リック・ルービンは、完成した「Hurt」のビデオクリップを初めて観た時、作り手側でありながら感極まって涙したという。
「ジョニー・キャッシュは本当に素晴らしいアーティストだが、残念なことにキャリアをしめくくるにふさわしいレコードを作る機会に恵まれていたとは言えなかった。最高のアーティストをしかるべき場所に導く──それが自分にとって正しいことだと感じただけなんだ」
名物プロデューサーとして数多くのアーティストを手がけてきた彼だが、いつもジョニー・キャッシュという存在を基準に物事をジャッジメントしてきた。
「彼は、社会のルールにこびない、そしてダークな側面を持った人間だった。彼はカントリー・ミュージックのアーティストだったが、カントリー・アーティストで終わる人ではなかった。私はそこに、ロックンロールとは何かという本質を見出した」
それだけにキャッシュとともに制作した、American Recordingsシリーズにかけた思い入れは深かった。ルービンは、キャッシュのプロデュースを自ら手がけることを懇願し、ドサ回りの会場まで通いつめたという。
そうしてスタートした二人のコラボレーションは、その組み合わせの意外さと、キャッシュがビートルズやU2、さらにはナイン・インチ・ネイルズやベックまで幅広い世代にわたる〈ロック〉をカバーするという着想が、大きな驚きをもって受け入れられた。
「キャッシュが歌うことの目的は、すでにある曲に何か新しい視点を与えるか、彼の歌が試金石となってその本質を引き出すことだ。彼は波瀾万丈の人生の中で、本当の多くの知恵や知識を得てきたけれど、彼が話すときには、そうした生き様がにじみ出ていたし、彼が歌えば、その歌の中に彼自身の物語が投影される。多くの人が何度も聴いてきた曲でさえ、新たな生命を吹き込む才能に長けていたんだ」
アウトローとして生涯を駆け抜けたジョニー・キャッシュ。彼の歌声を通して、ロックンロールの叛逆性が新たに照らし出されたのだった。

●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから
ジョニー・キャッシュ「Hurt」
ナイン・インチ・ネイルズ「Hurt」
*本記事は、2014年4月12日に初回公開されたものに加筆・修正しました。

- TAPthePOPアンソロジー『音楽愛 ONGAKU LOVE』
TAP the POPが初書籍を出版しました!
「真の音楽」だけが持つ“繋がり”や“物語”とは?
この一冊があれば、きっと誰かに話したくなる
今までに配信された約4,000本のコラムから、140本を厳選したアンソロジー。462ページ。
「音楽のチカラで前進したい」「大切な人に共有したい」「あの頃の自分を取り戻したい」「音楽をもっと探究、学びたい」……音楽を愛する人のための心の一冊となるべく、この本を作りました。
▼Amazonで絶賛発売中!!
『音楽愛 ONGAKU LOVE』の詳細・購入はこちらから







