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キャロル・キングが初めてスポットライトを浴びて歌った「Up On The Roof」

2024.02.09

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そのとき、キャロル・キングは怒りと不安、緊張で頭が真っ白になった。

何が友達よ! どうして私にスポットライトを当てようとするの? 本当にやるつもり?


1970年の夏、キャロルは友人だったジェイムス・テイラーのバックでピアノを弾くことを引き受けて、バンド・メンバーと共にツアーを回っていた。
そしてツアーで訪れたキャロルの母校、クイーンズ・カレッジでのライブが、その後の人生を大きく変えることになる。

本番直前、舞台裏で待機しているキャロルに、ジェイムスが急に「Up On The Roof」を歌ってくれと言ってきた。
1962年にドリフターズが歌ってヒットした「Up On The Roof」は、キャロルの書いた代表曲の一つだった。

人前で歌うのが苦手だったキャロルは断固としてそれを拒否したが、ジェイムスは聞く耳を持たずにステージに上がってしまった。

ジェイムスの自信に満ちた素晴らしい歌で、その日のライブは順調に進んでいった。
途中でバンド・メンバーを紹介したジェイムスは、最後にキャロルがこの学校の出身であること、ソングライターとして数々のヒット曲を生み出したということを伝えた。

観客から温かい拍手が送られたところで、ステージの照明が暗くなってジェイムスがあらためて紹介した。

「レディース・アンド・ジェントルメン、キャロル・キング!」


ついに歌わなくてはならない時が訪れた。
キャロルは完全にパニック状態だったが、覚悟を決めてピアノを弾き始める。
スポットライトが彼女を照らす。

震える声で歌いながら周りを見渡すと、バンド・メンバーはみな笑顔を見せてくれる。
なかでもジェイムスは満面の笑顔だった。
2人は自ずと「Up On The Roof」を一緒に歌い始める。

屋根の上は私が知っている唯一の
願い事をするだけで 夢が叶う場所
いっしょに屋根へと上がりましょう


歌い終わったキャロルに、盛大な拍手が送られた。

ジェイムスの手引によって半ば強引に、ソロ・パフォーマーとしてのデビューを飾ったキャロルは自著で、「彼の紹介の仕方と選曲のおかげで、私は歌う前からすでに観客から愛されていた」と語り、人前で歌うことの楽しさを教えてくれたことを感謝し続けているという。

Carole King & James Taylor / Up On The Roof (Live At Troubadour 2007)



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