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受け継がれるメロディとアレンジ 〜小沢健二とSEKAI NO OWARI〜

2026.04.14

2017年、本格的に音楽活動を再開した小沢健二。彼は2月にシングル「流動体について」をリリースし、音楽番組にも精力的に出演する。さらにはFUJI ROCK FESTIVAL 2017にも初出演を果たし、今までの沈黙を取り返すかのように新たな音楽を鳴らし始めた。

次に小沢健二は自分自身の音楽をアップデートする試みに打って出る。新曲「フクロウの声が聞こえる」において、若手バンドSEKAI NO OWARIとコラボレーションしたのである。

小沢健二とSEKAI NO OWARIという組み合わせは驚きと共に、大きな反響を呼んだ。90年代から長いキャリアを積んできた小沢が、気鋭の若手バンドとともに楽曲を作り上げるということは、聴衆にとっても想像し難いことであったからである。しかし、両者の音楽に対する姿勢には共通する部分があった。

SEKAI NO OWARIは結成されたのは2009年(当時の名称は『世界の終わり』)。小学校の同級生だったFukaseとNakajin、そしてFukaseと中学の同級生だったSaori、そして彼らと高校時代にバンドを組んでいたDJ LOVEの四人で活動をしていた。

しかし、リズムをベースとドラムでなくDJが担うという特殊な編成だったこともあってか、なかなか評価されない時代が続いたという。

そんな状況を打開すべく、彼らは自分たち自身で音楽を発信していく方法を見出す。それはライヴハウスを自らの手で作るということであった。彼らは200万円の借金を背負いながら、ライヴハウス「club EARTH」を創設する。設立当初は集客的な面や金銭面でも苦境が続いていたが、彼らの音楽の魅力によって徐々に話題を呼び、ライヴの動員も増えていった。

彼らはその活動の集大成というべきファーストアルバム『EARTH』を2010年に制作する。幼少期にMr.Childrenや小沢健二、ゆずといった日本のポップスを聴いて育った彼ららしい日本的なメロディと、海外のロック、ヒップホップ、ダンスミュージックなどのアレンジを取り入れた新しい感覚で作られたものだった。

このアルバムは彼らの名前を世に知らしめることになり、2011年にはSEKAI NO OWARI に名称を変えメジャーデビュー。武道館や富士急ハイランド、日産スタジアムなど大きな会場でのライヴを成功させていく。


そんな彼らが楽曲作りの際に一番こだわるのがアレンジである。ギター、ピアノ、DJという特殊な編成によって、楽器の種類に捉われず楽曲を最大限生かす方法を探るのだという。

大ヒット曲「Dragon Night」もそういった試行錯誤から生まれた。海外のEDMを思わせる打ち込みのビートとシンセサイザーの音が印象的なこの楽曲だが、最初は生音とオーケストレーションにこだわった壮大な曲に仕上げようとしていたという。

壮大で印象的なオーケストレーションは「RPG」や「スノーマジックファンタジー」といった彼らの代表曲にも用いられ、SEKAI NO OWARIの代名詞というべきアレンジであった。しか、しメンバーはそのアレンジに納得しなかった。そして一度この楽曲の制作を取りやめる。

「Dragon Night」を寝かせている間にFukaseの耳に入ってきたのは、当時流行していたEDMであった。「Dragon Night」のメロディとエレクトロダンスミュージックの祝祭性の親和性に彼は気付いたのである。


彼らはその後も「ANTI-HERO」ではヒップホップを、「Hey Ho!」ではアイリッシュミュージックなど、音楽のジャンルに縛られず自由な発想で楽曲の本来の良さを生かすアレンジを追い求めていく。

そうした姿勢は小沢健二にも通じる部分があった。1990年代にセカンドアルバム『LIFE』でソロシンガーとしての成功を収めた彼は、その後にリリースした3枚のアルバムでそれぞれ異なるジャンルのアレンジを追求していた。

『球体の奏でる音楽』ではジャズを、『Eclectic』ではAOR、『毎日の環境学』ではアンビエントなどその時々に合わせて自らの作り出す音楽にふさわしい要素を取り込んでいった。

小沢健二とSEKAI NO OWARIのコラボレーションも、「フクロウの声が聞こえる」という楽曲を生かすためのアイデアがふんだんに詰め込まれている。壮大なオーケストラの演奏、妖しく響くテルミンの音、Saoriの軽快なピアノ、小沢健二とNakajin、DJ LOVEによる力強いギターの轟音。それぞれの音が印象的に響くように、計算されたかのようなアレンジである。

この楽曲はそもそも、小沢健二が2016年に行ったツアー「魔法的」で披露されたものであった。そのツアーを観客として見に来ていたNakajinは「まさか自分たちがこの楽曲に参加するとは思っていなかった」と語る。

「フクロウの声が聞こえる」は新しい世界へと向かっていく子供とそれを見守る父親の姿を歌っている。小沢健二のメロディセンスやアレンジへのこだわりを受け継いでいるSEKAI NO OWARIは、まさに音楽的に父と子の関係にある。その二組で歌い、演奏されることによって楽曲にまた新たな息吹が灯されているように思えるのだ。

*このコラムは2017年9月に公開されました。


 
小沢健二とSEKAI NO OWARI 『フクロウの声が聞こえる』
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