TAP the SCENE

スラップ・ショット/カリフォルニア・ドールズ〜隠れファンが多いカルトムービー

2017.10.29

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公開されてからも一部の熱狂的なファンに支持され続ける映画が存在する。いわゆるカルトムービーと呼ばれるもので、次世代の新たなファンを獲得しながら作品は再評価を繰り返してきた。名作には及ばないものの、人々の心に強く不思議な印象を残す映画でもある。

今では劇場公開された映画は、数ヶ月後にDVDやネット配信されることは当たり前だが、1980年代前半くらいまでは、民放のロードショー番組がその役割を果たしていた。日本語吹き替えされ、CM挿入のため編集もされる。だがそれでも、当時の少年少女たちにとっては洋画と向き合うことは興味深い、実りのある時間だったと思う。見逃すと後がなかった。

TAP the POPのこの映画コーナーでは過去多くの作品を取り上げてきたが、1980年代前半までのタイトルは大抵こうした「家のリビングのTVで初めて観た」ものが多い。そしてずっと記憶に残ったものだけが、大人になってビデオやDVDを購入して、今度は吹き替えなしで一人暮らしの部屋で再上映されてきた。久しぶりに観ると感動すら覚える。内容以上に「あの頃の自分」を思い出すからかもしれない。

今回紹介するスポーツを題材にした2本にも、何か特別な思い出を持っている人がいるはずだ。『スラップ・ショット』(Slap Shot/1977)と『カリフォルニア・ドールズ』(…All the Marbles/1981)の最大の魅力は、「強烈な70年代臭」あるいは「淡々とした空気感」に尽きると思う。何度観ても妙な心地よさを感じてしまうのは、過剰な演出や技術、マーケティングやビジネスが詰まったハリウッド超大作(もしくは製作委員会スタイルの邦画)を見慣れてしまった頭と心が、原点回帰を促しているからだ。両作品からは不器用な男と女たちの色気と体臭が画面いっぱいに漂ってくる。

名優ポール・ニューマン主演、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スラップ・ショット』は、マイナー・リーグのアイスホッケー・チームを題材にした人間ドラマだった(当時は卑劣な言葉が飛び交う点でも話題になったそうだが、このリアルな脚本は女性が書いたという意外な事実も最近知った)。カルトムービーになったのは、メガネのハンセン3兄弟というキャラクターによるところが大きい。なお、フリートウッド・マックやエルトン・ジョン、レオ・セイヤーやマキシン・ナイチンゲールのヒット曲が、カーラジオから流れているシーンにも注目。

「チャールズタウン・チーフス」は鉄工場の労働者たちに支えられているリーグ最下位チーム。コーチ兼任のレジー(ポール・ニューマン)は不景気で工場が閉鎖になると聞き、チーム存続の危機を覚悟する。チームで唯一の有望選手ネッドは大学出のインテリだが、妻が冴えない町の生活に嫌気をさして夫婦仲が険悪。別居中のレジーも離婚間際で、チームメイトには何かと女のトラブルが絶えない。みんな金欠だ。

レジーは金と存続のために、荒々しいプレーで人気を得ることを思いつく。ラフな評判のハンセン3兄弟も加入し、買収話もデッチ上げて、チームメイトの志気を高めることに成功。そこから巡業先でも連戦連勝を続けて動員数を増やすチーフスだが、ある日レジーは女性オーナーから自分たちが単なる税金逃れの商売道具であることを知って激怒する。この一戦に勝てばチャンピオンという試合が訪れるが、レジーは暴力は避けて昔ながらの伝統的なホッケーを提案する……。

一方、名優ピーター・フォーク主演の『カリフォルニア・ドールズ』は、女子プロレスを題材にした人間ドラマ。ドールズに扮するダンサー出身のビッキー・フレドリックとモデル出身ローレン・ランドンの美女二人は、女子プロレス界の伝説的チャンピオン、ミルドレッド・バークの指導のもと、長期間トレーニングを積んでリング内での演技を身につけた。日本人レスラーのミミ萩原とジャンボ堀の出演も話題となり、カルト化した。

ハリー(ピーター・フォーク)は、「カリフォルニア・ドールズ」を売り出すために全米中を古びたキャデラックで移動しながら巡業中。美しいタッグチームは夢を掴むため、ハリーにすべてを託したのだ。だが現実は過酷で、安いギャラの試合を繰り返し、モーテル生活を転々とし、ファーストフードを口にする日々。それでもいつか必ずチャンスが訪れると、ハリーは移民だった父親の昔話をしながら二人を励ましていく。

金欠の旅はやがて男と女の不安となって喧嘩に発展するが、それでも夢だけは捨てられなかった。そんなある日、旅先で買ったレスリング雑誌に自分たちが紹介され、ランキングが上昇中だと知る。そしてハリーの戦略と彼女たちのセルフ・プロデュース能力で、念願のチャンピオン・シップとTV放送の高額ギャラ試合をブッキングすることに成功。相手は1勝1敗の因縁の「トレド・タイガース」。華麗なコスチュームに身を包んだドールズの登場。遂に運命のゴングが鳴る……ロバート・アルドリッチ監督の遺作は、味わい深いロードムービーでもあった。

ポール・ニューマンはもちろん、ハンセン3兄弟の暴れっぷりもこの映画の見どころの一つ


美しきドールズたちとマネージャー役のピーター・フォーク

『スラップ・ショット』

『スラップ・ショット』


『カリフォルニア・ドールズ』

『カリフォルニア・ドールズ』


*日本公開時チラシ
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*このコラムは2016年8月10日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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