TOKYO音楽酒場

【6軒目】渋谷・ROOTS──音楽家たちのつながりが新たな潮流を生み出す酒場

2014.10.12

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回訪れたのは、渋谷・宇田川町のDJバー。ビルの3階にあるこの店は、その開放感に満ちた店内の雰囲気そのままに、音楽との自由な付き合い方を感じさせてくれる酒場です。

渋谷・宇田川町。最近また増えはじめたレコード店や、organ barやBALLなどの老舗クラブなどが点在するこのエリアで、とびきり自由な風を吹かせているのが、DJバー〈ROOTS〉だ。東急ハンズのすぐ近く、人気のカフェや美容室、ラーメン屋などが入居する雑居ビルの3階に上るとその店はある。

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レゲエ・バンド、タフ・セッションでボーカル/バイオリンを担当する内田コーヘイと、彼の古くからの友人である長坂ガリヲの二人で経営するROOTS。ほぼ連日DJイベントが行われているところはクラブのようでもあるが、気軽にライブを行えるスペースでもあり、そして何より、酔いつぶれるまでとことん飲める酒場である。深夜、この店で撃沈している人を何度も見たことがあるが、気持ちはわかる。ROOTSは、とにかくユルい。そのユルさが、とにかく心地良い。

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ROOTSの歴史は、実は結構長い。1998年に町田にオープン。4年ほど営業した後、渋谷・宮益坂に移転。間に2年ぐらいブレイクを挟んで、今度は渋谷宇田川町の東急本店前に移転。そこで4年間営業した後、現在の東急ハンズ近くの場所に落ち着いた。この場所でリニューアルしてからも、すでに3年ほど経っている。

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「最初に店をはじめたのは23歳ぐらいの時。一緒にやってるガリヲとは、中学・高校の同級生でね。俺は、高1ぐらいにボブ・マーリィを聴いて超ハマって。それから高2高3はスカやロックステディも好きになって、学校帰りはレコ屋に寄って7インチ買い出すようになって。20歳頃からDJをはじめたんだ。で、ガリヲはその頃すでに、渋谷のBALLってクラブで店長やってたから、そこに遊びに行ったり、自分でイベントやるようになってね」(内田コーヘイ)

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「他のクラブにもいろいろ行くようなると、やっぱり自分の店がやりたいよねって話になって。そんな時、たまたまよく遊んでた町田で、よく知ってるスナックのママが『今度、店をたたむことになったから、コーヘイちゃんなんかやらない?』って声かけてくれたんだ。好きにやっていいからっていうんで、自分たちで改装して店をはじめた。町田の頃はだいぶメチャクチャやってたからさ。明け方になってみんな酔っぱらってて、結局今日は、誰が働いてたんだっけ? みたいな(笑)。でも、その店によく呑みに来てくれた学生やDJたちと一緒に、俺はタフ・セッションっていうバンドも組んだしね。その頃の面白さが、今でもずっと続いてる感じはあるね」(内田コーヘイ)

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コーヘイのつながりによるレゲエ/スカ界隈のミュージシャンやDJたち、そして相棒のガリヲやスタッフのハヤトによるハウスをはじめとするナイトクラビング人脈。その2本柱で、ROOTSの音楽は彩られている。中でも、ROOTSを中心に生まれていくレゲエ・ミュージシャンたちのコネクションは、日本のレゲエ・シーンの中でも、新たな潮流のひとつとして存在感を示しはじめている。店から生まれたタフ・セッションをはじめ、元ロッキング・タイムのベーシスト小粥鉄人を中心とするテツニークス、サックス奏者の西内徹バンド、スカフレイムスのサックス奏者による石川道久セッションや、コーヘイとカセットコンロスのギタリスト=ワダマンボによるデュオ、シンガーasuka andoを中心としたセッション……などなど、紹介していったら枚挙に暇が無いが、レゲエを根っこにもつミュージシャンたちが自然発生的に様々な組み合わせで重なりあいながら、新たなスタイルを模索している。

