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浅川マキが愛した名曲〜ビリー・ホリデイの“奇妙な果実”を聴きながら〜

2015.11.01

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浅川マキのアルバムをイギリスの名門レーベルがリリース(ARBANより)
ジャズやブルースから影響を受けた歌声と黒い衣装で“アンダーグラウンドの女王”と称され、2010年にこの世を去った浅川マキ。寺山修司がプロデュースしたことでも知られる彼女の音源を集めたアルバム『Maki Asakawa』が10/30に<Honest Jon’s Records>からリリースされた。
これまでに幅広いジャンルの作品をリリースしてきた名門レーベルなだけに、世界中の人が彼女を知るきっかけとなることだろう。
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1942年1月27日、浅川マキは石川県石川郡美川町という漁師町で生まれる。
家が五軒しかないという集落で、妹と共に過ごした幼い頃に「美空ひばりを聴いて育った」という。
高校を卒業した彼女は町役場に就職したが…ほどなくして仕事を辞め、夜行列車に乗って東京に向かった。
上京以来、敬愛してやまなかったビリー・ホリデイについて、彼女はあるインタビューでこんなことを語っている。

私はあるときからビリー・ホリデイの歌の中に“救いのない何か”が見える気がしている。
私がこれまでに聴いた歌手の中には、心地良いものや、いい声や、慰安性の高いものはいっぱいあったが、それらの歌はすぐに通り過ぎて行ってしまう。
だけどビリー・ホリデイの歌は、何か厭世(えんせい)とも思えるのかもしれない。


1967年、当時25才だった浅川マキは「東京挽歌」という歌でレコードデビューする。
しかしその楽曲は、彼女が歌いたかった世界とはあまりにかけ離れていた。
その後、寺山修司によってその才能・存在感を見出され、1969年にシングル「夜が明けたら/かもめ」で再デビューを果たす。
27歳、夏の出来事だった。
学生運動、70年安保闘争という時代の中、それは“アングラの女王”と呼ばれた彼女にとって一筋のスポットライトがあたり始めた時期でもあった。

♪この時期の浅川マキについてはこちらのコラムもご参照ください。<TAP the SONG——寺山修司が世に出した”ふたりのマキ”①浅川マキの世界「かもめ」>


浅川マキは、ビリー・ホリデイが歌う「Strange Fruit(奇妙な果実)」をこよなく愛していたという。
この歌は1938年に、ニューヨーク市マンハッタンにあったレコード店のオーナー、ミルト・ゲイブラーによって設立された独立系のレコードレーベル“コモドアレコード”から世に送り出された名曲である。
人種問題にまつわる歌詞の内容で大手のレコード会社が尻込みしたことでも有名である。

歌い方にハッタリとかね…そういうのが全然ないのよ。
彼女の歌っていうのは、あんまり押さえつけてくるっていう歌い方じゃないけど、聴けば聴くほど麻薬みたいにこっちがのめり込んじゃうわけよね。
麻薬で死んでしまったという彼女と、そういう唱法とがね…何かすごくいつまでも人の心をとらえて離さないみたいな。


浅川マキはステージでこの曲を歌う時に、こう呟いて唄いだすのだった。
「白人のリンチにあって、黒人が木に吊るされている。なんと奇妙な果実ではないか…」
つい先日、日本政府はTPP協定交渉で大筋合意した関税分野の全容を発表した。
コメ、自動車、医療…不安と期待で揺れる我が国。
果実や野菜などについては、生産者の間で「寝耳に水だ」として不満と強い憤りの声があるという。
どこかで“奇妙な果実”が吊るされる…そんなことが起こる社会なんて誰一人として望んではいないはずだ。
彼女がビリーについて語った言葉が…どこか奇妙に重って聞こえてくる。

ビリー・ホリデイの歌の中に“救いのない何か”が見える気がしている。
心地良いものや、いい声や、慰安性の高いものはいっぱいあったが…すぐに通り過ぎて行ってしまう。
ビリー・ホリデイの歌は、何か厭世(えんせい)とも思えるのかもしれない。



Southern trees bear strange fruit,
南部の木々に奇妙な果実がある
Blood on the leaves and blood at the root,
葉は血に濡れ赤い血が根に滴っている
Black bodies swinging in the southern breeze,
南部の風に揺れている黒い肉体
Strange fruit hanging from the poplar trees.
ポプラの木々からぶら下がっている奇妙な果実
Pastoral scene of the gallant south,
雄大で美しい南部の牧歌的な風景
The bulging eyes and the twisted mouth,
飛び出した眼 歪んだ口
Scent of magnolias, sweet and fresh,
木蓮の甘く爽やかな香り
Then the sudden smell of burning flesh.
そこに突然漂う焼けた肉の臭い
Here is fruit for the crows to pluck,
此処にも一つ カラスの餌となる果実がある
For the rain to gather, for the wind to suck,
雨に打たれ 風に弄ばれ
For the sun to rot, for the trees to drop,
太陽に焼かれ朽ち そして木からその果実は落ちる
Here is a strange and bitter crop.
此処にも一つ 苦い奇妙な果実がある

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