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伝説の白鯨になった男〜稀代のドラマー“ボンゾ”の神がかったプレイに酔いしれて

2025.09.25

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ロックファンの間で、“ボンゾ”の愛称で広く親しまれたレッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナム。ロック黄金期(60〜70年代)の音楽をかじった経験のある人なら、必ず知っていると言っても過言ではない“伝説のドラマー”である。

ロックミュージックにおいて考えられるドラムパターンは、彼が生前に叩き尽くしたとまで言われ、ミュージシャンの間では今でも崇拝されている存在だ。

レッド・ツェッペリンというバンド名を冠したデビューアルバムのオープニング曲「Good Times Bad Times」(1969年)で鮮烈な印象を残し、名盤といわれた『Led Zeppelin IV』(1971年)の「Black Dog」などで聴くことのできる、卓越したタイム感や変拍子を駆使したワイルドかつパワフルなドラムプレイでね“唯一無二”の存在感と実力を見せつけた。

体格にものをいわせて力任せに叩くのではなく、ジャズの技術に忠実に“柔と剛”を自在に使いこなしているところが、ボンゾのドラミングの凄さといわれている。

ボンゾが叩いた数ある名曲の中でも、その神がかったプレイをたっぷり堪能できるインストゥルメンタル曲がある。それは、1969年にリリースされたレッド・ツェッペリンの『Led Zeppelin II』に収録されている「Moby Dick」という“伝説の白鯨”をテーマにしたもの。

序盤1分くらいは、バンド全体で演奏されるグルーヴィーなテーマがひとしきり。そして、おもむろにボンゾのソロに切り替わる。そのステックさばきはもちろんのこと、目を見張るドラムテクニックの数々が披露される中、素手で叩くプレイまで飛び出す“ボンゾ独壇場”の世界が永遠と続き、最後にちょこっとしたエンディングテーマで〆る。

インストゥルメンタル曲とはいえ、そのほとんどがドラムソロといったまさに前代未聞の楽曲なのだ。初期のツェッペリンのコンサートでは、この曲がハイライトの一つになっていたという。曲名は、1851年にハーマン・メルヴェルが発表した世界的に有名な長編冒険小説『白鯨(モビィ・ディック)』から付けられており、ボンゾの力強いドラミングが白鯨=荒くれ者を連想させるところから由来している。

「Moby Dick」/レッド・ツェッペリン(LIVE)


デビュー前はレンガ職人だっただけあって、もともと腕力は申し分なしだったボンゾだが、体型は最初からゴツかったわけではない。実際、デビューした当初は痩せていたが、バンドの成功に伴って好きなビールをたくさん飲み過ぎたのだといわれている。

その酒癖は相当に悪かったらしく、来日公演の時にはホテルの窓からテレビを投げ落としたというエピソードもあるくらいだ。何故にそこまで酒に溺れたのか? それには理由があった。

ボンゾはとても愛妻家であり、良き父でもあった。あまりにも家庭を愛していたがために、家や家族から離れて長いツアーを行うことを嫌っていた。公演ツアーの度に、ホームシックと重度の飛行機恐怖症を紛らすために、しばしば深酒をしていたのだ。

しかし、酒癖は次第に酷くなっていき、1980年9月25日、彼は酒によって帰らぬ人となってしまう。その前日、バンドのアメリカツアーに向けてのリハーサルのためにスタジオに向かっていた。だが、途中で立ち寄ったパブで16ショット相当(約473 ml)のウォッカを飲み干し、スタジオに到着してからもさらにアルコールを口にしていた。

リハーサル終了後、ジミー・ペイジの自宅で行われていたパーティーにも顔を出し、そこでも延々と飲み続け、とうとう酔い潰れてベッドに寝かされた。翌朝、ツアーマネージャーとベースのジョン・ポール・ジョーンズが、寝室で冷たくなっているボンゾを発見する。

死因は、吐瀉(としゃ)物を喉に詰まらせての窒息死だった。検死の結果、多量の飲酒により肺水腫を引き起こしていたことと、アルコール以外の薬物反応はないことがわかった。その後,遺体は火葬され、遺灰はボンゾが所有していたバーミンガムの農場近くのラショック教区墓地に埋葬された。

不慮の出来事で偉大なドラマーを失ったツェッペリンは、同年12月4日に解散声明を発表。あの日、鯨飲し過ぎたボンゾは、安らかな眠りと共に家族のもとへ帰れたのだろうか?

没後40年以上経つ今も、「彼を超えるドラマーは居ない」と語り継がれながら、ボンゾは“伝説の白鯨”となって、ロックンロールの大海原を漂っている。


レッド・ツェッペリン『Led Zeppelin II』

レッド・ツェッペリン『Led Zeppelin II』



ビースト――ジョン・ボーナム評伝 レッド・ツェッペリンを支えた野獣のドラムス


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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

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