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シティ・オブ・エンジェル〜天使の腕に抱かれた静寂の愛

2024.04.09

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『シティ・オブ・エンジェル』(City of Angels/1998)


優れた映画の大きな特徴として、一つの確固たる世界観の貫きがある。目に見えないムードだ。加えて音楽の使い方が絶妙でもある。

そうした作品の『シティ・オブ・エンジェル』(City of Angels/1998)は、静寂と幻想的なムードの中で綴られた愛の物語だった。ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』のリメイクだが、舞台をロサンゼルスに変え、新たな魅力を放つ作品になった。

主演はニコラス・ケイジとメグ・ライアン。アクション大作が続いていたケイジ。コメディエンヌとして人気絶頂にあったライアン。二人にとっても特別な作品になった。

(以下ストーリー含む)
セス(ニコラス・ケイジ)は神の使者である天使としてLAの街を見守っている。ある時は管制塔で危機から人々を救い、ある時は病院で少女を天国に連れて行く。人の心が聴こえたりするが、セスは人との触れ合いに憧れを抱いてる。

マギー(メグ・ライアン)は医師として病院に勤務している。命の誕生と人の死に直面する現実世界。手術中にジミ・ヘンドリックスをかけるような優秀な外科医だ。しかしある日、簡単な手術の最中に患者が死亡。自分の無力さに深く落ち込む。

そんなマギーに心打たれて恋に落ちてしまうセス。そして目に見えないはずの自分にマギーが話しかけて来る。肉体は滅びても魂は生き続けると励ますセス。マギーもやはり恋に落ちるのだった。

人生の希望を取り戻すマギー。それからの二人は図書館で“触れ合い”、“キス”をしたりする。でもマギーには恋人がいる。一方のセスはネイサンという患者の男と仲良くなる。セスの姿が見える理由を話し始めるネイサン。自分も以前は天使で、自由な意志をもって人間になったことを聞かされる。セスはネイサンから人間になる方法=ビルから落ちることを教えてもらう。

次第にマギーは素性を明かさないセスを不信に思う。セスは天使であることを告白するが、信じられるはずもない。「出てって!」と混乱して家からセスを追い出す。そのうち恋人から求婚もされた。患者のネイサンから、セスが永遠の命を捨てて人間になろうとしていることを知らされるマギー。彼女は悩んだ末、今ある現実を選ぶ。

このままではマギーを失ってしまうと悟ったセスは、ビルから飛び降りて人間になることを決意して実行する。そしてすぐさまマギーのもとへ向かう。“人間同士”でベッドを共にする二人。マギーは言う。「あなたを愛してる」と。しかし次の日、非情にもある出来事が待っていた……。

セスが人間になってマギーに会いに行こうとする時、グー・グー・ドールズの「Iris」が流れていて印象的。またエンディングでは、当時スターダムに上り詰めたばかりのアラニス・モリセットの新曲「Uninvited」が使われて話題になった。

しかし、この映画の一番のサウンドトラックは、サラ・マクラクランの「Angel」が流れるシーンだろう。マギーに拒絶され、物思いに耽るセス。セスの天使だという告白がありながらも、愛さずにいられないマギー。二人の心を描写した名シーンだ。

実はこの曲はドラッグをテーマにしているという見方がある。実際、音楽業界にいて日常的にヘロインの誘惑や悲劇を耳にしていた彼女。プレッシャーや葛藤に耐えられずに逃避に走り、過剰摂取で命を落とすミュージシャンたちの姿に自身を重ねたのだ。

サラは常用する者の心に入り込んでこの名曲を書き上げた。天使=ドラッグに置き換えると、この美しい曲のとらえ方が新しくなる(間違っても結婚披露宴向けの歌じゃない)。

天使の腕に抱かれて ここから飛び立つ
この暗く冷たいホテルの部屋から
そしていくつもの長く心細い夜から
沈黙の白昼夢が作り出す瓦礫の下から救い出されて
天使の腕にしっかりと抱かれている
どうかこの世界に安らぎを見出せますように


「Angel」が流れるシーン


サラ・マクラクランによる「Angel」

『シティ・オブ・エンジェル』

『シティ・オブ・エンジェル』


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*日本公開時チラシ
131645_3
*参考・引用/『シティ・オブ・エンジェル』パンフレット
*このコラムは2015年1月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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