TAP the SONG

追悼・石田長生~初めて日本語のブルースを感じたという曲「プカプカ」

2017.07.08

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「ギターが歌をうたっているのに驚いたんや」


石田長生にギターが歌えることを教えてくれたのは、ジャズのケニー・バレル・トリオだったという。
1970年の初来日コンサートを観に行った高校生の石やんはその時、サイドメンとして同行していたジム・ホールの演奏に驚かされたのだ。

ジム・ホールのように歌うギターを目指し、ジャズの道に進んでいった石やんをブルースの道へと導いたのはBBキングである。
石やんは1971年の来日公演で体験した強烈なチョーキングのテクニックと、歌ったり泣いたりしているギターに圧倒されて、ブルース・ギタリストとして生きようと道を定めた。

それからはギター一筋に励んで切れ味のいいビート感とテクニック、ブルースマンの精神と音楽への情熱で関西では引っ張りだこのギタリストになっていく。

どんなときも気取りもてらいもなく、人の温もりを漂わせている自然体の石やんは、ジャンルを横断してミュージシャンやシンガーと出会い、プロデューサーとしても活躍した。
そしてキャリアを積むにつれてギターを弾くだけでなく、自分でもたくさんの歌をうたうようになってソングライターとしても活動するなど、決して長くはなかったがじつに充実した生涯を終えた。

1995年に出た個人的史的な選曲のアルバム『JUKE BOX』は、好きな歌をうたったフェイバリット・ソング集を思わせる作品である。

石田長生ジュークボックス


石やんは23歳の時に半年間、メンフィスに住んでいたこともある。
メンフィス・ソウルのBooker T & The MGsによるインストルメンタル曲「THE HORSE 」で始まり、2曲目にRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」へと続く流れは、忌野清志郎と石やんに共通する音楽のルーツだったメンフィスつながりによる選曲だ。

そして「トランジスタ・ラジオ」のイントロは先ずアニマルズの「朝日のあたる家」から始まる。
さらには歌の中で10数曲、石やんは自分が実際にラジオで聴いていた頃のヒット曲のフレーズを、ギターで織り込んで楽しませてくれる。

4曲目に入れたブルーハーツの「青空」ついては、ライナーノーツにこんな出会いを書いていた。

偶然、ホテルの部屋で見たテレビの番組。
若いバンドがスタジオ・ライブをやっていた。
ボーカルの奴は舌をペロペロ出したり、目をぎょろつかせて飛び跳ねていた。
そしてこの曲を演った。
次の週、この曲が入っているCDを俺は買った。


憧れていたザ・バンドの代表曲「ザ・ウェイト(THE WEIGHT )」では、バンに楽器とメンバーを積んで日本中を蟻のように這って廻ったツアー生活を歌詞にしている。

The Weight (日本語詞:石田長生)

辿り着いたのは 小っぽけなホテル
この街に泊まろう 旅はまだ続く
Hey! Mr.フロント 部屋はあるかい
笑顔が答える 満室でございます
荷物が重い 俺の肩に 
今夜だけは ゆっくり眠りたい


それを忌野清志郎の直弟子にあたる三宅伸治と、ブルーハーツの甲本ヒロトをゲストに迎えて存分に歌う。



アルバムの最後を飾ったのは「プカプカ」、ザ・ディランⅡの西岡恭蔵が書いて仲間たちに歌い継がれてきた楽曲だ。
シングルのB 面で発表されたザ・ディランⅡの「プカプカ」は、今ではすっかり日本の代表的なスタンダードになっている。
石やんはライナーノーツに、こんな文章が残していた。

ベトナム戦争、学園闘争、ヒッピーブーム。
あの頃は決して明るい時代じゃなかった。
ギタリストの俺は色んなシンガー達と演奏した。
西岡恭蔵さんとその頃逢った。
彼のこの曲に始めて日本語のBLUESを感じた。


そう、1972年に発表された「プカプカ」こそは石やんにとって、日本語でブルースを感じさせた曲だったのである。

ちなみに「プカプカ」のA面だった「男らしいってわかるかい」は、ザ・バンドの「アイ・シャル・ビー・リリースト」に日本語詞を付けた曲だ。
そして「ザ・ウェイト」とともに、ザ・バンドの1stアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』に収められていた。

歌は聴きたい人がいて、歌いたい人がいるかぎり、死ぬことはない。
石やんのギターと歌声も、いつまでも生きていてほしいものだ。


「プカプカ」についてのコラム3部作は、こちらからご覧いただけます
(1)「プカプカ」のモデルとなったのは、激動の時代を駆け抜けたジャズ・シンガーだった
(2)カウンター・カルチャーが台頭した70年代、「プカプカ」を歌い継いだのは役者やダンサーだった
(3)「プカプカ」を歌っただけでなく、アンサーソングまで作った女優の桃井かおり



(このコラムは2015年7月17日に公開されたものです)


石田長生『The Best of Ishiyan』
ZICCA RECORDS

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