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トーキング・ブルースのアイデアから生まれた、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」

2025.04.20

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ダウン・タウン・ブギウギ・バンドは、1974年の暮れにリリースした「スモーキン・ブギ」がヒット。続く「カッコマン・ブギ」のB面曲だった「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」も、曲中のセリフ「あんたあの娘のなんなのさ」が流行語になるほど大ヒットして一世を風靡した。

作家として楽曲の依頼が入り始めたリーダーの宇崎竜童は、研ナオコに「愚図」を提供して歌手として成功に導き、山口百恵を「横須賀ストーリー」や「プレイバックPart2」でトップアイドルに押し上げて、作詞した夫人の阿木燿子とのソングライター・コンビで大活躍する。

宇崎竜童が歌詞をもらって困ったのは、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の1回だけだったという。

「一寸(ちょっと)前なら覚えちゃいるが」という冒頭の言葉にメロディをつけようと思っても、「♪ちょいと一杯のつもりで飲んで~」と始まるナンセンス・ソング、クレージーキャッツの「スーダラ節」になってしまう。

すっかり困ったあげく、ギターを8ビートで刻みながら歌詞を喋ってみると、「あんた、あの子の何なのさ」というパートを台詞にするアイデアが浮かんだ。続いて「港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ」のパートも、メロディーが出来てきた。

じゃ、その本編はどうしようと思って喋ってるうちに、あれは例えば道路工夫の歌、有名な機関車の運転手とか、バラードというのか、トーク・ソングというのか、物語をずっと歌手が語って、その人の名前を最後に一節歌って、その人の名前を言って、今度、二番に行くというのがあったことを思い出した。(宇崎竜童)


横浜から横須賀へと流れていった商売女を捜している男と、女と接点を持った連中の証言で成り立つユニークな歌が、子供の頃から聴いてきたカントリー音楽の中にあった“トーキング・ブルース”を思い出したことで、「港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ」は完成した。

最後に名前を言う歌といえば、ジョニー・キャシュの「A Boy Named Sue(スーという名の少年)」が、アメリカでは有名だ。


父親に「スー」という女の子の名前をつけられた少年の物語を、キャッシュは独特の渋いバリトンで語るように歌っていく。

オヤジは俺が3つの時に出てった
俺とオフクロに何も残さず消えやがった
この古いギターと酒の空きビン以外はな
ああ俺は追っかけてなじったりはしねぇ
だがヤツが今までしたことのサイテーは
出ていく前に「スー」と俺に名付けたってこと


いじめやからかいにあって喧嘩をくりかえすうちに、いっぱしの乱暴者になった少年は、酒場でついに父に出会って対決する。ところが白髪まじりになっても父は手ごわく、ふたりとも殴り合いで血まみれになる。

「息子よ、この世は甘くない。男がなにかやりとげるんなら、タフにならないとな。だがお前を強くしたのは、俺がつけたその名前なんだぞ」と父はうそぶく。
「おやじよ、俺は子供を持ってもな、スーなんて名は絶対つけねぇぞ!」と言い返す息子。

1969年にカリフォルニア州のサン・クエンティン刑務所で行われたライブで歌われたヴァージョンは、シングル・カットされて大ヒットした。


不良をイメージさせる強面のルックスとつなぎのファッションに相応しく、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの歌は、社会の底辺に生きる人間たちのリアルな声、反逆的な歌詞や物語が特徴だった。

彼らは日本で最も有名な刑務所の歌「網走番外地」を、デビュー・アルバムの『脱・どん底』に入れたが、レコ倫からは発売禁止の処置を受けている。

常に弱者の味方で権力やシステムと闘い、生涯で何度も刑務所での慰問コンサートを行ってきた反逆のカリスマ、ジョニー・キャッシュとも通じるものが確かにある。
 

『ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 35周年記念 VERY BEST OF ROCK&BALLADS』
EMIミュージック・ジャパン


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▼場所/横浜市開港記念会館講堂(ジャックの塔)

▼出演
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畠山美由紀 with 高木大丈夫(ギター)
奇妙礼太郎 with 近藤康平(ライブペインティング)
タブレット純(司会と歌)
佐藤利明(司会と構成)

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SS席 9,500円 (1・2階最前列)
S席 8,000円
A席 6,500円
「チケットぴあ」販売ページはこちらから

▼詳しい情報は公式サイトで
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