1952年、27歳になったチャック・ベリーは、ピアニストのジョニー・ジョンソン率いるバンドにギタリストとして加入した。
「あれは年の瀬だった。ジョニー・ジョンソンというピアニストから電話があったんだ。大晦日の晩にトリオバンドでギターとヴォーカルをやらないか?ってね。セントルイスにあるコスモポリタンというクラブでの本格的な演奏だ。もちろん引き受けたさ!」
彼にとって、そのステージがプロのミュージシャンとしての第一歩となった。ジョニー・ジョンソンの理解もあり、徐々に人の曲に新しい歌詞をつけたり、即興の歌詞を歌うようになる。ギターのアドリブの腕も上達し、ジョニーのピアノとの絡みも客に大ウケしたという。
その後、チャックはブルース界の大御所マディ・ウォーターズから人生を変えるアドバイスをもらい、直後にブルースの名門チェスレコードとの契約を結ぶ。きっかけは、友達のラルフと、憧れのマディ・ウォーターズが出演するクラブへ行った時のことだ。
「マディは最後のセットのラストナンバー“Got My Mojo Working”を演奏中だった。演奏が終わると群がるファンをかきわけ、サインを貰うために突進してくれたラルフのおかげで、俺はマディと口をきくチャンスができた。大統領か法王に、お目どおりするような気分だった俺は、曲の素晴らしさを褒めた後、単刀直入に“レコードをつくるにはどうすればいいのか?”と聞いてみた。大勢のファンが声をかけようとひしめく中で、マディは俺の質問に答えてくれたんだ。“レナード・チェスに会ってみろ!47丁目とカテッジの角にあるチェスレコードさ!”」
1955年、29歳にしてシングル「Maybellene」で遅咲きのデビューを果たす。マディ・ウォーターズの推薦でチェスと契約を交わしたのだから、最初はブルーズでデビューと思っていたが、意外にもレナード・チェスが関心を示したのはカントリーだった。
レナードの目論み通り、「Maybellene」はビルボードのポップチャートで5位、R&Bチャートで1位を獲得し、彼は“史上初の黒人ロックンローラー”として一躍人気者となる。
その後も「Roll Over Beethoven」(1956年)「Rock ‘n’ Roll Music」(1957年)と次々にヒット曲を連発し、ついに彼は歴史的な名曲「Johnny B. Goode」を生み出すこととなる。
「この曲は作ったその場でレナード・チェスが気に入ったんだ。レコーディング中もレナードがつきっきりでコーチしたのを憶えている」
歌の内容はフィクションで、チャックの自伝的要素もあるというが、実は彼をこの世界に引き入れたピアニスト、ジョニー・ジョンソンのことを書いたものだという。
その童話的なストーリーの大筋は、彼の母の予言(息子への期待)も含まれており、歌詞の制作期間は二週間だったらしい。
「俺はギタリストを夢見る田舎の少年の物語を書いていった。懸命に練習を続ける貧しい少年を、母親の声に見たてたバックコーラスが“行け!行け!ジョニー!”と励ますんだ。この歌の誕生の真の功労者は、俺にいつかきっと大金持ちになると励ましてくれていたお袋かもしれない」
幼い頃に母親から黒人奴隷のルーツについて話を聞いていた。アフリカ大陸からニューオーリンズの綿畑に連れてこられて、どんな生活をしていたのか? ひいお爺さんがニューオーリンズの緑深い森の奥の丸太小屋に住んでいたこと。チャックは最初、歌の主人公に黒人の少年(カラードボーイ)をイメージしていたが、白人ファンのことも考えて田舎の少年(カントリーボーイ)に変えたという。
「俺はこの曲のおかげで成功を手にすることができた。黒人の才能が認められることなんてなかった暗黒時代に、俺は一部の白人からも認められたんだ。この曲は現代の暗黒時代から生まれた産物なんだ。貧しくても、黒人に生まれても、努力する姿勢と才能があれば成功できるかもしれない。でも富と名声は向こうからは来てくれない。自分から“GO!“するしかなんんだ」
最後に。この曲のオリジナル演奏は、1977年に打ち上げられた宇宙船ボイジャー1号・2号に搭載されたゴールデン・レコード(The Sounds of Earth)>に収録された。
そこには地球の生命や文化の存在を伝える音・音楽や画像が収められており、地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることが期待されているという。
いつか地球外知的生命体が「ジョニー・B.グッド」を聴く日が来るとしたら…彼らはロックンロールに胸躍らせるのだろうか? なんとも夢があって素敵な話じゃないか。
<参考文献『チャックベリー自伝』チャックベリー(著)中江昌彦(訳)音楽之友社>
ベスト・オブ・チャック・ベリー
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