GSのザ・タイガースがリリースしたシングル盤のうち、最も多く売れたのは、1968年に発売された「銀河のロマンス/花の首飾り」だ。
当初はB面曲の扱いだった「花の首飾り」は、A面の「銀河のロマンス」をしのぐ人気となって初のチャート1位を達成した。
その後も2001年にシングルとして発表した井上陽水を筆頭に、多くのシンガーによって歌い継がれてスタンダード・ソングとなった。
ギターとコーラス担当だった加橋かつみが初めてリード・ボーカルをとったこの曲は、彼等が初めて主演した映画『世界はボクらを待っている』の主題歌、「銀河のロマンス」のカップリングとして発表になった。
小学・中学時代に教会の聖歌隊で歌っていたせいか、ザ・タイガースの加橋かつみの澄んだ高音には独特の魅力があった。
「花の首飾り」が誕生する伏線となったのは、ザ・タイガースをデビュー時からプロデュースしていた作曲家のすぎやまこういちが、日劇のコンサートで加橋かつみが歌ったビージーズのカヴァー曲、「ホリデイ( Holiday)」を耳にしたことだった。
コンサートで加橋かつみが「ホリデイ」を歌うとき、ファンの嬌声がひとときだけ止んで、会場の空気は静かな緊張に包まれていた。
「ホリデイ」は1967年にビージーズを世界的に有名にしたヒット曲、「マサチューセッツ(Massachusetts)」に続くシングルだが、日本では「マサチューセッツ」のB面としてレコード発売された。
70年代後半のディスコブームのシンボルとして知られるビージーズのギブ三兄弟は、幼少の頃から教会の合唱団に所属して歌っていたことが、コーラス・グループ結成の原点となった。
子供の頃からクラシック音楽の指揮者を目指していたすぎやまこういち、聖歌隊で歌っていた加橋かつみ、そしてビージーズの3者は、教会音楽や讃美歌でつながっていたのだ。
そんな事実も含めて、この歌が誕生した経緯と歴史を研究して発表したのが、ザ・タイガースのドラマーとして活躍し、バンド解散後は慶応大学に入って教職者の道を歩んだ、瞳みのるである。
長年にわたって慶応高校で漢文と中国語を教えた瞳みのるは、バンドに四十年ぶりに復帰したのを期に、自分たちの最大のヒット曲のルーツを探り、その過程とたどりついた事実を「ザ・タイガース 花の首飾り物語」(小学館)としてまとめた。
そのなかのインタビューですぎやまこういちは、クラシックの組曲を念頭に置いてザ・タイガースの楽曲に取り組んでいたこと、「花の首飾り」はクラシックを土台にしているので、時代を越えて歌い継がれていると話している。
そして公募で選ばれた女学生の書いた最初の一言が印象的で、5分ぐらいで出来上がったとも語っていた。
自宅で詞を何回か読んで、パッとできて、最初の「花咲く娘たちは」と、そこまでできたところで、あっ、全部できたと思って、あとはスーッと、5分ぐらいでメロディーはもうできちゃいました。
その出来上がった曲に歌詞を付けたのは、なかにし礼である。
月刊誌「明星」での公募で、約13万編の応募作の中から選ばれたのは、北海道八雲町の女学生だった菅原房子さんの作品。
それは歌の歌詞というよりも、「乙女たちが白鳥になりました」という物語がつづられた7、8枚の便箋だったという。だからすぎやまこういちのメロディーに合わせて、ほとんど書き下ろしに近い形で歌詞をつけたのだった。
とは言うけれども、あの人のつづり方がなかったら、これまた生まれなかったことも事実です。サッカーで言えば、10人の選手は菅原さんなんです。最後のゴールを決めたのは僕なんだけれどね。
すぎやまこういちは1970年代以降からは、ポピュラーソング、CMソング、アニメーション、ゲーム、映画音楽、そしてクラシック音楽と幅広く手掛けてきた。
人気ゲームソフト「ドラゴンクエスト」の全作品の音楽を担当し、青少年のオーケストラ入門になればという思いから、交響組曲「ドラゴンクエスト」のオーケストラによるコンサートを、毎年各地で行っている。
なおザ・タイガースの人気がピークだった1969年にバンドを脱退していた加橋かつみが、ソロのライブで歌ったビージーズの「ホリデイ」は、1998年にCD化されて発売になったことがある。1971年3月31日に大阪フェスティバルホールで行われたライブ収録の音源だという。
(注)本文中のすぎやまこういち氏、なかにし礼氏の発言は、瞳みのる著「ザ・タイガース 花の首飾り物語」(小学館)からの引用です。

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