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憧れのボ・ディドリーとのツアーで、どんとが骨折するアクシデント

2015.01.31

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ボ・ガンボスの“ボ”は、どんとが敬愛するボ・ディドリーの“ボ”からつけられた。

1988年に行われたボ・ディドリーとの対談でも、どんとは自らを「私は世界一グレイトなボ・ビートを研究し続けるボ・ガンボスというバンドのシンガーなのです(宝島 1988年8月号より)」と語っているほどボ・ディドリーのビートの魔力に心酔していた。

ボ・ディドリービートが生まれたのは1955年、ボ・ディドリーのデビュー・シングル「ボ・ディドリー」からである。

ボ・ディドリー「Bo Diddley」


マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、リトル・ウォルター、ジミー・リードといったブルース・マンが全盛だった時代に、他の誰とも違うものを作り出して勝負したいと考えていたボ・ディドリーが、オープン・チューニングのギターとドラムスとマラカスだけで、しかもメロディー・ラインを弾かずに全くの自己流であるというゴリ押しのリズム・カッティングによるギター・プレイから生みだした。

それが独特のジャングル・ビート、ボ・ディドリービートなのだ。
そのボ・ディドリーとボ・ガンボスは、デビュー・アルバムでいきなり共演を果たしている。

1989年3月、ボ・ガンボスの4人は、デビュー・アルバム「BO & GUMBO」のレコーディングのために、ニューオリンズに来ていた。滞在期間は45日。

『2日目ボが、“ボ・ガンボス”という曲をプレゼントしてくれた。
うれしいようなとんでもないような逃げ出したくなるような気持ちで、
ボが歌ってくれるのをとにかく聞いた。
なかなか歌えなかった。なんて素晴らしいアクシデントだろう。』


最初からアルバム収録曲がいっぱいだったので、プレゼントされた曲の「BO GUMBOS」はセカンド・シングルとして9月21日に発売された。

アルバム「BO & GUMBO」でボ・ディドリーがヴォーカル、ギター、パーカッションで参加しているのを聴くことができるのは、ボ・ディドリービートから生まれた「ずんずん」である。

ボ・ガンボス「ずんずん』(1989)


『とにかくボにはまいった。今までに出会ったことがなかったとてつもないスケールでボはぶっ飛ばした。
2日間のセッションでおれは完全にボにいかれてしまった。
ロックンロールはレコードのことじゃなく、人間のことなんだと、巨体は絶えずダンスした。
この日からおれはロックンロールに狂い始めた。』


ニューオリンズでのレコーディングが終わると、ボ・ガンボスの4人はミックスダウンのためにマイアミへ向かった。
ちょうどマイアミでボ・ディドリーのライブがあるというので見に行くと、4人を見つけたボ・ディドリーが、
「みんなステージに上がってこい!」と言う。

そして「日本から来たボ・ガンボスだぜ!イェーッ!この前はニューオリンズで一緒にレコーディングをしたんだぞ!」と、ボ・ガンボスを高らかに紹介してくれた。

ライブを見に行っただけの彼らは、楽器を持っていなかったが飛び入り出演した。
また滞在中には、ニューオリンズ・ジャズ・アンド・ヘリテイジ・フェスティバルに出演し、そこではアラン・トゥーサンとの共演も果たしたのだった。

完成したデビュー・アルバム「BO & GUMBO」は7月に発売された。
9月にはニューオリンズ滞在中のレコーディング風景やライブ等を収録したビデオ、「Walking To New Orleans」が発売になり、ボ・ディドリーを日本に呼んでボ・ガンボスとの共演ツアーも行われることになった。

9月22日 埼玉 大宮市民会館
9月23日 東京 NHKホール
9月25日 名古屋 勤労会館
9月27日 大阪 毎日ホール
9月28日 福岡 電気ホール

ところが好事魔多しで9月23日、ボ・ディドリーとのジョイント・ライブの本番中に、どんとはNHKホールで客席に転落して左腕を骨折するアクシデントに見舞われる。

どんとはギターが弾けなくなり、その影響で声にばかり負担がかかったせいか、声帯を痛めて次第に声が出なくなっていく。

どんと自身がそのことを、次のように文章に書き残している。(注2)

大阪厚生年金ホールの満員の客の前でまったく声が出なくなるという地獄を見て、それから2年位のあいだ声は治らず、低迷してしまったのである。
そしてやっと治った92年の夏に京都の西部講堂前でフリー・コンサートを行い、大観衆の前でボガンボ史上最高の演奏をしたのであった。
そしてそれはどんとの20代最後の演奏であった。


<文・阪口マサコ(MusicSommelier)>

※『 』内は、Bo Diddley & Bo Gumbos Japan Tour 1989パンフレット内の「Walking To
New Orleans」どんと著より引用です。

(注2)ミュージック・マガジン2月増刊号『どんとの魂』114ページ、「どんとからの手紙」の引用。

・ニューオリンズでレコーディングの様子(ビデオ「Walking To New Orleans」より)


『どんとの魂』

『どんとの魂』

(ミュージックマガジン )


ボ・ガンボス『BO GUMBOS 1989』

ボ・ガンボス
『BO GUMBOS 1989』

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TAP the POP 特集 ボ・ガンボス



おまけ
ボ・ガンボス「ロードランナー」 at HOT HOT GUMBO ’92 京都大学西部講堂フリーコンサート

文中に出てくる、どんと20代最後のライブ。ボ・ディドリーの楽曲を日本語でカバー。

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