(スティーヴ・ブシェミ)が呼び出される。ジョニーが酒屋の店主を撃ったことにより、ホテルに身を隠すことになる酔っ払った男たち。ところが……。

ジョーは素晴らしい。信じられないくらい集中力のある情熱的な男だけれど、ちょっと無愛想で、お喋りはほとんどしないけれど、話すときはとても的確なんだ。


『ミステリー・トレイン』におけるジョー・ストラマーの存在は大きい。酒場のワンシーンでジュークボックスとじっくり向き合ってルーファス・トーマスの「Memphis Train」を選ぶ姿(どこか微笑んでいる)には、演技を超えたミュージシャンとしての喜びのようなものが伝わってくる。

また、3つのそれぞれの物語に絶妙に絡んでくるホテルのマネージャー役にスクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ベルボーイ役にサンキー・リー(スパイク・リーの弟)というコミカルな設定も見逃せない。

選曲の本物さもジャームッシュ作品の楽しみの一つで、始まりと終わりにはエルヴィス版とジュニア・パーカー版の「Mystery Train」が流れ、傷心のジョニーを包むようにして聴こえるのはオーティス・レディングの「Pain in My Heart」。そして深夜のラジオDJ(トム・ウェイツ)が流すのはロイ・オービソンの「Domino」とエルヴィスの「Blue Moon」だ。

どうも、エンジニアがコーヒーを。ありがと。今の曲はロイ・オービソンがザ・ローゼスと共に歌ったロックの傑作「ドミノ」。番組はまだまだ続くよ。時刻は午前2時17分。キングがサン・スタジオで録音したこの曲。真夜中に聴くエルヴィスの曲なら、これだよ。「ブルー・ムーン」。


予告編


ジョー・ストラマーの出演も話題に。

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『ミステリー・トレイン』


*日本公開時チラシ
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*参考・引用/『ミステリー・トレイン』パンフレット

*このコラムは2015年11月4日に初回公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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