ジミ・ヘンドリックスのステージを始めとして、数々の伝説が生まれたウッドストック・フェスティバル。その25年という節目に催されたのが「ウッドストック’94」だ。
「平和と音楽の2日間」というキャッチフレーズで発表されたのち、1日追加されて8月12日から14日の3日間に渡って開催される。
2日目のメインステージ、メタリカに続いてステージに現れたのは、文字通り“泥まみれ”のナイン・インチ・ネイルズ(以下NIN)だった。
NINは正式なメンバーがフロントマンのトレント・レズナーのみで、それ以外はレコーディングやライブに合わせて集められるという特殊な形態のバンドだ。
1994年に発表した2ndアルバム『The Downward Spiral』がビルボードで初登場2位となり、ビッグネームの仲間入りを果たしたNINのもとに舞い込んだのが「ウッドストック’94」への出演オファーだった。
会場は連日の雨で足場が泥沼と化していた。本番前、トレントはかなりのプレッシャーを感じていたという。
ライブの前は「吐きそうになる」というトレントにとって、その日は今までとは比べ物にならないほど大勢の観客が待っているのだから無理もなかった。不安を紛らわすために楽屋から外へと出かけたトレントが目にしたのは、泥だらけになっている観客の姿だった。
その時間はまだ泥で汚れてるヤツはそんなにいなかったが、中には泥だらけになってるヤツもいて、そいつらがすごく特別な時間を過ごしているように見えたんだ。
本番直前、ステージへと向かう途中でトレントがちょっとした悪ふざけでギターのダニー・ローナーを背中から押すと、ダニーは見事に顔から泥に突っ込んだ。すると今度はダニーがトレントにタックルをかまし、気がつけばみんな泥の中でレスリングをして遊んでいたという。
それが本当に可笑しかったんだ。終わった頃には不安なんて吹っ飛んでいたよ。
全身泥まみれのになったNINは、そのまま大観衆の待つステージへと上がっていき、のちに彼らのベスト・パフォーマンスと語り継がれることになるライブが始まった。
メインステージには3日間を通して最も多くの人が集まり、その模様は生中継されて世界中に大きな衝撃を与えることになる。
(登場は2分15秒あたりから)
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