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ジョニー・キャッシュ「Hurt」〜声に滲む、ロックンロールの本質

2024.09.11

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リック・ルービンは、完成した「Hurt」のビデオクリップを初めて観た時、作り手側でありながら感極まって涙したという。

「ジョニー・キャッシュは本当に素晴らしいアーティストだが、残念なことにキャリアをしめくくるにふさわしいレコードを作る機会に恵まれていたとは言えなかった。最高のアーティストをしかるべき場所に導く──それが自分にとって正しいことだと感じただけなんだ」


名物プロデューサーとして数多くのアーティストを手がけてきた彼だが、いつもジョニー・キャッシュという存在を基準に物事をジャッジメントしてきた。

「彼は、社会のルールにこびない、そしてダークな側面を持った人間だった。彼はカントリー・ミュージックのアーティストだったが、カントリー・アーティストで終わる人ではなかった。私はそこに、ロックンロールとは何かという本質を見出した」


それだけにキャッシュとともに制作した、American Recordingsシリーズにかけた思い入れは深かった。ルービンは、キャッシュのプロデュースを自ら手がけることを懇願し、ドサ回りの会場まで通いつめたという。

そうしてスタートした二人のコラボレーションは、その組み合わせの意外さと、キャッシュがビートルズやU2、さらにはナイン・インチ・ネイルズやベックまで幅広い世代にわたる〈ロック〉をカバーするという着想が、大きな驚きをもって受け入れられた。

「キャッシュが歌うことの目的は、すでにある曲に何か新しい視点を与えるか、彼の歌が試金石となってその本質を引き出すことだ。彼は波瀾万丈の人生の中で、本当の多くの知恵や知識を得てきたけれど、彼が話すときには、そうした生き様がにじみ出ていたし、彼が歌えば、その歌の中に彼自身の物語が投影される。多くの人が何度も聴いてきた曲でさえ、新たな生命を吹き込む才能に長けていたんだ」


アウトローとして生涯を駆け抜けたジョニー・キャッシュ。彼の歌声を通して、ロックンロールの叛逆性が新たに照らし出されたのだった。

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ジョニー・キャッシュ
『American IV: Man Comes Around』
(Lost Highway/2002年)

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ジョニー・キャッシュ「Hurt」

ナイン・インチ・ネイルズ「Hurt」

*本記事は、2014年4月12日に初回公開されたものに加筆・修正しました。

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