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メンバーの全員がLSDの洗礼を受けたビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」

2015.10.06

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LSDすなわちリゼルグ酸ジエチルアミドは、1950年代に精神治療の分野において広く使われるようになった強力な幻覚剤で、60年代を迎えると医療の分野ではなく一般にまで広がっていた。

それがヒッピー文化やサイケデリック文化と結びつき、フラワージェネレーションが興隆する大きなきっかけともなった。
しかし強力な幻覚作用によって、病院に運ばれたり、事故死する者が後を絶たなかった。
また若者たちのカウンターカルチャーに嫌悪感を持つ層からの反発もあって、次第にLSDを排除する世論が形成されていくことになる。

カリフォルニア州は1966年10月6日、全米で最初にLSDを禁止した。

その日、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークでは、それに抗議する集会のラヴ・ページェント・ラリーが開かれて、数千人ほどのヒッピーがヘイト・アシュベリー地区の文化を祝うことで、LSD禁止に反対の意思表示を行った。
ヒッピー文化やサイケデリック文化を代表するバンドのグレイトフル・デッドや、フォークからロックに転向して間もないジャニス・ジョプリンも参加した。

集会の提唱者だったアレン・コーエンは、ヒッピーカルチャーを伝えることになるアンダーグラウンドペーパー、『サンフランシスコ・オラクル』を9月に創刊したばかりだったが、こう述べていた。

私たちは純潔で無垢であることを祝う。
私たちは違法な物質を使用して罪を犯したのではない。
私たちが祝うのは超越意識であり、宇宙の美しさ、生きていることの美しさだ。


オラクル7

LSDの非合法な製造販売が取り締りの対象になったのは1965年からだが、それまで普通に出回っていたのが次第に手に入りにくくなり、2~3年のうちにLSDの所持は犯罪となった。こうして全世界的に規制されてしまうのである。

LSDは合法だった短い時期には、ミュージシャンたちに多用された。
意識を拡張させることでトリップし、創造力をふくらませたり表現の可能性を広げると考えられたのだ。

その影響は「サイケデリック・ロック」(アシッド・ロックとも呼ばれた)の誕生や、その後の発達ともつながっている。

LSDと関連した代表曲としてあげられるのは、以下のアーティストの楽曲だ。

ジェファーソン・エアプレイン「ホワイト・ラビット(White Rabbit)」
グレイトフル・デッド「ダーク・スター(Dark Star)」
ジミ・ヘンドリックス「紫の煙(Purple Haze)」「The Stars That Play With Laughing Sam’s Dice」
ドアーズ「水晶の舟(The Crystal Ship)」
バーズ「霧の8マイル(Eight Miles High)」
ビーチ・ボーイズ「グッド・ヴァイブレーション(Good Vibration)」
ビートルズ「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズLucy in the Sky with Diamonds」「ア・デイ・イン・ザ・ライフ( A Day in the Life)」

A DAY IN THE LIFE

まだ合法だった頃にバンドメンバー全員がLSDの洗礼を受けたビートルズの場合、特にジョン・レノンにとっては影響が大きかった。

その頃に制作されたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収められた「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」は、トリップ・ミュージックの代表作とも言われている。


ジョンは愛読していたルイス・キャロルの小説「不思議の国のアリス」から、曲の着想を得ていると語っていた。
「アイ・アム・ザ・ウォルラス」でもジョンはルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」から、「ウォルラス(セイウチ)」や「エッグマン(ハンプティ・ダンプティ)」などのキャラクターを歌詞に使っている。

ジェファーソン・エアプレインの「ホワイト・ラビット」がそうであるように、ルイス・キャロルの小説は当時のカウンター・カルチャーに強い影響力を持っていた。

ところでタイトルの名詞の頭文字をつなげると「LSD」となるというのは有名な話だが、ジョンは4歳の息子ジュリアンの絵から思いついた歌で、単なる偶然にすぎないと述べている。

「息子のジュリアンがある日、ルーシーという学校の友だちを描いた絵を持ってきた。空に星をいくつか描いて”ダイヤモンドを持って空にいるルーシーだよ(It’s Lucy in the sky with diamonds)と言ったので、ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ”と名付けたんだ」


1974年にこの曲をカヴァーしたエルトン・ジョンは、アメリカのビルボード誌のシングルチャートで全米1位を獲得した。







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