2015年にリリースされたマムフォード・アンド・サンズの3rdアルバム『ワイルダー・マインド』は、ファンはおろか音楽業界をも大きく驚かせる内容だった。
それまでの彼らはバンジョーを主体にしたアコースティックなサウンドが特徴で、エレクトリックな音楽が流行っていた2010年前後の音楽チャートに新しい風を吹かせた存在のひとつだった。
ブルーグラスやフォーク、カントリーの香りを出しつつも独創性と新鮮さを感じさせ、2枚目のアルバム『バベル』(2012年)では、グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞するという、最大級の成功を収めた。
それから3年の月日を経て発表された『ワイルダー・マインド』では、なんとバンジョーといったアコースティックな楽器を封印し、エレクトリックに転身したのである。
それまでのサウンドを求めていたファンにとっては大きく裏切られる内容となったが、一方ではこの変化を歓迎する声もあり、賛否両論を巻き起こす作品となった。
しかし、彼らはエレクトリックに向かったと思いきや、またもや違う方向へと向かったのである。
それは2016年1月のことだ。
この年、彼らは初となる南アフリカでの公演に望むこととなった。ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンなど、様々なアーティストとステージで共演してきた彼らは、南アフリカ公演でも地元のバンド、ベアテンブルクをはじめとして、いくつかのアーティストと共演を果たしている。
中でも印象的なのがセネガルの国民的アーティスト、バーバ・マールとの共作、「ゼア・ウィル・ビー・タイム」だ。
マムフォードの音楽にバーバの力強くソウルフルな歌声、そしてパーカッシヴなサウンドが加わり、『ワイルダー・マインド』ともまた違った一面を見せている。
さらにはツアーの合間をぬって現地のスタジオに入り、レコーディングにも臨んだ。とは言っても具体的なプランがあったわけではなく、上手くいかなければお蔵入りになる可能性もあったという。
案の定、初日は機材トラブルに見舞われ、思うような作業ができなかった。しかし、2日目は一変して充実したセッションとなり、それらは6月に5曲入りのEP『ヨハネスブルグ』としてリリースされることになった。
南アフリカでの挑戦について、メンバーの一人であるテッド・ドウェインはローリング・ストーン誌でこのように話している。
「僕たちの中にアフリカ音楽の専門家は一人もいない、だからこそ僕たちはやりたかったし学びたかった、その場所と関わりたかったんだ」
また、バンドの中心であるマーカス・マムフォードは別のインタビューで、レコーディングした音源の数々をミックスして完成させる作業が本当に楽しかったと話している。
「僕らにとってはたくさんのおもちゃをおもちゃを手にしたようなもので、心の底から面白い音楽を作り、そしてそれを楽しんでいると感じたよ」
マムフォード・アンド・サンズが求めるのは成功ではなく、純粋に音楽を楽しむということだ。彼らの好奇心が尽きない限り、これからもマムフォード・アンド・サンズの音楽は変わり続けていくのだろう。
*このコラムは2018年10月に公開されました。

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