石田長生

TAP the SONG

追悼・石田長生 初めて日本語でブルースを感じさせた曲「プカプカ」

2016.07.08

Pocket
LINEで送る

石田長生にギターが歌えることを教えてくれたのは、ジャズのケニー・バレル・トリオだった。
1970年の初来日コンサートを観に行った高校生の石やんは、その時にサイドメンとして同行していたジム・ホールの演奏に驚かされた。

「ギターが歌をうたっているのに驚いたんや」


ジム・ホールのように歌うギターを目指した石やんはジャズの道に進んだが、それをブルースの道へと導いたのはBBキングだった。

1971年の来日公演で体験した強烈なチョーキングのテクニックと、歌ったり泣いたりしているギターに圧倒された石やんは、ブルース・ギタリストとして生きようと道を定めた。

それからの石やんはギター一筋に励んだおかげで、切れ味のいいビート感とテクニック、さり気なさの中に秘めた音楽への情熱で、関西では引っ張りだこのギタリストになっていく。

気取りもてらいもなく、人の温もりを漂わせていた自然体の石やんは、ジャンルを横断してミュージシャンやシンガーと出会い、プロデューサーとしても活躍した。
そしてギターだけでなく、自分でもたくさんの歌をうたうようになって、ソングライターとしても活動するなど、決して長くはなかったが充実した生涯を終えた。

1995年に出た『JUKE BOX』はフェイバリット・ソング集を思わせる、個人的史的な選曲で思い切り好きな歌をうたったアルバムである。

石田長生ジュークボックス

メンフィス・ソウルのBooker T & The MGsによるインストルメンタル曲「THE HORSE 」で始まり、2曲目がRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」へと続く流れは、忌野清志郎と石やんに共通する音楽のルーツ、メンフィスつながりによる選曲だ。

アニマルズの「朝日のあたる家」をイントロに使っているほかに、石やんは演奏のなかで自分がラジオで聴いていたヒット曲のフレーズを、10数曲もギターで織り込んで楽しませてくれる。

4曲目に入れたブルーハーツの「青空」ついては、ライナーノーツにこんな出会いを書いていた。

偶然、ホテルの部屋で見たテレビの番組。
若いバンドがスタジオ・ライブをやっていた。
ボーカルの奴は舌をペロペロ出したり、目をぎょろつかせて飛び跳ねていた。
そしてこの曲を演った。
次の週、この曲が入っているCDを俺は買った。


ザ・バンドの代表曲「ザ・ウェイト(THE WEIGHT )」で石やんは、自分のバンドマン生活をもとにした歌詞を書き、忌野清志郎の直弟子にあたる三宅伸治と、ブルーハーツの甲本ヒロトというバンドマンをゲストに迎えて存分に歌っている。


The Weight (日本語詞:石田長生)

辿り着いたのは 小っぽけなホテル
この街に泊まろう 旅はまだ続く
Hey! Mr.フロント 部屋はあるかい
笑顔が答える 満室でございます
荷物が重い 俺の肩に 
今夜だけは ゆっくり眠りたい

バッグを抱え 表に出たのさ
気を引く女が 誰かと歩いてくる
ウィンクしたら 彼女は微笑んだ
「アタシの彼氏が ギャングでいいのなら」
荷物が重い 俺の肩に 
今夜だけは ゆっくり眠りたい

言い訳なんて 出来ないはずさ
判決を待つ 犯罪者みたいに
自由の旅に 出たのはいいけど
事務所はいつも 火の車みたいさ
荷物が重い 俺の肩に 
今夜だけは ゆっくり眠りたい

おかしな奴が まとわりついてくる
「いいものがあるけど 安くしとくぜ」 
「ちょっと待っておくれ 俺はまともさ」
「すっとぼけるなBoy! バンドやってるんだろう?」
荷物が重い 俺の肩に 
今夜だけは ゆっくり眠りたい

そろそろツアーは終わりに近づく
俺らのバッグは重くなるばかり
あの娘の胸に 早く帰りたい 
休みの国から 遠く離れて
荷物が重い ロックバンド 
今夜だけは ゆっくり眠りたい


アルバムの最後を飾っていたのは、ザ・ディランⅡの西岡恭蔵が書いた「プカプカ」だった。
ライナーノーツにはこんな文章が残されていた。

ベトナム戦争、学園闘争、ヒッピーブーム。
あの頃は決して明るい時代じゃなかった。
ギタリストの俺は色んなシンガー達と演奏した。
西岡恭蔵さんとその頃逢った。
彼のこの曲に初めて日本語のBLUESを感じた。


そう、1972年に発表された「プカプカ」こそは、石やんにとって初めて日本語でブルースを感じさせた曲だったのだ。


ザ・ディランⅡのシングルのB 面で発表された「プカプカ」だが、今ではすっかり日本の代表的なスタンダードになっている。
ちなみに「プカプカ」のA面だった「男らしいってわかるかい」は、ザ・バンドの「アイ・シャル・ビー・リリースト」に日本語詞を付けた曲だった。

そして「アイ・シャル・ビー・リリースト」は、「ザ・ウェイト」とともにザ・バンドの1stアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』に収められていた名曲だ。

ブルースは歌も精神もこうして、これからも歌い継がれていくのだろう。
石やんの「プカプカ」もまた名唱かつ名演として、後世にまで語られていくに違いない。


「プカプカ」についてのコラム3部作は、こちらからご覧いただけます
(1)「プカプカ」のモデルとなったのは、激動の時代を駆け抜けたジャズ・シンガーだった
(2)カウンター・カルチャーが台頭した70年代、「プカプカ」を歌い継いだのは役者やダンサーだった
(3)「プカプカ」を歌っただけでなく、アンサーソングまで作った女優の桃井かおり



(このコラムは2015年7月17日に公開されたものです)

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the SONG]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