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取材当日、ROOTSで行われていたのは、〈MaCoNDo presents “DANCE HALL TIME”〉。毎回、レゲエ界隈のミュージシャンがホストとなり、他のプレイヤーたちを集めてセッションを展開していく、実験的要素も高いイベントだ。この日は、レゲエのみならず様々なジャンルから引っ張りだこのベテラン鍵盤奏者・エマーソン北村によるソロアクト&セッションと、サックス奏者Ackkyを中心に高井康生や高木壮太が参加するユニット・Ackky’s Mode Seminorのライブが展開されていた。

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「このイベントは今回が8回目。その場に居合わせたミュージシャンも飛び入りしたりと、レゲエ界隈の音楽家たちに、もっと自由なことをやってもらおうと思ってはじめたんです。もともと僕も普段から飲みに来たり、DJをやったりして、ROOTSが飲んでて楽しい場所だっていうのが自分でも体験してわかっていることで。それと同じような気持ちで、ミュージシャンたちが、コーヘイや他のスタッフも交えて飲んで語って、たまにセッションしたりと、楽しくしてるって姿をこの店でたくさん見てきた。いわゆるライブハウスの堅苦しい決めごとや枠組みじゃなくて、ミュージシャンが自発的に勝手にやるから、楽しい場が生まれる。それが実現しやすいのがROOTSなんですよね」(MaCoNDo代表・松本)

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この店で気持ち良く酔いどれている姿をよく目撃されているレゲエ・サックス奏者の西内徹も、ROOTSをきっかけに自身の音楽表現を広げてきたミュージシャンのひとりだ。店で行われている様々なイベントやライブにサックス一本で乱入しては、即興でケミストリーを呼び起こし大いに場を盛り上げていく。この日も(大学時代からの盟友である)エマーソン北村と息の合ったセッションを繰り広げていた。

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「俺がROOTSに通うようになったのは、宮益坂の頃からかな。ROOTSをきっかけにして、コーヘイのコネクションで会った人とずいぶんつながったからな。2012年に西内徹バンドとして初めて自分のリーダー・アルバムを作ったけど、ここで出会ったミュージシャンたちも多く参加してる。ROOTSの何が好きって、コーヘイが好き。もちろんガリヲとハヤトも好きだね。うん、この店がなかったら今の俺はないね」(西内徹)

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「俺なんか、バンドのリハもここでやってるからね。リハスタ代かからないってのは素晴らしい(笑)。ここだったら、のんびりとレコードを聴きながらセッションも出来るしさ。俺が歌ってるのは、ほとんどが実体験から生まれた曲だし、そういう意味では店をやってるのも、音楽やってるのも、普段の生活も境目がないかもね。タフ・セッションで作った曲の中には、ROOTSについて歌った曲もたくさんある。相方のガリちゃんに捧げた〈ガリヲソング〉もあるぐらいなんだから。これからもROOTSの歴史を歌っていこうかな。どうせ、ここではじめたバンドだからさ(笑)」(内田コーヘイ)

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そんなコーヘイはもちろん、ROOTSに集まるのは音楽も酒も会話も、そして生活も、すべてをごちゃ混ぜにして、すべてを同列に愛する人たちばかりだ。ナチュラルでフラットでフランクな空気に満ちたこの酒場が、音楽との新しい付き合い方を、気負いなく呈示してくれているように感じてならない──ROOTSのユルすぎる居心地の良さに釣られ、ついつい飲み過ぎてしまった酔いどれ頭で、ぼんやりとそんな想いを巡らせていた。


撮影/相澤心也




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ROOTS -DJ BAR-
東京都渋谷区宇田川町11-6 渋谷宇田川KKビル3階
*渋谷東急ハンズ前。mont-bell隣のビル
19:00〜5:00(イベントによって異なる)不定休
http://www.roots1998.com/

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