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「TAP the COLOR」連載第29回
ジョニー・キャッシュほど、音楽と真摯に向き合った人はいない。いつも弱者の味方で、社会に貢献する姿勢を失わず、権力やシステムと闘った。どんなにスーパースターになっても現実感のある人柄で、自らの音楽とともに歩み続けた。
そんな彼でさえ、何もかもポップでヴィジュアル性に富んだものが求められた1980年代には不遇を迎える。レコード契約さえ失ったこともあった。親友たちも死んでいく。普通のミュージシャンならここで終わるだろう。
しかし、今から20年前の1994年。オルタナティヴシーンによってロック復権が高まった頃、彼を救ったのは、彼の音楽に対する姿勢を目に焼き付けていた新しい世代のミュージシャン、そしてまだジョニー・キャッシュを知らない若い世代の聴衆だった。
還暦のロックミュージシャンなど皆無だった頃、その復活作『American Recordings』シリーズの持つ力は、後に続く世代にどれほどの精神的支柱となったことか。自作とカバーで構成された、キャッシュの命をかけた晩年録音集だ(プロデュースはすべてリック・ルービン)。
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ジョニー・キャッシュ『American Recordings』(1994)
ニック・ロウの「The Beast in Me」 、レナード・コーエンの「Bird on a Wire」、トム・ウェイツの「Down There by the Train」などのカバーを収録。
ジョニー・キャッシュ『Unchained』(1996)
ベックの「Rowboat」、サウンドガーデンの「Rusty Cage」、トム・ペティの「Southern Accents」などのカバーを収録。
ジョニー・キャッシュ『American III: Solitary Man』(2000)
トム・ペティの「I Won’t Back Down」、U2の「One」、ニック・ケイヴの「The Mercy Seat」などのカバーを収録。
ジョニー・キャッシュ『American V: A Hundred Highways』(2006)
ブルース・スプリングスティーンの「Further On (Up the Road)」、ハンク・ウィリアムズの「On the Evening Train」、ゴードン・ライトフッドの「If You Could Read My Mind」などのカバーを収録。
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