ニューヨークの南端にあるリゾート地のコニー・アイランドで、後にキャロル・キングと名乗る少女が初めてレコーディングしたのは1945年、わずか3歳の時のことだ。
観光客用の小さなスタジオで、父と母の3人で小さな録音ブースに入り、ぎゅうぎゅう詰めになって家族の声をレコード盤に残した。
わたしの名前はキャロル・ジョーン・クライン、ニューヨーク州ブルックリン東24番街2466に住んでいます。
ピアノを通じて幼い頃から音楽に親しんでいた少女が、自作の曲でポップス・シンガーとしてデビューしたのは16歳の時だった。
だがキャロル・キングの名前で出したシングル盤は不発に終わり、歌手としての栄光をつかむことは出来なかった。
作詞家を目指していたジェリー・ゴフィンと出会ったのはその頃で、二人はソングライターのコンビを組んで音楽出版社と契約した。
曲作りに励んでいくうちに恋人同士となり、キャロルは17歳で結婚してまもなく母親になった。
黒人女性ヴォーカル・グループのシュレルズに提供した「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」が、全米チャートの1位に輝いたのは1961年1月30日である。
これはマーヴェレッツ、クリスタルズ、シュプリームスと続く女性のヴォーカル・グループ時代の先陣を切る快挙となった。
ゴフィン&キングはここからドリフターズ「アップ・オン・ザ・ルーフ」(全米5位)、リトル・エヴァ「ロコモーション」(全米1位)などのヒット曲を立て続けに生み出し、ヒットメーカーとしてポップス界の寵児となっていく。
売れっ子ソングライター夫妻は私生活でも二人の子どもにも恵まれて、その生活は順風満帆そのものに見えていた。
ところが1964年の初頭に「抱きしめたい」が大ヒットし、全米でビートルズの人気が沸騰する。さらにローリング・ストーンズやキンクス、フー、デイブ・クラーク・ファイブなどのバンドがブレイクし、ブリティッシュ・インヴェイジョンが吹き荒れたことによってアメリカン・ポップスは急速に衰退していった。
二人の曲も以前ほどは売れなくなり、私生活にも少しずつ亀裂が入っていく。ゴフィンと離婚したキャロルはロサンゼルスに活動の場を移した。
東海岸と西海岸では気候や景色、生活スタイルから流行りの音楽まで違っている。
1968年にはザ・シティというグループを結成してアルバム『夢語り』を発表したキャロルに、人生のターニンポイントが訪れたのは27歳を迎えた1969年のことだ。
キャロルは自分の内面をさらけ出してしまうのが不安で、それまでは歌の詞を書くことに対して消極的だった。
だが周囲の仲間たちの励ましもあって、ソロ・アルバム『ライター(Writer)』に取り組んだのである。

アルバムの最後を飾ったのは「Up On The Roof」、1962年にドリフターズが歌ってヒットした代表曲のセルフ・カヴァーだった。
『ライター』を1970年に発表したキャロルは、シンガー・ソングライターとして新しい世界へと足を踏み出したのである。
しかしそれでもキャロルにはまだ、どこか躊躇するところがあった。自分の歌に自信が持てないからという理由で、人前では決して歌わなかったのだ。
ナンバーワンになりたくないの。1位になったら後は落ちるしか道がないもの。5位か10位でもいいから、長くそこにいたい。
自分の書いた楽曲でたくさんのスターを生み出したキャロルは、彼らがファンやメディアに追いかけられて、プライバシーをなくすことの辛さを見てきた。
ヒットを要求するレコード会社に追いつめられて、プレッシャーに押しつぶされる怖さも十分に知っていた。
裏方として長く活動してきたことから、成功してスターになるのが怖かったという。
そんなキャロルの詩に対する苦手意識を取り払ってくれたのは、生涯の友人となるジェームズ・テイラーだった。
ジェイムスのライブでピアノを弾いていたキャロルは、半ば強引に「Up On The Roof」を歌わされたことによって、シンガーとしての自信を得たのだ。
〈*参照コラム『キャロル・キングがはじめてスポットライトを浴びて歌った「Up On The Roof」』〉
初めは一人でやっていく自信がなかったの。そんな私をジェームズ・テーラーはたくさん励ましてくれたわ。
歌うことの楽しさをジェームズに教えてもらったキャロルは、1971年2月に歴史に残る名盤『つづれおり(Tapestry)』を発表する。
*参照コラムキャロル・キングとジェイムズ・テイラーをつなぐ「君の友達(You’ve Got A Friend )」
(注)本コラムは2014年6月7日に公開したものに加筆しました。

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