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吉田拓郎~日本初の6万人コンサート開催

2024.04.05

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ボブ・ディランのように全国各地から大勢の人たちが集まるようなコンサートをしたい。
吉田拓郎がそう思ったのは1974年の秋頃のこと。

1971年に中津川で催された第3回全日本フォークジャンボリーへの出演を機に吉田拓郎は、多くの若者たちからの支持を集め、ラジオ・パーソナリティとしても人気を博していた。

コンサートで各地を回ったり、同会場で連続公演をしたりという日々の中で、1箇所に全員が集まって同じ時間を共有することは出来ないかと考え始める。

大規模コンサートを実現する上でまず課題となるのが会場だった。
中津川をはじめいくつかの会場と交渉した末に決まったのは、静岡県掛川市にあるオープンしたばかりのリゾート施設、スポーツランドつま恋の多目的広場だった。

時間帯は夏にやるのであれば炎天下の昼を避けて夕方頃からスタートし、終電がなくなってから交通機関が再び動き出す翌朝まで、夜通しで続けるのが最善ではないかという結論にいたる。

しかし、吉田拓郎1人でおよそ12時間演奏し続けるのは体力的にもレパートリー的にも厳しい。
そこで声がかかったのが、かねてから深い付き合いのあるかぐや姫だった。

既に4月の解散が決まっていたかぐや姫だったが、1日限りの再結成でコンサートへの出演を引き受ける。
開催日は1975年8月2日に決まり、前代未聞の大規模コンサート「吉田拓郎・かぐや姫コンサート インつま恋」は本格的に動き始めた。

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チケットが発売されると両アーティストの人気もあって4万枚以上が即完売となる。
さらには1週間ほど前から一部の熱狂的なファンが会場前に集まり始め、前日には1万人を超える観客が寝泊まりをしていた。

8月2日、コンサートが本番を迎える頃には予想をはるかに上回る6万人以上の観客が会場を埋め尽くしていた。
これほどの大規模なコンサートは国内では初めてのことだった。

午後5時、予定通りにコンサートが始まると吉田拓郎の「ああ青春」で幕を開ける。
それ以降、かぐや姫と交互で演奏が続き、合間には山本コウタローとウィークエンドや風といったゲスト・ミュージシャン達が登場、コンサートは夜通し続いた。

そして午前4時半頃、12時間続いたコンサートはようやく終わりを迎える。
吉田拓郎が最後に歌ったのは「人間なんて」だった。
会場が大合唱に包まれる中、かすれた声で最後の力を振り絞るように歌う。

曲が終わって吉田拓郎がステージから降りると、会場からはアンコールの声が上がった。
だが、「吉田拓郎は疲労困憊で一歩も動けません」というアナウンスによりコンサートは幕を閉じた。

打ち上げの席で「初めて、歌ってきてよかったと思った。1人でできることではない。みんなに本当にありがとうと言いたい」と、吉田拓郎は出演者やスタッフに感謝の気持ちを伝えたという。


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