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仕事の歌〜革命の時代に禁止令をかいくぐって唄い継がれたロシア民謡

2017.11.23

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19世紀末から20世紀初期の“帝政ロシア”の時代。
ツァーリ皇帝時代の末期(1905年〜1971年)に、革命運動の火の手がロシア全土に燃え広がった。
当時のロシア民衆は、自分たちを鼓舞するために革命歌や古いロシアの戦いの歌を唄ったという。
この「仕事の歌」は、波止場人夫の過酷な労働と搾取に対する“憤り”をテーマにした歌だった。
19世紀から唄い継がれてきたこの労働歌に、ロシアの詩人V・ボグダーノフがあらたに歌詞をつけて1865年に発表した。
さらに1885年、A・オリヒンが改編した後、革命歌として一般に広まってゆく。
原題の「ドゥビーヌシカ(Дубинушка)」は、ロシア語で棍棒の意味。
この歌の中では、波止場で働く労働者が荷揚げなどの作業に使う樫の木の丸太ん棒のことを指す。
それらは労働のための道具でもあり、政府からの圧制に抗して起ち上がった民衆の武器にもなったという。
重たい荷物を曵くための綱を巻き上げる“ろくろ”から転じて、波止場人夫の「舟曵きの歌」=「仕事の歌」となったのだ。

歌詞の内容が“抑圧と搾取に対する憤り”となっているため、当時のツァーリ政府はこの歌を禁止したという。
しかし、民衆の怒りは制圧されることなく、この歌は人々の間で広まっていくこととなる。
当時、この歌の禁止をめぐって“歌手が生き延びた”という逸話が残っている。
「仕事の歌」をレパートリーにしていたシャリピンという歌手が、ある日皇帝に呼ばれて「あの歌はもう禁止だ!」と叱責された時に、こんな言葉を返した。

「陛下、この歌はもともと労働者を軽蔑したものでございます。」

そう言って彼は、その場で堂々と歌ってみせて難を逃れたという。




<引用元・参考文献『世界の愛唱歌』長田暁二(ヤマハミュージックメディア)>

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